著者
高橋 美保子 永井 正規
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.5-19, 2008-01-15 (Released:2008-05-16)
参考文献数
38
被引用文献数
14 14

Objectives: The aim of this study is to clarify the excess mortality associated with influenza epidemics in Japan during the period from 1987 to 2005.Methods: Monthly data on the total number of deaths (excluding accidental deaths) and the numbers of deaths due to malignant neoplasms, heart disease, cerebrovascular disease, pneumonia, and renal failure were obtained from vital statistics from 1987-2005. The point estimates and range of excess mortality were evaluated using a model based on annual mortality and seasonal indices. Total mortality was analyzed for all ages, sex and for the following five age groups: 0-4, 5-24, 25-44, 45-64, and ≥65 yrs.Results: The excess number of deaths showed almost no difference in each influenza season between men and women. During each influenza season, approximately 85-90% of the excess mortality was attributed to the ≥65 yrs age group. During the 1995 and 1999 seasons, mortality increased significantly across all age groups. The highest point estimate of excess mortality in the ≥65 yrs age group was observed in 1999. From a comparison of the range of excess mortality in the ≥65 yrs age group by year, the excess mortality in 1995 appeared to be the highest of the examined years. The highest point estimate of excess mortality in the 0-4 yrs age group was observed in 1995. From a comparison of the range of excess mortality in the 0-4 yrs age group by year, the excess mortality in 1998 or 1999 appeared to be the highest of the examined years. Excess mortality in the 45-64 yrs and ≥65 yrs age groups showed an increasing tendency in the 1990s and a stabilizing tendency beginning in 2000. In addition, excess mortality during each epidemic was occurred in persons with pneumonia, heart disease, cerebrovascular disease, malignant neoplasms, and renal failure, accounting for approximately 20-50%, 20-40%, 20%, 5%, and 2% of all the excess mortality, respectively.Conclusions: These results indicate that the majority of excess mortality occurred among the elderly and persons with pneumonia, heart disease, or cerebrovascular disease. Although it is unclear whether the increasing trend in the 1990s and the stabilizing trend beginning in 2000 were the result of vaccination measures, health measures for groups such as the elderly and heart disease patients are considered to be important for the future.
著者
秋澤 より子 原 徳寿 永井 正規
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.323-331, 1987
被引用文献数
4

的確な齲蝕予防法を検討する目的で,保健所で行われた健康診査から,1歳6カ月と3歳時の資料(451人分)を用いて,菓子類,飲物の摂取と歯磨き実施とが3歳時の乳歯齲蝕にどのようにかかわっているかを観察し,以下の結果を得た。<BR>1)3歳時に菓子パン,ビスケット,アイスクリーム,ケーキ類,市販のジュース,チョコレート,乳酸飲料,炭酸飲料,スナック菓子,あめなどの菓子,飲物類を摂取するものは齲歯有病率が高い。<BR>2)1歳6カ月時の菓子類摂取では,あめの摂取が最も強く齲歯発生と関係していた。<BR>3)1歳6カ月と3歳の両時点の菓子摂取では,いずれかの時点であめ,チョコレート,ケーキを摂取していたものの齲歯有病率が高かった。<BR>4)歯磨きの実施時刻別に,歯磨き実施と齲歯発生との関係を注意深く観察したが,両者に明らかな関係はみられなかった。<BR>5)因子分析により歯磨き,菓子類,飲物の摂取と齲歯発生との係わりを総合的観察した結果,菓子類の摂取と齲歯発生とは明らかな相関がみられた。しかし,歯磨きと齲歯発生との関係を明らかにすることはできなかった。
著者
新城 正紀 川南 勝彦 簑輪 眞澄 坂田 清美 永井 正規 Shinjo Masaki Kawaminami Katsuhiko Minowa Masumi Sakata Kiyomi Nagai Masaki 沖縄県立看護大学 国立保健医療科学院 和歌山県立医科大学 埼玉医科大学
出版者
厚生労働統計協会
雑誌
厚生の指標 (ISSN:04526104)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.17-25, 2003-02
被引用文献数
1

目的:著者らは,全国レベルで難病患者個人の臨床情報,疫学・保健・福祉情報,予後情報を収集しデータベース化およびコーホート研究を行っている。今回は,1999年に実施したベースライン調査結果を基に,今後の保健福祉サービス(以下,公的サービス)の在り方について検討するため,公的サービス(ホームヘルパー,看護師,保健師)の利用状況,医療機関への受診状況,サービスおよび現在の生活への満足度,病気への受容度,今後必要とするサービスについて,疾患別および日常生活動作別に把握することを目的とした。方法:対象者は,全国の保健所のうち,本研究に調査協力可能であった35保健所管内における新規・継続の特定疾患医療受給者(1999年4月1日時点において受給資格を得ている者および,それ以降に受給資格を得る者)とした。調査項目は,基礎情報-特定疾患治療研究事業医療受給申請書,疫学・福祉情報調査,日常生活動作,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査をもとに,公的サービス(ホームヘルパー,看護師,保健師)の利用状況,医療機関への受診状況,現在受けているサービスおよび現在の生活への満足度,今後必要とするサービス,病気への受容度とした。調査方法は,各協力保健所が調査対象とした難病患者に対して,新規・更新の申請時に調査項目に関する面接調査を行った。ただし,面接調査が不可能な場合にのみ郵送調査を行った。解析は,収集できた調査数の最も多かった6疾患(パーキンソン病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,重症筋無力症,演癌性大腸炎,全身性エリテマトーデス)について,日常生活動作別に各調査項目の実態を明らかにすることとした。結果および考察:調査データが得られたのは30保健所(北海道から沖縄まで21都道府県)であり,回収率は57.7% (=2,059人:調査実施数/3,571人:調査予定者数)であった。そのうち,痩学・福祉情報調査,公的サービスへのニーズおよびディマンド調査への協力に同意しなかった者または回答拒否者496人(24.1%)を除いた全疾患の合計は1,563人(男:687人,女:876人)であった。このうち,解析対象とした6疾患の合計は1,211人(男:543人,女:668人)であった。疾患別に公的サービスの利用割合をみると筋萎縮性側索硬化症が最も高く,ついでパーキンソン病,脊髄小脳変性症,重症筋無力症,全身性エリテマトーデス,潰癌性大腸炎の順であり,疾患の重症度に応じた公的サービスが提供されていると推察できるが,疾患ごとに公的サービスのニーズやディマンドが異なると考えられるので,詳細な分析が必要である。特に,筋萎縮性側索硬化症では往診・入院の割合も高かったことから,公的サービスおよび医療によるケアを必要とする疾患であると思われる。6疾患を全体的にみると,2割~3割の者が現在の生活に「やや不満~不満」と回答しており,大半の者が普通以上の生活を営んでいると推察できる。6疾患とも今後必要とする公的サービスがあるとの回答があり,ホームヘルパー,デイサービス,ショートステイ,訪問歯科治療,難病相談会,難病患者の集い,訪問看護,訪問診療,医療機器の貸与,緊急通報システム,住宅改造,機能回復訓練の全ての項目で何らかの公的サービスの必要が選択され,その必要性が明らかとなった。結論:公的サービスは難病患者の生活の質の向上につながると考えられるが,本当に必要な患者に必要なサービスが提供されているか,必要なサービスは何かなど,疾患や日常生活動作,QOLなどの情報をもとに,画一的にならない一人一人に適したきめ細かい公的サービスの在り方を検討する必要があることが示唆された。
著者
柳川 洋 藤田 委由 中村 好一 永井 正規
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

厚生省の実施している感染症サ-ベイランス事業の対象疾患のうち,主に小児が罹患する12疾病を対象として,流行様式の観察を行った。観察の期間は,昭和60年第1週から昭和63年第52週までの209週とし,各週の全国1定点当たりの患者数を資料として用いた。流行の周期性をみるために,自己相関係数を求めた。次に,流行周期は,様々な要因から複合的に構成されることが考えられるため,各疾病ごとにフ-リエ解析を行い,スペクトルを求めた。この際,各疾病で患者数が異なることから,各週の患者数を209週の合計患者数で除して標準化を行った。更に,スペクトルの係数の大きいものから3つの周期を用い,どの程度元のデ-タと一致するかを観察した。結果は以下のとおりである。(1)麻しん様疾患,水痘,乳児嘔吐下痢症,ヘルパンギ-ナについては,季節性がはっきりとしており,第2スペクトルまでで流行の80%以上が説明できる。(2)流行性耳下腺炎,異型肺炎,伝染性紅斑は,長い周期性が推測され,観察期間をさらに伸ばす必要がある。(3)風しん,手足口病は,年間の季節変動と長い周期性があり,複雑なスペクトルを示した。(4)百日せき様疾患は,観察期間の前半と後半で流行の形が異なっており,今後の推移を観察する必要がある。(5)溶連菌感染症,突発性発疹は,季節方動が認められるが,さらに複雑な要因が関与している可能性がある。