- 著者
-
平井 愛山
- 出版者
- 一般社団法人 日本内科学会
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.1, pp.13-20, 1985-01-10 (Released:2008-06-12)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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8
魚脂中に多く含まれるω-3系の多価不飽和脂肪酸,ことにエイコサペンタエン酸(C20: 5,以下EPAと略)には抗血栓,抗動脈硬化作用のあることがグリーンランドエスキモーにおける疫学調査,あるいは一連のEPAに富む魚肉や魚油濃縮物の摂食実験より明らかにされている.そこで魚を多食する食事習慣が血漿脂肪酸構成や,血小板機能あるいは血栓性疾患の発症頻度にいかなる影響を及ぼすかを明らかにする目的で,千葉県下の沿岸漁村と内陸部の都市近郊農村において3年間にわたり疫学調査を行なつた.漁村住民における1日平均魚肉摂取量およびEPA摂取量は農村住民と比較して明らかに高値で,血漿総脂質のEPA含量およびEPA/アラキドン酸(AA)比も間様に漁村住民で有意に高値であつた.一方漁村住民の血小板凝集能は農村住民と比較して明らかに低下していた.漁村住民の3年間にわたる調査の結果,魚肉摂取量(EPA摂取量),血漿EPA/AA比および血小板凝集能が密接な関係を持つて変動することが認められ,漁村住民において農村住民と比較して,血小板凝集能が有意に低下している理由の一つとして,漁村住民が魚を多食し, EPAの摂取量が農村住民より明らかに多いことが考えられた.漁村地域(勝浦市)の虚血性心疾患および脳血管障害による訂正死亡率は,近郊農村地域(柏市)と比較して低値の傾向が認められた.