著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.295-310, 2010 (Released:2010-09-01)
被引用文献数
1 1

本稿は,「ライフログ」の定義を試み,その取扱いにあたっての責任の在り方を提言するものである。人間の活動を記録した情報である「ライフログ」は,行動ターゲティング広告など商用目的で利用される機会が増えつつある。しかし,そもそもライフログとはどのような情報を意味するのかについては,漠然としたイメージでしかとらえられていない。また,ライフログを構成する個人識別情報と非個人識別情報の区別も困難である。そこで,両者を区別せずに「ライフログ」の範囲を明確にすることによって,その適正な取扱いにあたっての法的責任の範囲を明確にすることを試みる。技術的・制度的課題,個人情報の取扱いと法的義務,2010年5月に公開された総務省ライフログ研究会による配慮原則,米国の連邦取引委員会や業界団体による行動ターゲティング広告原則など,ライフログの取扱いに関わる検討課題および現在に至るまでの検討状況を概観した上で,過去の私生活の暴露や誤情報の取扱いをめぐる裁判例をもとに,ライフログの取扱いと法的責任について検討する。
著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.629-637, 2012-12-01 (Released:2012-12-01)
参考文献数
3

スマートフォンの利用者数が急激に増加する一方で,利用者が不安を覚える問題の発生も増加している。スマートフォンを介してどのような情報が取得され利用されているのか,利用者が認識することができないまま,不透明な情報の取扱環境が存在する。不正アプリによる,スマートフォン内部に記録されているさまざまな個人情報の不正取得および外部送信が問題となる事件が発生している。そこで,本稿では,現行の個人情報保護法に照らして,スマートフォンを介して取得し利用される個人情報の取扱いにあたって,具体的にどのような対応が求められるのか整理をした上で,スマートフォンを安全・安心に利用するにあたっての指針として,セキュリティとプライバシー・個人情報保護の両面からの取り組みを紹介する。
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.217-230, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)
参考文献数
91

AIや自律ロボットをはじめとする新興技術(エマージングテクノロジー)の急速な発展と産業における利用が議論される一方で,自律型致死兵器システム(LAWS)の研究開発も進展している.国際的な議論としては,特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みにおける規制について検討がなされ,今後のガイドとなるべき原則指針が提案されている.本稿では,自律型致死兵器システムについて,LAWSに適用される国際人道法,国連軍縮研究所(UNIDIR)の報告書,CCWのLAWS非公式専門家会議から政府専門家会合(GGE)における議論の状況,提案された原則指針の内容,法的・倫理的側面をめぐる検討状況を確認する.
著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.818-827, 2005 (Released:2005-03-01)

図書館における個人情報の取り扱いをめぐる問題については,利用者の「プライバシー保護」の問題や「個人情報の漏えい」などへの懸念が問題視されることが多い。しかし,2005年4月1日に全面施行される個人情報保護関連五法は,プライバシーの権利の保障を目的として制定された法律ではなく,また,個人情報の漏えいや不正利用などの行為を直接処罰する法律でもない。 本稿は,個人情報保護法の制定が図書館および図書館サービスに与える影響を検討するにあたり,「プライバシー保護」と「個人情報保護」をめぐる問題の峻別の必要性を提示した上で,各図書館への個人情報保護関係法令の適用関係の明確化,法令の義務規定の適用除外の内容,および個人情報の取扱義務規定の内容について考察する。
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.199-209, 2013-01-01 (Released:2013-01-01)
参考文献数
48

法令遵守への対応にあたって,その基準が一般にわかりづらいと考えられがちな個人情報・プライバシー保護への対応について,両者の違いを明確にした上で,マネジメントシステムの活用のあり方をプライバシー・バイ・デザイン(PbD)やプライバシー影響評価(PIA)を通じて考察する.いわゆるビッグデータの取扱いへの対応については,自主規制による取り組みとしてライフログ活用サービスにおける配慮原則及びスマートフォン・プライバシー・イニシアティブを取り上げ,今後の我が国の個人情報保護制度のあり方を提示する.
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.560-565, 2016

<p>個人情報保護法及び行政機関等個人情報保護法が10年ぶりに改正された。法改正の影響は,すべての図書館に及ぶわけではないため,各図書館は改正による影響を受けるか否か確認が必要である。改正に伴い図書館が対応な必要な事項がある一方で,要配慮個人情報の取得制限が新たに定められたものの,当該情報に関係する個人情報関係資料を除籍対象資料に含める必要がないことはもとより,除籍基準の改定なども不要である。改正法の解釈により図書館における新たな過剰反応が生じないよう,改正個人情報保護法対応にあたっての要配慮事項について解説する。</p>
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.560-565, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)

個人情報保護法及び行政機関等個人情報保護法が10年ぶりに改正された。法改正の影響は,すべての図書館に及ぶわけではないため,各図書館は改正による影響を受けるか否か確認が必要である。改正に伴い図書館が対応な必要な事項がある一方で,要配慮個人情報の取得制限が新たに定められたものの,当該情報に関係する個人情報関係資料を除籍対象資料に含める必要がないことはもとより,除籍基準の改定なども不要である。改正法の解釈により図書館における新たな過剰反応が生じないよう,改正個人情報保護法対応にあたっての要配慮事項について解説する。
著者
新保 史生
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.376-382, 2008-08-01
被引用文献数
1

ウェブ・アーカイビングを実施するためには,法的に検討が必要な課題をクリアすることが前提条件とがる。ところが,その実施にあたっては,著作権法上の課題,違法な情報や他人の権利を侵害する情報が掲載されたサイトを収集した場合の対応,個人時報保護法に基づく個人時報の適正な取扱いと保護,アーカイブに記録された情報の完全性および可用性の確保など,法的に検討しなければならない課題が山積している。インターネット上の情報は非常に揮発註が高い情報であるため,それらの情報の保存は極めて重要な課題となっているが,包括収集によるウェブ・アーカイビングの実現にあたって検討が必要な法制度上の課題を整理し,法的課題解決の方途を検討する。
著者
新保 史生
出版者
情報法制学会
雑誌
情報法制研究 (ISSN:24330264)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.64-77, 2017 (Released:2019-10-02)

This paper focuses on the overview of the importance of legal issues which will underpin a future Robot Symbiosis Society.I would like to refer to the necessity of proceeding with academic research regarding Robot Law including AI and the Internet of Things, (IoT) and then tried to conduct research in the various, connected, interdisciplinary fields such as constitutional law, administrative law, civil law and criminal law.The current legal system is unlikely to be able to solve the conundrum of every potentially serious problems in a very different and new,autonomoous robot use environment.I really believe that it is possible for us all to provide the legal framework necessary to underpin this new social system.
著者
新保 史生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.224-230, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

個人情報保護をめぐる問題は,個人情報の取扱状況について,(1)コンピュータ処理の進展,(2)インターネットの発展,(3)SNSやスマートフォンの普及,(4)AIの進化,(5)IoTや5Gの普及の各段階に応じて大きく変容を遂げている。本稿では,このような個人情報の取扱い状況の変容を踏まえて,個人情報保護をめぐる環境変化と法制度,個人情報保護法の概要,個人情報の定義,個人情報保護とプライバシーの権利保障の違い,個人情報保護制度の過去及び今後の見直しの状況,日本とEUとの間の新たなデータ保護の枠組みについて紹介し,それに伴い法制度が変遷を遂げてきた経緯を概観する。
著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.295-310, 2010
被引用文献数
5 1

本稿は,「ライフログ」の定義を試み,その取扱いにあたっての責任の在り方を提言するものである。人間の活動を記録した情報である「ライフログ」は,行動ターゲティング広告など商用目的で利用される機会が増えつつある。しかし,そもそもライフログとはどのような情報を意味するのかについては,漠然としたイメージでしかとらえられていない。また,ライフログを構成する個人識別情報と非個人識別情報の区別も困難である。そこで,両者を区別せずに「ライフログ」の範囲を明確にすることによって,その適正な取扱いにあたっての法的責任の範囲を明確にすることを試みる。技術的・制度的課題,個人情報の取扱いと法的義務,2010年5月に公開された総務省ライフログ研究会による配慮原則,米国の連邦取引委員会や業界団体による行動ターゲティング広告原則など,ライフログの取扱いに関わる検討課題および現在に至るまでの検討状況を概観した上で,過去の私生活の暴露や誤情報の取扱いをめぐる裁判例をもとに,ライフログの取扱いと法的責任について検討する。