著者
恒石 美登里 山本 龍生 石井 拓男 佐藤 保 山口 武之 牧野 利彦
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.349-356, 2017-12-31 (Released:2018-01-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2

レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,高齢者における現在歯数および欠損歯数と誤嚥性肺炎による医科受診との関連を検討した。 2013年4月分の歯科の診療報酬明細書データに誤嚥性肺炎病名および医科点数のデータを結合し,65歳以上の歯周炎病名および欠損歯病名を有する1,662,158名および356,662名を対象とした。歯周炎病名の歯式から現在歯数,欠損歯病名の歯式から欠損歯数を算出して3群に分け,誤嚥性肺炎による医科受診の有無との関連を検討した。 誤嚥性肺炎の割合は,現在歯数が20~32,10~19および1~9の者でそれぞれ0.08,0.14および0.25%であった。また,欠損歯数が1~14,15~27および28~32の者ではそれぞれ0.09,0.18および0.43%であった。誤嚥性肺炎の有無を目的変数として性と年齢を調整したロジスティック回帰モデルにおいて,現在歯数が20~32の者を基準とした10~19および1~9の者のオッズ比はそれぞれ1.20および1.53で有意に高かった。また,欠損歯数が1~14を基準とした,15~27および28~32の者のオッズ比はそれぞれ1.67および3.14と有意に高かった。 歯周炎病名および欠損歯病名で歯科を受診した高齢者において,現在歯数の少ない者ほど,欠損歯数の多い者ほど医科医療機関で誤嚥性肺炎の治療を受けていたことが明らかとなった。
著者
恒石 美登里
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

膿栓をもつ者に他覚的な口臭があることは,経験的に知られている。しかし,膿栓と口臭との関連性は科学的に証明されていない。そこで本研究の目的は膿栓の表面の観察および構成する細菌を特定することで,膿栓と口臭との関連性を明らかにすることとした。口臭を主訴に来院し,同意の得られた6名の膿栓を調査した。採取した膿栓からDNAを抽出後,PCR法で増幅を行い電気泳動により16S rDNAに相当するバンドを回収した。大腸菌ベクターへ挿入後クローニングした16S rDNAにより遺伝子配列を決定後,菌種の同定を行った。また25歳男性の膿栓を滅菌キュレットで採取後,固定処理を行い乾燥後,白金で金属膜蒸着を行い走査型電子顕微鏡(S-900,日立製作所)で観察を行った。採取した膿栓は白色から薄い黄色を呈しており,表面は滑沢で米粒のような形状をしていた。扁桃腺の陰窩から膿栓を採取した際には,出血や痛みなどの臨床症状も認めなかった。走査型電子顕微鏡で,表層を拡大してみると菌が絡みあって構成されている様子が確認できた。膿栓表層をさらに倍率をあげて確認すると,球菌が多く観察された。膿栓を半分に切断した横断面では,球菌はほとんど見られずスピロヘーター様の細菌や桿菌が多く観察された。膿栓を構成する菌の同定結果から,6名全員一致して検出された属は,Prevotella属であった。全員から一致して検出される菌種はなかった。また,6名の膿栓の全てに揮発性硫化物を産生する細菌が含まれていた。この結果から,膿栓が口臭の原因物質を産生し,口臭の原因となりうることが示唆された。また,電子顕微鏡による観察から,膿栓の表層には好気性や通性嫌気性の細菌が分布し,膿栓の内部に偏性嫌気性菌が存在することが想像され,膿栓をつぶすとにおいがする理由の一端が明らかになった。
著者
森田 学 小椋 正之 恒石 美登里 渡邊 達夫 岡田 真人 宮武 光吉 梅村 長生
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.786-793, 1999-11-30
被引用文献数
3

根管治療(抜髄・感染根管処置)に関する歯科医療費と診療行為の内容を調査した。昭和55,58,60年,平成2,6年の厚生省社会医療診療行為別調査に用いられた歯科診療報酬明細書のデータのうち,病院,一般診療所分を除いた歯科診療所分のデータを対象とした。各年の対象とした件数は,それぞれ16,145,8,831,18,028,17,165,18,294件であった。歯髄炎や歯根膜炎を主傷病名とする歯科診療報酬明細書の割合は経年的に減少し,平成6年では12〜14%であった。また,根管治療にかかわる点数の合計も年々減少しており,平成6年では,1件あたり平均117点で,総点数の8.3%であった。平成6年の歯科診療報酬明細書について根管治療にかかわる点数を検討したところ,以下の知見が得られた。1)根管治療は40歳,50歳台で最も頻繁に行われていた。また,20歳台では,ほかの年齢層と比較して,3根管歯の抜髄頻度が高いことが認められた。2)根管治療点数の占める割合が最も高い年齢層は20〜29歳であり,総点数の11%であった。しかし,老人医療においては,その割合は約4.0〜5.0%と,全年齢層中,最も低かった。3)抜髄あるいは感染根管処置に始まり根管充填で終わる一連の検査,処置を包括化し,推定点数を算出した。その結果,推定点数の最頻値は,電気的根管長測定検査,麻酔抜髄(あるいは感染根管処置),0回または1回の根管貼薬処置の後に,加圧根管充填した場合の合計点数に等しかった。4)本調査は,1ヵ月の診療報酬明細書を扱い,比較的簡単な症例のみが抽出されていることから,今後数カ月にわたる追跡の必要性が示唆された。