著者
葭原 明弘 清田 義和 片岡 照二郎 花田 信弘 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 = JOURNAL OF DENTAL HEALTH (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.241-248, 2004-07-30
参考文献数
25
被引用文献数
7

日常の楽しみごととして食事をあげる高齢者は多い.本調査では,食欲とQOLの関連をほかの要因を考慮しながら評価することを目的としている.本調査の対象者は70歳の高齢者600人である.QOLを総合的にあらわす指標としてフェイススケールを用いた.生活満足状況について5つの顔の表情を示し,一番実感に近いものを選択してもらった.食欲については質問紙法により情報を得た.さらに,身体的要因,健康行動,社会的要因,口腔内症状について情報を得た.フェイススケールの結果にもとづき,食欲,口腔内症状の合計数およびほかの全身的要因との関連をロジスティック回帰分析により評価した.その際,従属変数をフェイススケールの分布にもとづき2種類のモデル(モデル1,モデル2)を作成した.いずれのモデルにおいても食欲,口腔内症状の合計数,老研式活動能力指標,睡眠時間および性別を独立変数に採用した.その結果,モデル1では,食欲(オッズ比:2.77,p<0.05) ,口腔内症状の合計数オッズ比:1.25,p<.05) ,老研式活動能力指標オッズ比:1.25,D<0.01)が統計学的に有意であった.一方,モデル2では,食欲(オッズ比:3.23,p<0.001),老研式活動能力指標(オッズ比:1.24,D<0.001) ,睡眠時間(オッズ比:1.72,n<0.0l)が統計学的に有意であった.食欲は,モデル1とモデル2において,また,口腔内症状の合計数はモデル1において有意な関連が認められた.この結果は,地域在住高齢者では,食欲とQOLが有意に関連していることを示している.さらに,口腔内症状の改善がQOLの向上には必要であると考えられた.