著者
新城 正紀 川南 勝彦 簑輪 眞澄 坂田 清美 永井 正規 Shinjo Masaki Kawaminami Katsuhiko Minowa Masumi Sakata Kiyomi Nagai Masaki 沖縄県立看護大学 国立保健医療科学院 和歌山県立医科大学 埼玉医科大学
出版者
厚生労働統計協会
雑誌
厚生の指標 (ISSN:04526104)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.17-25, 2003-02
被引用文献数
1

目的:著者らは,全国レベルで難病患者個人の臨床情報,疫学・保健・福祉情報,予後情報を収集しデータベース化およびコーホート研究を行っている。今回は,1999年に実施したベースライン調査結果を基に,今後の保健福祉サービス(以下,公的サービス)の在り方について検討するため,公的サービス(ホームヘルパー,看護師,保健師)の利用状況,医療機関への受診状況,サービスおよび現在の生活への満足度,病気への受容度,今後必要とするサービスについて,疾患別および日常生活動作別に把握することを目的とした。方法:対象者は,全国の保健所のうち,本研究に調査協力可能であった35保健所管内における新規・継続の特定疾患医療受給者(1999年4月1日時点において受給資格を得ている者および,それ以降に受給資格を得る者)とした。調査項目は,基礎情報-特定疾患治療研究事業医療受給申請書,疫学・福祉情報調査,日常生活動作,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査をもとに,公的サービス(ホームヘルパー,看護師,保健師)の利用状況,医療機関への受診状況,現在受けているサービスおよび現在の生活への満足度,今後必要とするサービス,病気への受容度とした。調査方法は,各協力保健所が調査対象とした難病患者に対して,新規・更新の申請時に調査項目に関する面接調査を行った。ただし,面接調査が不可能な場合にのみ郵送調査を行った。解析は,収集できた調査数の最も多かった6疾患(パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,重症筋無力症,演癌性大腸炎,全身性エリテマトーデス)について,日常生活動作別に各調査項目の実態を明らかにすることとした。結果および考察:調査データが得られたのは30保健所(北海道から沖縄まで21都道府県)であり,回収率は57.7% (=2,059人:調査実施数/3,571人:調査予定者数)であった。そのうち,痩学・福祉情報調査,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査への協力に同意しなかった者または回答拒否者496人(24.1%)を除いた全疾患の合計は1,563人(男:687人,女:876人)であった。このうち,解析対象とした6疾患の合計は1,211人(男:543人,女:668人)であった。疾患別に公的サービスの利用割合をみると筋萎縮性側索硬化症が最も高く,ついでパーキンソン病,脊髄小脳変性症,重症筋無力症,全身性エリテマトーデス,潰癌性大腸炎の順であり,疾患の重症度に応じた公的サービスが提供されていると推察できるが,疾患ごとに公的サービスのニーズやディマンドが異なると考えられるので,詳細な分析が必要である。特に,筋萎縮性側索硬化症では往診・入院の割合も高かったことから,公的サービスおよび医療によるケアを必要とする疾患であると思われる。6疾患を全体的にみると,2割~3割の者が現在の生活に「やや不満~不満」と回答しており,大半の者が普通以上の生活を営んでいると推察できる。6疾患とも今後必要とする公的サービスがあるとの回答があり,ホームヘルパー,デイサービス,ショートステイ,訪問歯科治療,難病相談会,難病患者の集い,訪問看護,訪問診療,医療機器の貸与,緊急通報システム,住宅改造,機能回復訓練の全ての項目で何らかの公的サービスの必要が選択され,その必要性が明らかとなった。結論:公的サービスは難病患者の生活の質の向上につながると考えられるが,本当に必要な患者に必要なサービスが提供されているか,必要なサービスは何かなど,疾患や日常生活動作,QOLなどの情報をもとに,画一的にならない一人一人に適したきめ細かい公的サービスの在り方を検討する必要があることが示唆された。
著者
川南 勝彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.484-494, 2003

目的: 〈難病患者に共通の主観的quality of life尺度 (主観的QOL尺度) 〉の開発時に課題となった点について検討し, さらに, Short Form 36 Health Survey (SF-36) を使用して主観的QOL尺度の基準関連妥当性を検討した.対象: 全国の保健所のうち, 本研究に調査協力可能であった30保健所管内における新規, 継続特定疾患医療受給者2,060人とした.方法: 特定疾患治療研究事業医療受給申請書, 臨床調査個人票, 主観的QOL尺度, SF-36を対象者に対して調査し, 内的構造の確認, SF-36各サブスケール得点との相関関係等を検討した.結果: 1) 有効回答者数1,563人 (対象者2,060人のうち, 調査協力に同意しなかったあるいは回答拒否者497人), 有効回答率75.9%であった.2) 因子構造として病気に対する《受容》と《志気》の2因子の構造 (2因子で初期の固有値1.0以上, 累積寄与率70%以上) で, 開発時の因子構造との変化は認められなかった.3) 信頼性・内的整合性が高く (α係数=0.85), 主観的QOL尺度の得点分布において正規分布に近い分布を示した.4) 重症度・病状との関連性については有意な関連性は認められなかった.5) SF-36サブスケールのうち, 〈心の健康〉〈活力〉〈全体的な健康観〉で中程度以上 (r≧0.5) の有意な相関関係が認められた.結論: 開発時の課題点を考慮して, 調査対象として難治性皮膚疾患, 特発性拡張型心筋症などの疾患を加えADLの低い対象者を含め, 各疾患の機能水準を評価するために重症度・病状を調査内容として加えて, 主観的QOL尺度の妥当性を検討した結果, 内的妥当性が得られ, 各疾患の重症度や病状に影響されることのない尺度であることが確認された. SF-36との関連性より基準関連妥当性のある尺度であることも確認された.
著者
福井 次矢 高橋 理 徳田 安春 大出 幸子 野村 恭子 矢野 栄二 青木 誠 木村 琢磨 川南 勝彦 遠藤 弘良 水嶋 春朔 篠崎 英夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2681-2694, 2007-12-10
被引用文献数
5 4

平成16年度に開始された新医師臨床研修制度が研修終了時の研修医の臨床能力にどのような影響をもたらしたのかを調査する目的でアンケート調査を行った.旧制度下の研修医(平成15年3月の2年次研修医)に比べて新制度下の研修医(平成18年3月の2年次研修医)は,調査対象となった幅広い臨床能力の修得状況(自己評価)が全般的に著しく向上し,以前認められていたような大学病院の研修医と研修病院の研修医との差がほとんど認められなくなった.また,調査対象となった82の症状·病態·疾患と4種類の医療記録すべてについて,旧制度下の研修医に比べて新制度下の研修医の経験症例数·記載件数が有意に多かった.新医師臨床研修制度による研修医の幅広い臨床能力修得という目的は達成される方向にあることが示唆された.<br>