- 著者
-
平松 達雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本薬剤疫学会
- 雑誌
- 薬剤疫学 (ISSN:13420445)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.34-48, 2022-06-25 (Released:2022-07-25)
- 参考文献数
- 39
Real World Data (RWD) にはさまざまな種類のデータソースがあるが,それぞれ異なる形式や用語コードで構成されているため,分析時に毎回煩わしい作業を繰り返すことになる.RWD の薬剤疫学的分析を一層進めるためには,データ形式や用語コードの標準化が重要である.OMOP Common Data Model (CDM) は世界規模でRWD の分析用標準化を実現するオープン規格であり,コミュニティであるOHDSI(オデッセイ)がその維持発展を担っている.
OMOP CDM が他のデータ規格と際立って異なる特徴は,世界的に用語コードを統合して扱える仕組を作り上げたことと,個別の患者情報をデータ保持者の外に出さないで実施する分析方法である.これにより国際的な共同調査が容易に実施可能になっている.患者情報を外部に出さない方法は,第三者提供ができないが利用目的変更が容易な日本の仮名加工情報制度との親和性が高く,今後の活用が期待できる.
国際的な連携だけでなく,国内の連携,あるいはインハウスでの利用にもメリットが多い.特に疫学者やデータサイエンティストが国内でも国外でも慣れた同じ形式でデータが扱えるようになることで,留学や帰国,国際的な異動時のメリットが人材・組織両方にとって大きいものとなる.
世界的には70 カ国以上で取り組まれ,重複を推定除去して世界人口の10%にあたる8億人以上のデータがOMOP CDM 形式へ変換されており,関連するPubMed 掲載論文も年々増加し累計で250 本を超えている.一方,日本においての普及には支援する仕組や用語コードのマッピングなど課題が多い.国際水準に追いつくためには,幅広い分野からの力強い協力が必要である.