著者
伊達 洋至 小池 薫 板東 徹 庄司 剛 陳 豊史 藤永 卓司 岡本 俊宏 佐野 由文 大藤 剛宏 山根 正修
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、京都大学(呼吸器外科および救急医学分野)と岡山大学(呼吸器外科)の共同研究により、心停止ドナーからの肺移植臨床応用をめざすものである。体外肺還流(ex-vivo lung perfusion, EVLP)の実験系を用いて、両大学で大動物実験を継続した。京都大学では、EVLP還流液としてのET-Kyoto液の有用性とEVLPによる肺水腫を来したグラフト肺修復の可能性を報告した。一方、岡山大学では、EVLP中に吸着膜を使用して炎症性サイトカイン(TNFαとIL-8)を除去する効果を検討し、サイトカイン以外の因子がグラフト肺の傷害に関与している可能性を示した。
著者
庄司 剛
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

・肺移植モデルにおいて拒絶病変と直接・間接認識経路の関与を、グラフトの病理学的所見およびin vivo, in vitroアッセイにて検討した。ラット及びミニブタ大動物モデルにて肺移植術を行い、術後グラフトの経時的変化を病理学的に評価した。ラット肺移植においては、拒絶病変モデルにおいて拒絶発生時の呼吸生理機能と病理所見の関連性を検討した。また近年、免疫寛容に関与していると注目されている制御性T細胞の特異的マーカーであるFOXP3の発現が、拒絶病変の出現にも関係しているという報告が散見されており、我々は拒絶病変の克服、免疫寛容の導入を目的として、ミニブタを用いた大動物肺移植慢性実験モデルを確立し、同モデルを用いて、急性拒絶病変発現の際のレシピエント内のFOXP3の発現を検討した。ミニブタ(20-30kg)を用いて同種左肺移植を行い、ドナー・レシピエントの選定においてはレシピエントのドナーに対するリンパ球混合反応(MLR)がhigh response(cpm>5000)であることを確認した。免疫抑制剤は一切使用せず、術後評価として胸部レントゲン(術後3,4,5,6,7,10)、開胸肺生検(術後4,7,10)によるグラフトの病理組織診断を施行した。さらに採血を行い、末梢血単核球を分離、末梢血中のFOXP3発現を評価した。末梢血中のFOXP3発現においては、術後4日目に全例が最高の発現を示した。しかし、その後発現は漸減した。末梢血中FOXP3発現が、病理組織では認めるものの胸部レントゲンでは発見できない拒絶早期に上昇していることが認められ、末梢血中FOXP3発現が肺移植の早期拒絶マーカーになりうる可能性が示唆された。