著者
関 由喜 大西 弘夏 小野瀬 輝 菅谷 憲夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.486-492, 2016-07-20 (Released:2018-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

インフルエンザワクチンはインフルエンザ予防の基本であるがワクチン効果(vaccine effectiveness:以下VE)は一定せずに毎年異なっている.そこで我々は2013/14 シーズンと2014/15 シーズンに成人のインフルインフルエンザワクチンはインフルエンザ予防の基本であるがワクチン効果(vaccine effectiveness:以下VE)は一定せずに毎年異なっている.そこで我々は2013/14シーズンと2014/15シーズンに成人のインフルエンザワクチンの有効性をワクチン接種歴の問診とインフルエンザ迅速診断検査結果から診断陰性例コントロール試験を用いて計算した. 2013/14シーズンのインフルエンザVEはインフルエンザ全体(A型とB型)では54.9%(95%信頼区間(Confidence Interval:以下CI):24.2~73.2)で,A型に対しては56.6%(95%CI:19.1~76.7),B型に対しては56.8%(95%CI:5.8~80.2)と統計学的に有意なVEを認めたが,2014/15シーズンはインフルエンザ全体に対しても,A型に対してもVEが見られなかった.またB型は患者が少なく検討ができなかった. 2014/15シーズンにVEが低下した理由はシーズン中のインフルエンザ陽性患者の86.2%がA/H3N2であり,A/H3N2はワクチン製造過程に抗原性が変化しやすいこと,さらに自然界で大きな抗原連続変異を起こしたためと考えられた. 本法は日常診療の中で行えるがランダム化比較試験に匹敵する1)精度のある方法でありシーズン中にVE予測ができインフルエンザ予防対策の根幹になると考える.
著者
菅谷 憲夫
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.111-114, 2005 (Released:2005-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

最近の数年間で,インフルエンザは,外来やベッドサイドで迅速診断を実施し,抗ウイルス剤で治療する疾患となった.日本では,現在,ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル(商品名タミフル),ザナミビル(商品名リレンザ),およびアマンタジン(商品名シンメトレル)が,インフルエンザ治療に使用されている.世界的に見ると,これだけ広くノイラミニダーゼ阻害薬による治療が普及している国はないが,それだけに,今後は,ノイラミニダーゼ阻害薬の副作用と耐性発現の注意深い監視が肝要である.
著者
田村 大輔 三浦 琢磨 上原 里程 菅谷 憲夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.427-432, 2005-07-20 (Released:2011-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

日本では, 不活化インフルエンザワクチンの接種量は, 1歳以下の乳児では0.1mL/回を2回接種することと規定されている.乳児の接種量は欧米の0.25mL/回と比較して少量であり, それが乳児のワクチン効果が低い原因ではないかと推測してこの研究を行った.本研究では, 8~11カ月の1歳未満の乳児26例 (94±0.9カ月) に0.1mL/回, 12~17カ月の1歳児の22例 (13.4±1.3カ月) に0.2mL/回をそれぞれ2回接種し, 総計48症例で抗体価上昇について比較検討をした.その結果, 赤血球凝集抑制 (Hemagglutination Inhibition: HI) 試験で, 発病予防に有効と考えられる40倍以上の抗体価を獲得した割合は, 乳児では1歳児と比べて有意に低値であった (Aソ連型;23%vs77% (p<0.001), A香港型;39%vs73% (p=0.03), B型;0%vs32% (p=0.002)).4倍 (2管) 以上の抗体価上昇の割合では, A香港型では有意差を認めなかったが, Aソ連型とB型においては乳児では有意に低値であった (Aソ連型;74%vs91% (p=0.04), A香港型;54%vs78% (p=0.09), B型;0%vs39% (p<0.001)).獲得された抗体価の平均値はA香港型では有意差を認めなかったが, Aソ連型とB型においては乳児では有意に低値であった (Aソ連型;19倍vs56倍 (p<0.001), A香港型;21倍vs43倍 (p=0.09), B型;8倍vs14倍 (p<0.001)).本研究での乳児と1歳児での抗体反応の差は, 年齢差ではなくワクチン接種量の差 (0.1mL vs 0.2mL) を反映したものと考えられる.乳児に対する現行の接種量ではワクチンの有効性は期待できず, 乳児も0.2mL/回に増量することが必要と考えられた.
著者
菅谷 憲夫
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2393-2399, 2007-11-10
参考文献数
8
被引用文献数
1

日本の新型インフルエンザ対策では,抗ウイルス薬の備蓄不足やワクチン供給の遅れなど重要な課題が未解決のまま残されている.十分量のノイラミニダーゼ阻害薬を確保し,迅速なワクチン生産体制を整備すべきである.外出禁止や食糧備蓄等の感染拡大防止策はコストが高く,一方,有効性は証明されていない.<br>