- 著者
-
斉藤 享治
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.5, pp.334-349, 1982-05-01 (Released:2008-12-24)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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集水域面積100km2, 500km2前後の集水域と,土石流が発生しやすい地質(深成岩,凝灰岩,集塊岩)からなる集水域では,扇状地の形成される集水域の占める割合が大きいことを明らかにした.これらの扇状地が形成されやすい集水域の地形・地質条件を解釈することによって,扇状地堆積物の供給・運搬様式を考察した. 集水域面積200km2以下の集水域では,土石流等によって河床に堆積していた砂礫が,洪水時に一気に谷口まで運搬され,堆積して扇状地を形成する。特に,100km2前後の集水域では,洪水発生頻度が高いので扇状地ができやすい.200km2以上の集水域では,河床堆積物が何回もの洪水によって谷口まで運搬され,掃流砂礫が低地に満遍なく堆積して扇状地を形成する.この場合,集水域が大きすぎても,河床勾配が緩くなり,粗粒の岩屑が運搬されにくい.その結果, 500km2前後の集水域では,扇状地が形成されやすくなったと考えられる. 200km2前後の集水域では,荷重量の相対的に小さい洪水流が発生したときに,谷口に堆積していた岩屑が,侵食・運搬されることもあるので,扇状地ができにくくなったものと思われる.