著者
川名 はつ子 吉宇田 和泉
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.31-39, 2014-03-20

目的 本研究では、成人知的障害者の肥満の現状を把握し、課題を検討することを目的とした。方法 首都圏の知的障害者入所5施設の利用者217名(男性143名、女性74名)と、都内の通所5施設の167名(男性100名、女性67名)計384名を対象とした。2007年8月に運営主体が様々で所在地も分散しているこれら10か所の施設を巡回し、身長・体重・体脂肪率(タニタ社製TBF-310)・ウエスト周囲径・血圧の測定を行なった。一部の施設では障害の程度・内容も調査し、SPSS(Ver.17.0)を用いて統計処理した。結果 1.平均年齢は男性38.1±11.1歳(入所41.1±10.3歳、通所33.8±10.8歳)、女性39.5±11.9歳(入所43.1±11.0歳、通所35.6±11.7歳)で男女別の差はなかったが、入所群が通所群より有意に高かった(p<0.001)。2.男性では、体重、体脂肪率、ウエスト周囲径、BMIのすべてにおいて、通所群のほうが高かったが、女性では差は認められなかった。3.血圧は、男女とも通所群のほうが高かった。4.入所群・通所群をそれぞれ障害の程度(療育手帳=障害者手帳の度数)別にさらに重度と中・軽度の2群に分けて比較してみたが、全体と同様の結果であった。結論 知的障害をもつ人は健常者より肥満しやすく、なかでも自宅から作業所などに通っている者は入所者と比較して、肥満がより深刻であることが明らかとなった。この違いは、主として入所者は3食給食で栄養管理が行き届いていることが考えられる。全体的に運動・食事の改善を図ることはもちろんだが、特に通所の男性は食行動や食事内容の改善を図ることで減量の効果が期待できると考えられた。一方、女性では入所者でも肥満が多いことから、入所女性ではさらに活動量を増やす必要が示唆された。
著者
川名 はつ子 野中 浩一 三浦 悌二
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-36, 1994-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
24
被引用文献数
1

日本では早生まれの多い現象が1960年代半ばにはほとんど消えて, 1年中ほぼ平均して生まれるようになった.隣接する韓国・朝鮮との差異を検討するため, 日本人と朝鮮・韓国人の出生季節分布を, 古くからの記録を用いて約300年にわたり比較した.出生数の「早春の山と初夏の谷」の傾向が最もはっきりしていたのは, 19世紀以降のおよそ1世紀半の間の日本であり (山/谷比=約1.5) , その間, 朝鮮・韓国では分布の形は日本と同様ながら, その変動幅は小さかった (山/谷比=約1.1) .ところが日本で季節性の消失した1960年代以降にも, 韓国では早生まれが減少せず, とくに1970年代には「早春の山と初夏の谷」はむしろ明瞭になりつつあるという違いが生じている.日本の早生まれ喪失現象が, 一般に言われていたような, 冷暖房や冷蔵庫の普及などによる脱季節化に起因するものならば, 韓国でも何年かの時差はあっても同様の経過をたどるはずなのに, 却って差が拡大していることから, 冷暖房や冷蔵庫の普及などとは別の要因が働いているらしいことが示唆された.
著者
川名 はつ子 三浦 悌二
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.57-62, 1989-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
5

各国とも人口動態統計の整備される以前には月別出生の統計はなく, 長期の変動を観察するための資料に乏しい.このたび信頼できると思われる朝鮮の族譜の記録から1399~1980年生まれで出生年月の明らかな13, 004人について調べ, 従来知られていなかった朝鮮での月別出生数を明らかにした.その結果, 15~18世紀には春と秋の2つの山がみられたが, 19世紀以降はその傾向が弱まり, さらに20世紀中ごろになると春の山のみが高くなり, 20世紀前半の日本と共通のパターンが見られた.その後, 日本では1964年から一年中ほぼ平坦となったが, 朝鮮では1970~1980年代に入っても, まだ早生まれの多いパターンを残していた.本研究の20世紀に入ってからの動向は, 朝鮮総督府統計年報や韓国人口動態統計から調べた一般人口の結果とほぼ一致した.
著者
川名 はつ子 菊地 潤 中村 泉
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.31-40, 2000

出生前診断について、大学生を含む20歳以上の一般市民1,130人を対象にアンケート調査を行った。596人(52.7%)から出生前診断という言葉の認知・理解度や出生前診断をめぐる生命倫理についての回答を得た。それを性・年齢(20代、30代、40代以上)、既婚・未婚、子の有無別に検討した。結果は以下の通りである。(1)6割以上の人が出生前診断という言葉を知っていたが、理解度は曖昧だった。(2)男性より女性、若者より年長者、未婚者より既婚者、子無しより子有りの人が出生前診断について関心が深かった。(3)多数の女性が、出生前診断を受けるか否かは自分で決めるが、胎児に異常があると告げられた場合は、誰かに相談すると答えている。(4)男性は、出生前診断を受けるか否かや、異常が指摘された場合どうするかは、概ね相手の女性の意向次第と答えている。(5)若い独身女性は、あまり知識がないのに出生前診断に受容的である。(6)しかし全体では出生前診断について、よく知っている人の方が受容的という結果も出ている。(7)情報はテレビ、新聞などのマスコミから得ることが多いが、今後この問題の当事者となる20代の独身女性では、新関から情報を得ている人は少ない。