著者
重松 幹二 河合 真吾 平井 浩文
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-6, 2002-12-25

リグニン分解酵素によるメトキシベンゼン類の酸化反応を予測するため,分子軌道法によってHOMOエネルギーを計算し,酸化電位の実測値と比較した。その結果,半経験的分子軌道法であるRHF/PM3法では,ジメトキシベンゼンまではHOMOエネルギーと酸化電位に良い相関が得られたものの,それ以上の多数のメトキシル基を有するものでは相関が得られなかった。また,溶媒を考慮して計算するRHF/PM3+COSMO法や,より計算精度が高い非経験的分子軌道法であるRHF/6-31G^*によっても,予測に充分な計算結果は得られなかった。これは,親水基として作用するメトキシル基の影響が大きく,酸化反応前後での溶媒和エネルギーの影響が無視できないためと推察した。そこで,理論式に基づいて反応前後の溶媒和エネルギーの差を補正項として導入したところ相関係数が上昇し,特にヘキサメトシキベンゼン以外の全てのメトキシベンゼン類に対して良い相関が得られた。最終的に,分子軌道計算のみで酸化反応の序列の予測が可能であることがわかった。
著者
平井 浩文 一瀬 博文 長井 薫 亀井 一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

世界中で蜂群崩壊症候群や人類に対する悪影響が危惧されている難分解性ネオニコチノイド系殺虫剤(NEOs)が白色腐朽菌により分解可能であるとともに毒性も除去可能であることが明らかとなった。また、本分解反応にはシトクロムP450が関与していることも突き止めた。さらにNEOsのピリジン環を資化可能な細菌を選抜し、白色腐朽菌との共培養を行ったところ、NEOsを効率的に分解可能であることが示唆された。
著者
杉浦 立樹 山岸 賢治 平井 浩文 河岸 洋和
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.382-387, 2010-11-25 (Released:2011-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

高活性リグニン分解菌Phanerochaete sordida YK-624株の産生する,新規リグニンペルオキシダーゼの1種であるYK-LiP2をコードする遺伝子ylpAを高発現する形質転換体A-11株のリグニン分解特性を調査した。ブナ木粉培地においてA-11株は野生株より高いリグニン分解活性を示し,4週間培養後のリグニン分解率は野生株と比較して7.6%高い値を示した。また,その時のリグニン分解選択性も野生株より高い値を示した。A-11株を接種した木粉中のLiP活性は野生株のものより高く,また組換えylpAの転写解析より,A-11株は培養期間を通して安定して組換えylpAを転写していることが判明した。これらの結果より,ylpAの高発現がP.sordida YK-624株のリグニン分解活性を上昇させたことが示された。さらに,市販のセルラーゼを用いた酵素糖化性について検討したところ,A-11株により処理した木粉は野生株のものより高い糖化性を示した。