著者
江波戸 智希 廣重 陽介 吉岡 利貢 広瀬 統一
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.75-84, 2021-10-31 (Released:2021-11-26)
参考文献数
29

股関節・鼠径部痛(Groin Pain:以下GP)の既往者におけるランニング動作の特徴を3次元動作解析を用いてバイオメカニクス的に明らかにすることを目的とした.過去1年間に股関節・鼠径部に痛みを有したことがある脚,11脚を股関節・鼠径部痛群(GP群)とし,痛みの既往がない脚,14脚をコントロール群(C群)として検討を行った.結果,GP群のランニングの特徴として支持期において遊脚側の骨盤が下制しているトレンデレンブルグ徴候が認められた.また股関節は内転位となり,足関節は回外から回内への角度変化が少なかった.GPのリハビリテーション・予防にはランニング動作における骨盤,股関節,足関節運動の改善の必要性が示唆された.
著者
廣重 陽介 浦辺 幸夫 榎並 彩子 三戸 憲一郎 井出 善広 岡本 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.FeOS3067, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】スポーツ現場で頻繁に遭遇する足関節外側靭帯損傷において、競技復帰が遅れる要因のひとつとして長期にわたる腫脹の残存があげられる。腫脹など受傷直後の炎症反応のコントロールにはRICE処置が用いられ、応急処置として浸透している。近年、組織修復促進効果があるとされている(Owoeyeら,1987、藤谷ら,2008)マイクロカレント刺激(Microcurrent electrical neuromuscular stimulation,MENS)もRICEと併用することがあり、筆者らも腫脹の軽減に有効であると考えている。しかし、MENSが腫脹軽減に効果があるというエビデンスは十分でなく、MENS単独での有効性を報告した文献は見当たらない。 本研究では、MENSが急性期に発生する腫脹を軽減するか否かを検討することを目的とした。【方法】対象は足関節外側靭帯損傷と診断され、視覚的に腫脹を認め、受傷後72時間以内、初回損傷、RICE処置を施していない患者22名とした。対象をMENS施行群(MENS群)11名(男性6名、女性5名)と非施行群(安静群)11名(男性5名、女性6名)に無作為に分けた。MENS群の年齢(平均±SD)は35.3±18.9歳、身長は162.9±11.2cm、体重は58.5±7.1kg、安静群の年齢は30.2±19.7歳、身長は163.3±7.5cm、体重は60.8±14.7kgであった。 説明と同意の後、水槽排水法にて足部・足関節の体積を測定した。その後、安静背臥位にて2個のパッド(5cm×5cm)を前距腓靱帯の距骨、腓骨付着部付近に貼付し、MENS群はMENSを20分間施行し、安静群は通電せず20分間安静を保った。再び体積を測定し、最後に医師から処方された理学療法を実施した。MENSにはDynatron950plus(Dynatronic Corporation,USA)のmicrocurrent modeを使用し、周波数0.5Hz、パルス幅1sec、刺激強度50μAとした。 測定値より、各群の体積、腫脹の程度およびその変化率を求めた。腫脹の程度は、水槽排水法による健常者の足部・足関節の体積は左が1.4%大きい(廣重ら,2010)ことを考慮し、非受傷側の体積から受傷側における受傷前の体積を算出し、これを基準とした。 統計学的検定として、各群におけるMENS前後、安静前後の腫脹の程度の差には対応のあるt検定を、MENS群と安静群との腫脹の程度の差、腫脹変化率の差には対応のないt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。【説明と同意】対象には事前に研究の目的と方法に関する説明を十分に行い、紙面にて同意を得て測定を行った。本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号1001)。【結果】MENS群で、MENS施行前の足部・足関節の体積(腫脹の程度)は977.0±111.1ml(106.2±3.9%)、施行後の体積は967.2±107.0ml(105.2±4.1%)となり9.8±6.9ml(1.0±0.7%)減少した。(p<0.05)。安静群で、安静前の体積は911.4±167.1ml(106.5±3.4%)、安静後の体積は909.2±166.6ml(106.2±3.2%)となり2.2±4.7ml(0.3±0.6%)減少したが、有意差は認められなかった(p=0.16)。 各群の腫脹の程度に有意差は認められなかった(p=0.86)。 各群の体積減少率を比較すると、MENS群の体積減少率が有意に大きかった(p<0.05)。【考察】MENSについて、Gaultら(1976)が阻血性皮膚潰瘍患者に施行したところ治癒が早まったと報告して以来、様々な臨床効果が報告されている。森永(1998)は、MENSは微弱電流を通電することで組織損傷時に生じる損傷電流の働きを補い、ATPやたんぱく質の合成を速め、組織修復促進の効果が期待される物理療法であるとしている。従来の電気刺激がはっきりした通電感覚を与えるのに対し、MENSは感覚刺激のない微弱な電流を使用するため、不快感を与えることなく治療を行うことができる。 MENSの腫脹に対する効果を認める者もいるが、その客観的評価や基礎的なデータはほとんどみられず、効果に対して懐疑的意見もあった。しかし今回、足関節外側靱帯損傷患者の急性期においてMENS使用前後で足部・足関節の体積が有意に減少したことから、MENS単独でも腫脹の軽減に効果が認められた。 本研究における腫脹の軽減はそれほど大きくはなかったが、水槽排水法を用いた信頼性が高い方法(廣重ら,2010)で測定したため、少ない体積変化も正確に読み取ることができたと考えられる。 板倉(2008)は、足関節外側靭帯損傷後の理学療法(MENS+冷却)で10~26mlの体積減少を認めたと報告している。今回の減少量9.8±6.9mlを考慮すると、他治療との併用においてもMENSの腫脹軽減に対する効果は大きいと考えられる。 作用機序など分からないことが多いが、今後、臨床研究により様々な使用方法を検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】MENSは足関節外側靱帯損傷患者の急性期において腫脹の減少に有効であり、早期復帰の一助と成り得ることが示唆された。
著者
廣重 陽介 浦辺 幸夫 榎並 彩子 三戸 憲一郎 井出 善広 岡本 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.FeOS3067, 2011

【目的】スポーツ現場で頻繁に遭遇する足関節外側靭帯損傷において、競技復帰が遅れる要因のひとつとして長期にわたる腫脹の残存があげられる。腫脹など受傷直後の炎症反応のコントロールにはRICE処置が用いられ、応急処置として浸透している。近年、組織修復促進効果があるとされている(Owoeyeら,1987、藤谷ら,2008)マイクロカレント刺激(Microcurrent electrical neuromuscular stimulation,MENS)もRICEと併用することがあり、筆者らも腫脹の軽減に有効であると考えている。しかし、MENSが腫脹軽減に効果があるというエビデンスは十分でなく、MENS単独での有効性を報告した文献は見当たらない。<BR> 本研究では、MENSが急性期に発生する腫脹を軽減するか否かを検討することを目的とした。<BR><BR>【方法】対象は足関節外側靭帯損傷と診断され、視覚的に腫脹を認め、受傷後72時間以内、初回損傷、RICE処置を施していない患者22名とした。対象をMENS施行群(MENS群)11名(男性6名、女性5名)と非施行群(安静群)11名(男性5名、女性6名)に無作為に分けた。MENS群の年齢(平均±SD)は35.3±18.9歳、身長は162.9±11.2cm、体重は58.5±7.1kg、安静群の年齢は30.2±19.7歳、身長は163.3±7.5cm、体重は60.8±14.7kgであった。<BR> 説明と同意の後、水槽排水法にて足部・足関節の体積を測定した。その後、安静背臥位にて2個のパッド(5cm×5cm)を前距腓靱帯の距骨、腓骨付着部付近に貼付し、MENS群はMENSを20分間施行し、安静群は通電せず20分間安静を保った。再び体積を測定し、最後に医師から処方された理学療法を実施した。MENSにはDynatron950plus(Dynatronic Corporation,USA)のmicrocurrent modeを使用し、周波数0.5Hz、パルス幅1sec、刺激強度50μAとした。<BR> 測定値より、各群の体積、腫脹の程度およびその変化率を求めた。腫脹の程度は、水槽排水法による健常者の足部・足関節の体積は左が1.4%大きい(廣重ら,2010)ことを考慮し、非受傷側の体積から受傷側における受傷前の体積を算出し、これを基準とした。<BR> 統計学的検定として、各群におけるMENS前後、安静前後の腫脹の程度の差には対応のあるt検定を、MENS群と安静群との腫脹の程度の差、腫脹変化率の差には対応のないt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。<BR><BR>【説明と同意】対象には事前に研究の目的と方法に関する説明を十分に行い、紙面にて同意を得て測定を行った。本研究は当院倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号1001)。<BR><BR>【結果】MENS群で、MENS施行前の足部・足関節の体積(腫脹の程度)は977.0±111.1ml(106.2±3.9%)、施行後の体積は967.2±107.0ml(105.2±4.1%)となり9.8±6.9ml(1.0±0.7%)減少した。(p<0.05)。安静群で、安静前の体積は911.4±167.1ml(106.5±3.4%)、安静後の体積は909.2±166.6ml(106.2±3.2%)となり2.2±4.7ml(0.3±0.6%)減少したが、有意差は認められなかった(p=0.16)。<BR> 各群の腫脹の程度に有意差は認められなかった(p=0.86)。<BR> 各群の体積減少率を比較すると、MENS群の体積減少率が有意に大きかった(p<0.05)。<BR><BR>【考察】MENSについて、Gaultら(1976)が阻血性皮膚潰瘍患者に施行したところ治癒が早まったと報告して以来、様々な臨床効果が報告されている。森永(1998)は、MENSは微弱電流を通電することで組織損傷時に生じる損傷電流の働きを補い、ATPやたんぱく質の合成を速め、組織修復促進の効果が期待される物理療法であるとしている。従来の電気刺激がはっきりした通電感覚を与えるのに対し、MENSは感覚刺激のない微弱な電流を使用するため、不快感を与えることなく治療を行うことができる。<BR> MENSの腫脹に対する効果を認める者もいるが、その客観的評価や基礎的なデータはほとんどみられず、効果に対して懐疑的意見もあった。しかし今回、足関節外側靱帯損傷患者の急性期においてMENS使用前後で足部・足関節の体積が有意に減少したことから、MENS単独でも腫脹の軽減に効果が認められた。<BR> 本研究における腫脹の軽減はそれほど大きくはなかったが、水槽排水法を用いた信頼性が高い方法(廣重ら,2010)で測定したため、少ない体積変化も正確に読み取ることができたと考えられる。<BR> 板倉(2008)は、足関節外側靭帯損傷後の理学療法(MENS+冷却)で10~26mlの体積減少を認めたと報告している。今回の減少量9.8±6.9mlを考慮すると、他治療との併用においてもMENSの腫脹軽減に対する効果は大きいと考えられる。<BR> 作用機序など分からないことが多いが、今後、臨床研究により様々な使用方法を検討していきたい。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】MENSは足関節外側靱帯損傷患者の急性期において腫脹の減少に有効であり、早期復帰の一助と成り得ることが示唆された。