著者
立入 久和 森原 徹 仲川 春彦 木田 圭重 祐成 毅 堀井 基行 久保 俊一 三浦 雄一郎 福島 秀晃 黒川 正夫
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.719-722, 2011 (Released:2011-12-21)
参考文献数
9
被引用文献数
3

Shrug exercise, which is one of the treatments for stiff shoulder and rotator cuff tear, is commonly performed. This exercise is also performed to relax the shoulder after surgery for rotator cuff repair. The effectiveness of shrug exercise for the rotator cuff has not been analyzed. The purpose of this study was to analyze the shrug exercise and to evaluate the usefulness of the shrug. Five asymptomatic male volunteers who had no history of shoulder abnormalities were examined. SSP (supraspinatus) muscle was measured by fine-wire electrodes and ISP (infraspinatus) muscle was measured by surface electrodes. At the time of non-shrug (group N) and shrug (group S), %MVC (maximal voluntary contraction) was calculated in the position of 0, 30, 60, 90 degrees flexion. %MVC of SSP in the position of 0,30,60,90 degrees flexion were 2,8,13,15% in group N, and 32,35,23,32% in group S. %MVC of SSP were increased at each angle. %MVC of ISP were 6,16,25,38% in group N, and 10,17,25,42% in group S. It has been reported that %MVC over 20% is high activity. %MVC of SSP showed over 20% at shrug position in this study, which was considered that shrug motion caused eccentric contraction of SSP muscle with the scapula elevating. From this study, it is considered that shrug excise is useful for cuff training, but may be overloaded on SSP in the early stage after surgery.
著者
森原 徹 木田 圭重 久保 俊一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.841-848, 2017-11-17 (Released:2017-12-21)
参考文献数
4

肩関節疾患の治療法として,注射やリハビリテーションによる保存療法が第一選択として挙げられる.代表的な肩関節周囲炎や肩腱板断裂では,肩関節痛と可動域制限を認めることが多い.その鑑別として問診,視診,触診,理学検査(肩関節可動域・筋力・誘発テスト)および超音波検査が挙げられる.本稿では肩関節における代表的疾患を説明し,これらの疾患に対する評価の進め方について解説する.
著者
幸田 仁志 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 木田 圭重 森原 徹
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.127-131, 2018-10-16 (Released:2018-10-19)
参考文献数
25

〔目的〕投球肩・肘障害を有する高校野球投手の特徴を,関節可動域や筋力の非投球側差より分析した。〔方法〕京都府下の野球検診に参加した高校野球投手76名を対象とした。測定項目は,投球肩・肘障害の判定,関節可動域および筋力とした。関節可動域および筋力は両側に対して実施し,投球側から非投球側の値を減算することで非投球側差を算出した。統計解析には,投球肩・肘障害ごとに,対応のないt 検定を用いて陽性群と陰性群の関節可動域および筋力の非投球側差を比較した。有意水準は5%とした。〔結果〕投球肩障害では,陽性群の肩関節内旋可動域の非投球側差は陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。投球肘障害では,陽性群の肩関節外旋可動域の非投球側差は,陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。〔結論〕肩関節外旋可動域や内旋可動域の非投球側差による分析は,野球選手の機能低下や障害予測を判別する一助となる可能性がある。
著者
南 昌孝 森原 徹 大西 興洋 加太 佑吉 祐成 毅 古川 龍平 木田 圭重 琴浦 義浩 藤原 浩芳 久保 俊一
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.541-544, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
8

胸郭出口症候群(TOS)は,上肢のしびれや放散痛が生じる疾患である.投球時に同様の症状を訴える野球選手をしばしば経験するが,その疫学や病態は明らかでない.高校野球検診でTOSと診断された選手の疫学と病態を検討した.検診に参加した選手のうち,投球時に上肢のしびれや放散痛を自覚しWright testが陽性の選手をTOSの疑いありとした.そのうち病院を受診した選手の病態を検討した.TOSを疑われた選手は305名中13名であり,5名が病院を受診した.5名の身体所見は,肩甲骨の運動不良3例,胸椎のアライメント不良3例であった.すべての選手に運動療法を行い,2ヵ月以内に症状は消失した.野球選手のTOSは,筋の過緊張やリリース時の牽引などが原因とされている.今回経験した5例では筋の過緊張や肩甲骨下方偏位に加え,胸椎のアライメント異常が影響していると考えた.それらを改善することで症状は消失した.
著者
岩崎 滉平 三浦 雄一郎 福島 秀晃 長﨑 進 上村 拓矢 飛田 勇樹 木田 圭重
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.98-103, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
6

In fishing, the act of moving the rod while winding in the line is called the rattling operation. Here we present a case of shoulder stiffness that occurred during rattling in a patient who earlier had had a rotator cuff repair by arthroscopy. The rattling movement is performed by mild external rotation of the shoulder joint. Our case had difficulty performing the movement due to a decrease in the function of the supraspinatus muscle, and stiffness was occurring on the upper surface of the left shoulder. This also negatively influenced our case’s fishing results. Physical therapy involving stimulation of the supraspinatus muscle was performed, paying attention not to over exercise the upper trapezius muscle fibers. With improvement in the function of the supraspinatus muscle, the rattling movement became possible, the stiffness disappeared, and our case’s fishing results improved. The rattling movement is highly dependent on rotator cuff function.
著者
幸田 仁志 森原 徹 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 木田 圭重
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.127-131, 2018

<p>〔目的〕投球肩・肘障害を有する高校野球投手の特徴を,関節可動域や筋力の非投球側差より分析した。〔方法〕京都府下の野球検診に参加した高校野球投手76名を対象とした。測定項目は,投球肩・肘障害の判定,関節可動域および筋力とした。関節可動域および筋力は両側に対して実施し,投球側から非投球側の値を減算することで非投球側差を算出した。統計解析には,投球肩・肘障害ごとに,対応のないt 検定を用いて陽性群と陰性群の関節可動域および筋力の非投球側差を比較した。有意水準は5%とした。〔結果〕投球肩障害では,陽性群の肩関節内旋可動域の非投球側差は陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。投球肘障害では,陽性群の肩関節外旋可動域の非投球側差は,陰性群と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。〔結論〕肩関節外旋可動域や内旋可動域の非投球側差による分析は,野球選手の機能低下や障害予測を判別する一助となる可能性がある。</p>
著者
福島 秀晃 森原 徹 三浦 雄一郎 甲斐 義浩 幸田 仁志 古川 龍平 竹島 稔 木田 圭重
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.776-780, 2019

腱板広範囲断裂(Massive Rotator Cuff Tears: MRCT)における上肢自動挙上可能例と不能例の三角筋・肩甲帯周囲筋群の筋活動を比較検討した.対象は健常者12名12肩(健常群),MRCT36名を上肢自動挙上可能な21名25肩(挙上可能群)と挙上不能な15名16肩(挙上不能群)とした.被験筋は三角筋前部・中部・後部線維,僧帽筋上部・中部・下部線維,前鋸筋とした.測定課題は肩関節屈曲0&deg;,30&deg;位を各5秒間保持し,分析は0-30&deg;間のR-muscle値を算出した.<BR> 三角筋各線維のR-muscle値は,挙上可能群と挙上不能群間において有意差を認めなかった.僧帽筋上部線維のR-muscle値は,健常群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.05).また僧帽筋中部線維のR-muscle値は,挙上可能群と比較して挙上不能群で有意に高値を示した(p < 0.01).<BR> MRCTにおける三角筋各線維の筋活動は,上肢自動挙上の可否に影響しないことが示された.一方,僧帽筋中部線維の筋活動特性がMRCTにおける上肢自動挙上の可否に影響する可能性が示された.
著者
松井 知之 高島 誠 池田 巧 北條 達也 長谷 斉 森原 徹 東 善一 木田 圭重 瀬尾 和弥 平本 真知子 伊藤 盛春 吉田 昌平 岩根 浩二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1122, 2010

【目的】われわれは整形外科医師の協力を得て,理学療法士(以下PT),トレーナーでメディカルサポートチームを有志で組織し,スポーツ選手の肩肘関節疾患の障害予防と治療を目的に2008年から活動を行っている.今回その活動内容と特徴について報告する.<BR>【方法】1. 京都府高校野球連盟(以下高野連)からの依頼によって,京都府高校野球地方大会のサポートを,PT,医師,トレーナーが協力して行っている.具体的には,試合前検診,処置,試合中の救急対応,試合後の検診およびアイシング,コンディショニングを行い,選手が安心,安全にプレーできるようにサポートしている.<BR>2.中学生,高校生の野球選手に対してシーズンオフである冬季に行われる技術・トレーニング講習会で検診を行っている.医師による肩肘超音波検査,PT3名,1グループによる理学所見評価を行い,トレーナーがコンディショニングを指導している.<BR>3.肩肘関節の障害を認め,保存療法が必要な選手を月2回医師,PT,およびトレーナーでリハビリテーション加療を当院で行っている.<BR>4.月一回,PTが中心となって円滑な情報交換を行うことを目的に勉強会を行い,多施設(病院およびスポーツ現場を含む)共通の問診表,評価項目,投球復帰プログラムの作成を行っている. <BR>【説明と同意】京都府高校野球地方大会のサポートに関しては,高野連から各チームに事前通達を行った.またわれわれも大会前の抽選会,試合前のコイントス時に部長,主将に説明し,試合前後の検診やコンディショニング指導を行っている.検診事業も,原則希望者のみとし,施行するにあたっては,監督,保護者,選手に十分な説明と同意を得た上で実施している.<BR>【結果】1.京都府高校野球大会のサポートは,春・夏・秋の準々決勝から行った.2009年秋季大会では,登板投手24名中,検診およびコンディショニングを実施したのが14名,アイシングのみ実施が3名であった.<BR>2.検診事業は,昨年投手68名に対し,肘関節の超音波検査および理学検査を行った.その際超音波検査で上腕骨小頭障害の投手は5名であった.同年12月には中学生野球教室の際に287名に対し肘関節の超音波検査,投手57名に理学検査を行った.上腕骨小頭障害の選手は8名であった.いずれの検診の際も,検診結果のフィードバックおよびコンディショニング内容のパンフレットを配布し指導を行った.<BR>3.2008年6月から2009年10月までに当院スポーツリハビリテーションに受診した選手は,小・中学生7名,高校生24名,大学・社会人が24名であった.うち投球障害肘が16名,投球障害肩が31名,その他8名であった.多施設間の情報交換資料として,問診表から評価表を作成した.<BR>【考察】京都府高校野球大会のサポートとしては,抽選会時などにメディカルサポートチームの案内に加え,傷害予防,熱中症対策など講演を行い,啓蒙活動を行った.大会中には,投球直後の身体所見を評価し,コンディショニング指導を行った.コンディショニングに関しては,どこまでわれわれが介入するか,難しい問題であるが,コンディショニングの大切さを啓蒙することが重要と考えている.大会サポートに関しても,選手のみならず,可能な限り指導者とコミュニケーションを図る必要があると考える.<BR>検診事業は,ポータブル超音波機器を使用することで,障害の早期発見,早<BR>期治療が可能であり,フィールドで簡便に行える有用な評価法とされ,われわれも導入した.PT3名1グループによる理学所見検査によって,正確なデータを蓄積し,それを分析することで,根拠ある評価,治療を確立し,障害予防に寄与すると考えた.しかし,検診の開催時期,二次検診などフォローアップに関する問題点も多く,今後の課題である.当院スポーツリハビリテーション受診数は増加傾向にあるが,現状は月2回程度の実施であり,多施設で協力して診療を行う必要であり,施設間における共通の評価,投球障害復帰プログラムの作成の必要性が生じる.これによって,選手の現状把握が容易となり,円滑な情報交換が行なえると考えた.また,診療場面に多くのスタッフが集まることで,実際の評価,診療内容を共有可能であり,選手の問題点についても討論することも可能であった.しかし医師,PTおよびトレーナーの連携は良好だが,指導者や家族とのコミュニケーションは十分とは言えず,今後の課題である.<BR>【理学療法学研究としての意義】われわれの取り組みは,多くの職種との連携を重視したものである.投球障害の治療は原則保存療法であり,PTが担う役割は大きいが,投球障害を有する選手の競技復帰は,医師や現場のトレーナーなど多職種との連携,協力が必要である.本活動は,他府県の活動を参考にしているが,今後このような活動を行う方への参考になれればと考える.
著者
松井 知之 森原 徹 東 善一 瀬尾 和弥 平本 真知子 木田 圭重 高島 誠 堀井 基行 久保 俊一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.223-226, 2013-06-01 (Released:2013-06-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

The pitching motion requires neck, trunk and hip rotations. The purpose of this study was to investigate the relationship between pitching injuries and dominant versus non-dominant differences of the ranges of these motions. The subjects were 66 high school baseball pitchers who received medical checkup during baseball classes in Kyoto prefecture. During medical checkup, physical therapists measured the ranges of neck/trunk rotations, and internal rotation of the bilateral hips. Then orthopaedic doctors did special tests such as shoulder internal impingement test, subacromial impingement test, elbow valgus stress test and elbow hyper extension test. Fourteen pitchers (21.2%) who were positive in one or more special tests were judged to require second screening (injured group). In normal group, average neck/trunk rotations toward the non-dominant side were significantly wider than rotations toward the dominant side. Average hip internal rotation was significantly wider on the non-dominant side than on the dominant side. In injured group, a larger number of pitchers had wider neck and trunk rotation ranges toward the dominant side than toward the non-dominant side, and had wide hip internal rotation range on the dominant side compared to the non-dominant side. Comparing the ranges of the neck/trunk rotations and hip internal rotation between dominant and non-dominant sides might be useful for the prediction of pitching injuries of the shoulder and the elbow.
著者
松井 知之 森原 徹 平本 真知子 東 善一 瀬尾 和弥 宮崎 哲哉 来田 宣幸 山田 陽介 木田 圭重 池田 巧 堀井 基行 久保 俊一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.463-468, 2014-10-01 (Released:2014-10-02)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

Pitching motion is made up by three-dimensional whole body movement. Pelvic and trunk rotation movement is important for the prevention of throwing injuries. Throwing is not a simple rotation movement. Evaluation should reflect muscle strength, coordination, and pitching motion characteristics. We have devised throwing rotational assessment (TRA) similar to throwing as the new evaluation of total rotation angle required for throwing. The purpose of this study was to introduce the new method and to examine the characteristics of players with throwing disorders. The subjects were 76 high school baseball pitchers who participated in the medical check. Pain-induced tests were elbow hyperextension test and intra-articular shoulder impingement test. Pitchers who felt pain in either test were classified as disorder group. TRA evaluation was performed as follows. In the positions similar to the foot contact phase, rotation angles of the pelvis and trunk were measured. In the position similar to follow through phase, the distance between the middle finger and the second toe was measured. All tests were performed in the throwing and opposite direction. Twenty five pitchers were classified as disorder group. All TRA tests in healthy group were significantly higher in the throwing direction than in the opposite direction, but there was no significant difference in the disorder group. Disorder group had significantly lower average rotation angles of the pelvis and trunk in the throwing direction and rotation angle of trunk in the opposite direction than the healthy group. Restrictions on TRA reflecting the complex whole body rotation movement may be related to the throwing disorder. This evaluation is a simple method. It would be useful early detection of throwing disorder and systematic evaluation in medical check, as well as self-check in the sports field.
著者
平本 真知子 松井 知之 東 善一 瀬尾 和弥 福嶋 秀記 長谷川 敏史 西尾 大地 相馬 寛人 伊藤 盛春 山内 紀子 水嶋 祐史 森原 徹 木田 圭重 堀井 基行 久保 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100563, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】 投球障害のリハビリテーションでは、局所のみならず、全身の評価・アプローチが重要である。投球障害の原因として、身長や関節可動域の低下が報告されているが、成長期である小学生・中学生と高校生における関節可動域の変化については明らかではない。われわれは、投球障害のリハビリテーションを行う上の、小・中・高校生の関節可動域特性を明らかにする目的で、投手に対して上肢・体幹・下肢関節可動域を測定し、比較検討した。【方法】 対象は2008年から2011年にメディカルチェックに参加した京都府下の小・中・高校生投手517例であった。内訳は高校生264例、中学生182例、小学生71例であった。 検討項目は、肩関節2nd外旋および内旋、肩関節3rd内旋、股関節内旋および外旋(90°屈曲位)、SLR、HBD、頚部・胸腰部回旋の各関節角度とし、日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会の測定方法に準じて行った。 検者は操作、固定、角度測定、記入を分担し、代償動作に十分注意し、4名1グループで行った。 得られたデータを小・中・高校生の各年代間で比較検討した。検定は、クラスカル・ワーリス検定を用い、事後検定として、多重比較検定(Steel-Dwass法)を用いた。有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究は京都府立医科大学倫理委員会の承認を得た。参加者およびチーム責任者に対し、メディカルチェックの意義、重要性の説明を行った。同意を得られた希望者のみを対象とした。【結果】 肩関節2nd外旋では、小学生133.2±12.3度、中学生124.1±11.6度、高校生125.3±9.9度であった。小学生が中・高校生に比べ有意に大きな値であった。 投球側股関節外旋では、小学生62.5±13.1度、中学生56.9±8.4度、高校生56.1±10.1度であり,小学生が中・高校生に比べ有意に大きな値であった。 非投球側股関節内旋では、小学生41.3±12.2度、中学生41.3±13.6度、高校生35.6±12.9度であり,小・中学生が高校生よりも有意に大きい値であった。 投球側SLRでは、小学生59.3±12.1度、中学生58.6±9.1度、高校生53.7±13.9度であった。非投球側SLRでは、小学生59.7±11.0度、中学生58.9±9.5度、高校生54.8±14.8度であった。投球側、非投球側ともに小・中学生が高校生よりも有意に大きい値であった。 投球側HBDでは、小学生6.1±5.3度、中学生10.8±6.0度、高校生14±6.6度であった。非投球側HBDでは、小学生6.3±5.5度、中学生11.3±6.5度、高校生14.2±6.5度であった。投球側・非投球側ともに年代が上がるとともに有意に増加した。 投球側頚部回旋では、小学生83.5±12.6度、中学生85.4±14度、高校生77.9±12.8度であった。非投球側頚部回旋では、小学生83.6±9度、中学生82.5±12.6度、高校生77.3±10度であった。投球側・非投球側ともに小・中学生が高校生に対して有意に大きな値であった。 投球側胸腰部回旋では、小学生46.0±13.4度、中学生47.4±11.9度、高校生50.9±9度であった。非投球側胸腰部回旋では、小学生46.7±12.8度、中学生47.3±12度、高校生52.3±9.2度であった。投球側・非投球側ともに高校生が小・中学生よりも有意に大きな値であった。【考察】 全国的に投球障害の早期発見・治療を目的とした検診やメディカルチェックが行われているが、野球選手の身体特性を検討したメディカルチェックの報告は少ない。 一般健常人は年齢と共に柔軟性が減少すると報告されている。本研究の結果も、年代が上がるにつれ関節可動域は減少する傾向であった。しかし、胸腰部回旋のみ高校生が有意に大きな値であった。投球動作中における体幹機能については,成長とともに、体幹回旋角度が増大する、体幹の回旋が投球スピードに影響を与えるなど多数報告されている。 年代が上がるにつれて、各関節可動域は減少していくが、投球動作に重要な要素である胸腰部回旋角度は増大する傾向であった。投球障害を有する選手へのリハビリテーションを考える上で、各年代の関節可動域特性を理解することは重要である。【理学療法学研究としての意義】 各年代の関節可動域特性が明らかになり,投球障害で受診した選手へのリハビリテーション、投球障害予防におけるスポーツ現場でのコンディショニング指導の基礎的なデータとなりうる。