著者
山本 隆久 内田 清久 斉藤 洋一
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.49-60, 1987-06-30 (Released:2012-11-13)
参考文献数
30

ラットに回腸広範囲切除を行い,最長12カ月までの胆汁酸代謝の変化につき検討した.回腸切除により糞中胆汁酸排泄量は増加し,胆汁中胆汁酸分泌量,胆汁酸プールサィズ,胆汁酸の腸肝循環回転数,胆汁酸の吸収効率は低下した,これらの変化は術後4週よりみられ,術後12ヵ月経過しても改善されなかった.肝では回腸切除により,胆汁酸特にCAの生合成が亢進し,CA系胆汁酸:CDCA系胆汁酸の比は術後6ヵ月まで増加した.反転小腸を用いた胆汁酸の吸収実験では,回腸切除後6ヵ月経過しても残存上部小腸に胆汁酸の能動吸収は認められなかった.以上の結果より,回腸広範囲切除により招来された胆汁酸吸収障害は,長期経過後も改善され得ないと結論される.
著者
小谷 穣治 葛西 猛 斉藤 洋一 小林 国男
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.320-328, 1993-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1

過去13年間に帝京大学救命救急センターで経験した大腸損傷症例のうち,24時間以上生存した腹腔内全層性大腸損傷25例を臨床的に分析した。さらに術前状態を,stage I:ショックがない,腹腔内汚染が軽度,大腸損傷形態が単純,受傷から手術までの時間が6時間以内,の4条件を満たす状態,stage II: stage I以外の状態,に分け,各stageの施行術式間の入院日数および局所感染性合併症(縫合不全,腹腔内膿瘍,創感染)の発生数を比較した。なお原則として,stage Iの症例には一次修復術(一次縫合術または切除端々吻合)を,stage IIの症例には人工肛門造設術(分割式,ループ式人工肛門またはハルトマン氏法)を,stage IIで人工肛門造設に伴う精神的苦痛を避けたい症例には一次縫合外置術を施行することとしたが,術者の判断による術式選択を優先した。平均年齢は42.8歳,男19例,女6例であった。受傷機転は刺創16例,鈍的外傷8例,銃創1例であった。大腸損傷部位は刺創症例では横行結腸14例(87.5%),鈍的外傷症例ではS状結腸5例(62.5%)とそれぞれもっとも多く,銃創の1例はS状結腸であった。腹腔内合併損傷臓器は受傷機転を問わず小腸と腸間膜がもっとも多かった。1症例あたりの平均腹腔内合併損傷臓器数は刺創症例1.125,鈍的外傷症例1.75,銃創症例5であった。施行術式は,刺創では一次修復術,鈍的外傷では人工肛門造設術,また右側結腸で一次修復術,左側結腸で人工肛門造設術が多かった。術式別にみた術後合併症は,一次修復術,人工肛門造設術ともに創部感染がもっとも多く,それぞれ5例(42%), 7例(64%)であった。入院日数は,両stageとも一次修復術の方が短かった。局所感染性合併症は,stage Iでは差がなく,stage IIでは一次修復術の方が短かった。また,stage IIで一次修復術を行った1例が術後4日目に死亡したが,剖検では縫合不全や腹腔内膿瘍は認められなかった。これらの結果より,一次修復術の適応条件をさらに拡大するべきであると考えられた。
著者
斉藤 洋一 大和田 守 加藤 俊一 井上 繁一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.383-406, 2006

Monitoring investigations on the fauna of Odonata were made at the gardens of the Imperial Palace, Tokyo, ca. 115 ha, central Tokyo, from 2001 to 2005. A total of 33 species belonging to 8 families were recorded. Similar research were carried out at the same place from 1996 to 2000, and 27 species in 8 families were recorded (Tomokuni & Saito, 2000). The following six species are recorded from the Imperial Place for the first time. Aeschnidae: Aeschnophlebia anisoptera Selys, Polycanthagyna melanictera (Selys), Anaciaeschna martini (Selys) (Fig. 30) and Anax nigrofasdatus nigrofasciatus Oguma (Fig. 31). Libellulidae: Libellula quadrimaculata asahinai Schmidt (Fig. 35) and Sympetrum kunckeli (Selys). Three endangered species in Tokyo urban areas, Ceriagrion nipponicum Asahina (Figs. 9-10), Trigomphus melampus (Selys) (Figs. 19-21) and Aeschnophlebia longistigma Selys (Figs. 27-29) were discovered by the former study (Tomokuni & Saito, 2000), and they are still abundant in the Palace. Rhyothemis fuliginosa Selys (Fig. 41), which had also been very scarce in the urban Tokyo, was gradually increase its number from 2002-2004, and we were able to observe its outbreak in the summer of 2005.
著者
加藤 道男 吉川 恵造 島田 悦司 斉藤 洋一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.195-202, 1992-02-01
被引用文献数
2

ヒト胃癌組織を用いて免疫組織化学的に epidermal growth factor receptor (EGFR) と transforming growth factorα (TGF-α) を認めた腫瘍の病理組織学的特徴を検索した. EGFRは凍結切片に抗EGFRモノクローナル抗体を, TGF-α はパラフィン切片に抗 TGF-α 抗体を用いて染色し, 病理学的所見と比較した. その結果, EGFR 陽性例は69例中18例 (22.8%) で, 分化型癌には49例中17例 (43.7%) と多かった. また TGF-α 陽性例は86例中24例 (27.9%) で, 未分化型癌には38例中18例 (47.4%) と多かった. そして両者の検討が可能であった36例では EGFR 陽性で TGF-α も認めた症例は3例 (8.3%) ですべて進行癌であった. したがって, EGFR は胃癌細胞の分化度と関連し, 分化型胃癌増殖に EGF が影響を与える可能性が考えられた. また EGFR 陽性腫瘍に TGF-α 産生細胞を認めたことから, ヒト胃癌みの autocrine mechanism で増殖する腫瘍のあることが示唆された.