著者
辻内 琢也 扇原 淳 桂川 泰典 小島 隆矢 金 智慧 平田 修三 多賀 努 増田 和高 岩垣 穂大 日高 友郎 明戸 隆浩 根ケ山 光一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「帰還か移住か避難継続か」の選択を迫られる原発事故被災者が、今後数年間で安心して生活できる新たな居住環境をどのように構築していくのか、現状と問題点を明らかにし、「居住福祉」に資する心理社会的ケアの戦略を人間科学的学融合研究にて提言していくことにある。「居住は基本的人権である」と言われるように、被災者が安心・安全に生活できる基盤を構築するためには、内科学・心身医学・公衆衛生学・臨床心理学・発達行動学・社会学・社会福祉学・平和学・建築学・環境科学といった学融合的な調査研究が欠かせない。応募者らは2011年発災当時から被災者支援を目指した研究を継続させており、本課題にてさらに発展を目指す。
著者
岩垣 穂大 齋藤 篤 Amantay Zhanar 下田 妙子 扇原 淳
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.254-260, 2014-03-31 (Released:2014-04-28)
参考文献数
23

今回の調査によってカザフのナウルズおよびコジェに見る文化的特徴と歴史的変容について以下のことが明らかになった。(1) 独立後, ナウルズはカザフ国内最大級の祝祭であり, 民族の伝統的なイベントとして現在に受け継がれている。誰でも祭りに参加することができるよう, 広場では無料でコジェが配られていたり, さまざまな民族の音楽やダンスが披露されていたりした。その他, 中央アジアの伝統料理であるシャシリクやバウルサックを売る店も見られ, 食や伝統芸能を通してカザフ人の世代間交流や, 異なる民族同士の交流が図られていた。(2) ナウルズが近づくと各家庭でコジェ作りが行われ, 家族・親戚・友人の往来が始まる。コジェに入れる具材は地域の特産によって少々異なるが, 7つ (以上) の食材を入れることと, 白色の食材を入れ全体の色を整えることはすべての家庭で共通していた。コジェに使われる食材はカザフの食卓には欠かせない馬肉や, 穀物類が中心でカザフの日常生活をよく表すものであった。コジェを白色の食材で整える理由は, 白が家畜の乳の色であり, 新年を迎えるにあたって一家の繁栄や幸福を願うからであった。(3) インタビュー対象者の出身地域によってナウルズを公に祝いコジェ作りも行っていた家庭, 家の中だけでコジェを作り祝っていた家庭, 全く祝わず, コジェも作らなかった家庭の3つに分けられた。ソ連との地理的・心理的距離や政治的影響力, カザフ人の人口密度が影響している可能性が指摘された。独立後, 伝統を復興させるために都市部でナウルズを教える, コジェを無料で配るなどの活動も行われ, 現在のナウルズの基盤となった。 調査の中で, 都心部と農村部でのナウルズの祝い方やコジェに加えられる材料が異なることがたびたび指摘された。そのため, 今後農村部を含めたカザフ国内全体の調査が必要である。また, より詳細で信頼性のある調査にしていくために調査員を増やし, インタビューを継続することが必要である。カザフ社会の時代の流れに呼応する文化の変容を見守りつつ, 調査で得られたデータをもとに, カザフの伝統的な祝祭と食文化についてさらに深く体系的に明らかにしていきたい。
著者
岩垣 穂大 辻内 琢也 扇原 淳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.1013-1019, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
31
被引用文献数
2

災害復興におけるソーシャル・キャピタルの役割が注目されている. ソーシャル・キャピタルとは 「社会関係資本」 と訳され, 他者への信頼感, 助け合いの意識, ネットワーク, 社会参加などで評価される人間関係の強さを表す概念である. 先行研究において, 災害発生時, ソーシャル・キャピタルの豊かな地域ではPTSDやうつといった精神疾患の発症リスクが低いとの報告も行われている.本研究では福島第一原子力発電所事故からの避難者を対象にソーシャル・キャピタルとメンタルヘルスの関連について調査を行った. その結果, 高齢者を対象とした調査, 子育て中の母親を対象とした調査のいずれも, 個人レベルのソーシャル・キャピタルが豊かなほどメンタルヘルスが悪化しにくいことが明らかとなった.今後, ソーシャル・キャピタル醸成の視点を取り入れた災害復興政策を行っていくことが重要であると考えられた.
著者
扇原 淳 山路 学
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,高齢者介護施設における感染対策の実態と感染対策を目的とした研修プログラムの開発とその評価を行った.その結果,集団感染が起こってから研修や感染マニュアルの整備を行っている可能性が否定できなかった.また,感染管理に関するビジュアルマニュアルを含む学習管理システムを開発し,その効果の検証を行った.その結果,開発した研修プログラムについては肯定的な評価を得られたが,画像コンテンツの表示の方法についてはいくつかの改善点が指摘された.今後は,学歴や職歴等の多様な背景を有する介護施設職員の個別性に配慮した感染対策研修プログラムのカスタマイズの方策について検討が必要である.
著者
扇原 淳
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

カザフスタン共和国アラル海周辺地域における学校保健プログラム開発のための第一歩として,学校保健プログラムの中心である学校健康教育の現状について把握するために,学校健康教育に関する教科の開発の動向とその課題を明らかにすることを目的とした.現行の学校健康教育教科 Валеология Программа (Алматы, 2005),新しく開発された学校健康教育教科Здоровье и жизненные навыки(2007),同国における学習指導要領にあたるГосударственный общеобязательный стандарт среднего общего образования Республики Казахстан(Алматы, 2002)等の分析に加え,教育科学省及び保健省関係者にインタビューを行った.結果としては以下の5点が明らかになった.1)カザフスタン共和国における初等中等教育は現在11年制であるが,12年制に移行する準備が行われていた.2)同国では,「Валеолoгия(健康科学)」という学校健康教育教科が1998年に設立された.3)この教科の成立に主導的な役割を果たしたのが,National Center for Problems of Healthy Lifestyle Developmentであり,当時所長であったAdilhanov Almuhamed氏であった.4)Валеолoгия(健康科学)の教員はスポーツ大学,医科大学,教育大学で養成されている.5)多数の教科に散在する学校健康教育に関連する内容を統合する形で「Здоровье и жизненные навыки(健康とライフスキル)」が2005年に開発された.同国のが学校保健プログラム開発および学校健康教育の課題として,必要な教育内容の範囲(Scope)と,各年齢段階でどのように学ばせていくかの配列(Sequence)を明確にする作業が不可欠であることが明らかとなった.