- 著者
-
吉村 健清
早川 式彦
溝上 哲也
徳井 教孝
八谷 寛
星山 佳治
豊嶋 英明
- 出版者
- 産業医科大学
- 雑誌
- 特定領域研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
地域住民を対象とした大規模コホート調査(JACC Study)の調査票情報および保存血清および1997年末までの予後追跡調査データを用いて、胃がんのリスク要因を解析した。死亡を結果指標としたコホート解析では、胃がんリスクを高める要因として、短い教育歴、胃がん家族歴あり(男:RR,1.6;女:RR,2.5)、男の喫煙(RR,1.3;喫煙開始10-19歳:RR,1.9)、女性では生殖歴・出産歴がないこと、胃がん検診未受診(男:RR,2.0)があげられた。家族歴では、特に女で母親が胃がんの塙合に高いリスクを示した。また胃がんには家族集積性があることも示唆された。一方で、これまで胃がん関連要因として報告されてきた緑黄色野菜・高塩分含有食品・緑茶の摂取との関連は明らかでなかった。追跡期間別に分けた分析方法を用いると、干物類は、胃がんがあると摂取が減少する可能性が示唆された。また、コホート内症例対照研究の手法により、調査開始時に採取された血清を用いて、IGF、SOD、sFAS、TGF-b1の4項目を測定、胃がん罹患および死亡との関連を検討した。TGF-b1は、女性において、4分位で最も低い群にくらべ、値が高い群ほど胃がん罹患・死亡のリスクが上昇する量-反応関係を認めた。その他の3項目は、罹患と死亡で一致した傾向は認めなかった。同様の手法により、胃がんとの関連が強いとされる血清項目を測定した結果、Helicobactor pylori陽性のオッズ比は1.2、pepsinogen低値(胃粘膜萎縮あり)のオッズ比は1.9であった。H. pyloriのリスクが比較的低かったことの理由として、本解析集団が高齢であることが考えられる。現在、H. pyloriのCag-A抗体について測定を進めている。