著者
御田 成顕 細谷 忠嗣 井上 裕香子 伴 和幸 冨澤 奏子 松本 七海
出版者
Association of Wildlife and Human Society
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.25-33, 2021 (Released:2022-02-01)
参考文献数
22

Zoos are expected to play a role in environmental education. However, zoos have not been able to provide sufficient opportunities for experiential learning to the age groups from the upper grades of elementary school to university students, who rarely have the opportunity to visit a zoo. Zoos are required to carry out various recruiting and public relations activities to increase the opportunities of coming to a zoo for these age groups. This study aimed to collect basic information relevant to pursuing the potential of zoos as a site of environmental education for these age groups. A questionnaire survey targeting 479 vocational school students in the city of Fukuoka was administered. As a result, zoos were generally recognized as a place for recreation. In contrast, some students interested in animals considered zoos to be a place for learning, and it is necessary to increase their satisfaction with this purpose. To enhance the role of the zoo as a place of environmental education, it is necessary to devise exhibitions in which animals can be enjoyed and to satisfy the basic requirements of visitors who visit for various purposes. It will be possible to promote the environmental education role of zoos by encouraging and arousing interest in the age group and connecting them to learning.
著者
志賀 薫 増田 美砂 御田 成顕
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.1-13, 2012
参考文献数
47

本研究では,ジャワの林業公社が2001年に導入したPHBM(住民共同森林管理)の地域開発および森林保全に対する効果を明らかにした。PHBMはLMDH(森林村住民組織)が割当林班の保全を行う対価として,林業公社側は収益の分配を行うという互恵的関係を基軸に,割当林班のもたらす収入機会を排他的に利用する権利を認めるという点において,それ以前の地域対策と異なっていた。しかし,中ジャワ州プマラン県P村の事例では,LMDHの執行委員のみが運営に関与し,収益の分配をはじめ,様々な特権を得ていた。また,PHBM実施後,統計上は管区内の盗伐は収束したが,PHBMに対するP村住民の認知度が低かったことやLMDHの活動開始時期,盗伐の収束はPHBMの効果によるとは断定し難く,チーク林資源の減少も影響していたと考えられた。PHBMは,運用段階において問題が多く,LMDHの運営の在り方を改めて検討する必要がある。
著者
齋藤 達也 加藤 亮 御田 成顕 Indra Kumara 増田 美砂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.36, 2003

1.目的および方法 本研究では、地理的に隔離され域外への木材の輸送ができないという限定された条件を持つ地域において、人口の動態によって森林がどのような影響を受けるのかを探る。また、その影響を左右する要因について考察する。本研究では、衛星画像によって森林保全の評価を行うために、グランドツルースとして訪ねた地点の座標とその地点の概況を記録した。画像データは、Path:118、Row:57のLandsat TM(1991/6/14)、Landsat ETM+(1999/12/21、2002/5/19)を利用した。また、人口動態を知るために、クラヤン郡の人口統計資料を収集するとともに、ケラビットへ出稼ぎをしている人が多いL村において、全41世帯のうち19世帯に対し、聞き取り調査を実施した。2.調査地の概況 調査地は、東カリマンタン州の東北部のヌヌカン県クラヤン郡(以下、クラヤン)で、マレーシアのサラワク州およびサバ州に境界を接し、面積3170km2,世帯数1957世帯、人口9199人(2001年)である。周囲を山岳に囲まれているため交通のアクセスは悪く、インドネシア側からはヌヌカンとタラカンなどからの空路のみである。陸路は唯一サラワク側との間に1本あるが、国境に入国管理事務所がないため、その陸路もインドネシアの独立記念日に開かれるのみで、自動車を利用した輸送には利用できない。同じ民族が国境をを挟んで両国の山間地域に生活していて、姻戚関係を持つ世帯もあり、日常的な徒歩での行き来もある。サラワク側はケラビット・ハイランドと呼ばれ、マレーシアの経済発展により都市部への人口流出によって、人口の減少及び高齢化が進んでおり、焼き畑地が放棄され2次林が回復しているといわれる。これに対し、クラヤンでは、人口は微増しており、人工衛星の画像からは森林回復は全く否定的と判読された。1960年代の国境紛争時にインドネシア政府によって集村化が行われ、現在27の地区(Lokasi)に89の村(Desa)が集められていて、1つの集落が数村からなることもある。集村化の際には、火事による損害軽減のためにかつてのロングハウス居住形態が解体され、戸別の住居に転換された。ケラビットではロングハウスが残るのとは対照的である。クラヤンの主な産業は米作で年1作であり、生産された米はマレーシアに売りに行き、そこで生活に必要な物を購入してくるというように、クラヤンはマレーシアとの結びつきが強い。また、ケラビットの不足した労働をクラヤンからの出稼ぎが補ってもいる。3.結果 郡長や住民へのインタビューから、現在クラヤンにおいては焼き畑を行っているものはほとんどいないことがわかった。理由は、焼き畑による陸稲栽培は多大な労力の割に収量が少なく、水稲栽培を選ぶからである。しかし、クラヤンでは樹木がない山が多く見られ、その理由については野焼きの火が飛び火し、コントロールが効かなくなり山火事になったためと説明された。特に、1997年は山火事がひどかったとのことである。L村では、徒歩で8時間のケラビットのバリオに出稼ぎに行く者が多く、中にはバリオに水田を借りて水稲栽培をしている世帯もあった。つまり、自分の水田で生産した米の売却と出稼ぎによって得る収入が家計を支えている世帯が多い。森林利用については、チェーンソーを19世帯のうち12世帯が所有し、自己消費の薪炭材および建築用材を近くの山から伐採している。また、伐採した材は水牛によって搬出し、クラヤン郡内の町に売りに行くこともある。チェーンソーを持たない世帯でも、親戚から借りることによって必要な木材を調達している。4.考察 人口動態は、経済格差により生じることがあり、それによって森林の保全に差異を生じることが上記の調査によってもわかる。ケラビットでは、国内の経済格差により人口が流出し、それによって焼き畑が放棄され森林が回復している。これに対し、クラヤンでは経済危機から回復しない国内の都市部に向かうよりも、隣接するマレーシアに出稼ぎに出かけ、それによって生計が安定的に支えられ、人口を維持することができる。しかし、それにより山火事の原因となる野焼きの機会が多くなり、森林が消失していると考えられる。このように国内の経済発展により、森林のある山間部から人々が流出することによって、森林は保全されるのかもしれない。しかし、これはケラビットやクラヤンのように木材の搬出路を持たない場合である。つまり、木材資源があってもそれが経済的な価値を持たなければ、商業的な森林伐採は成立しない。現在、クラヤンと外部とを結ぶ道路が計画されている。この道路が開通したとき、この地域の森林がどのような変貌を遂げるのか、興味深い。また、クラヤン内にはカヤン・ムンタラン国立公園があり、エコツーリズムも期待される。
著者
前島 治樹 藤平 啓 御田 成顕 増田 美砂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

本報告では、インドネシアのグヌンパルン国立公園を事例として、森林減少に直接的な影響を与える土地利用を特定し、国立公園管理の課題を明らかにする。まず、USGSから取得した1997年、2001年、2005年、2009年のLandsat TM/ ETM+および2013年のLandsat 8の衛星画像を用い、教師付き最尤法による土地被覆分類図を作成した。その結果、解析対象地域内の国立公園面積4,916 haのうち、森林消失面積は、2001~2005年に60 ha/年と最も大きく、2009~2013年は31 ha/年へと減速していた。国立公園外の3,175 haにおける森林消失に関しては、1997~2001年の19 ha/年が、2005~2009年に42 ha/へと増加したが、2009~2013年は4 ha/年と激減した。国立公園内外の1997年~2013年の土地被覆変化モデルを比較すると、森林がゴム林あるいは農地に変化した面積の比率は公園内の方が5%高かった。全体的な森林破壊の減速には、国立公園事務所による取り締まり強化の影響があると考えられるが、森林の農地転換にみる公園内外の相違は、公園外における適地の枯渇を示唆している。