著者
田辺 直仁 豊嶋 英明 林 千治 和泉 徹 松本 一年 関 奈緒 渡部 裕 小玉 誠 相澤 義房
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.111-117, 2006-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

突然死を発症後24時間以内の急性死と定義した場合の発生率は, 年間人口10万対114 (愛知県, 全年齢) , 15歳以上の145 (新潟県, 15歳以上) との報告がある.また, これらを含む4調査では, 男性に多いこと, 年齢とともに発生頻度が高くなることなどの共通した特徴が認められる.40~59歳の発生率 (年間人口10万対) は男性が52~89, 女性17~29であり, 主要死因死亡率に比べても高く, この働き盛りの年代で年間約1.2~2万人が突然死していると推計される.新潟市・長岡市の調査では突然死の約20%に虚血性心疾患, 13%に他の心疾患の関与が疑われ, 死因が確定できない例も37%認められた.意識消失での発症が約40%あり, 自宅や職場など普段の生活の場での発症や, 安静時や睡眠時の発症が多かった.排尿・排便時の発症が約9%認められ, 排尿・排便が発症の誘因となった可能性がある.危険因子としては高血圧や高血圧性臓器障害, 喫煙が重要であり, 過去1週間のストレスや睡眠時間の減少も突然死と関連していた.平成16年の新潟県中越地震では被災後1週間に突然死が有意に増加しており, 強いストレスが突然死の誘因となることの有力な証拠と考えられる.
著者
豊嶋 英明 林 千治 宮西 邦夫 若井 静子 榎 佐和子 熊谷 秀子 上村 桂
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.659-666, 1989
被引用文献数
1 5

Serum retinol and tocopherol concentrations in 419 males and 478 females, aged 10 to 49 years, were determined by an HPLC method. Then their relationships to serum lipid concentrations and smoking and drinking habits were examined. Retinol levels were higher in males than in females but tocopherol showed little difference by sex. The sex differences in age-related serum levels of retinol and triglyceride (TG) were similar to those of tocopherol and total cholesterol (TC), respectively.<BR>Retinol had a significant correlation with TC and TG, with coefficients of 0.20-0.29 (p<0.001). These were smaller than those of tocopherol (R=0.32-0.52, p<0.001) both in males and females, suggesting that it had a higher susceptibility to factors other than serum lipids than tocopherol did.<BR>Both the retinol and tocopherol levels were significantly higher in the groups with smoking and drinking habits than in the groups without them among the males aged 30 years and over. Furthermore, the retinol level was positively dependent on the daily consumption of both cigarettes and alcohol, whereas tocopherol was dependent on the consumption of alcohol. Multiple regression analysis showed that smoking and drinking habits had statistically significant effects on the serum retinol level independent of other factors and that their effects were greater than those of TC and TG. Tocopherol was affected most by TC and TG and then by drinking habit. Less significant but similar results were obtained for the females of the same age group.<BR>Since smoking and drinking habits, known to be carcinogenic, was related to increases in the serum levels of retinol and tocopherol, it would appear to be necessary to study the relationship of these serum levels with tissue levels of vitamins A and E to examine their protective effects against carcino- and atherogenesis.
著者
岡田 玲子 太田 優子 宮西 邦夫 豊嶋 英明
出版者
県立新潟女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、青年期女子を対象に保健行動の変容をめざして、指導型・学習参加型を含む健康教育システムを設定し,その有用性を1年間の介入効果によって検証したものである。本システムは、健康教育セミナー(受講後に感想・自己評価記録の提出)(6回)、健康・生活習慣・食事の診断(3回)、診断成績の個人別記録;「Health Paassport」の懇切な説明による還付(4回)等によって構成された。その成績は以下のように要約される。1)BMI、肥満度、体脂肪率への影響は殆どなく、歩数、消費エネルギー、運動量は僅かながら低下した。2)TC、LDL-C、TCが介入前に比べて高かったものの、同時にHDL-Cも有意に上昇し、その程度は寧ろ前3項目の変化に比べて大きいことが認められ、特にHDL-Cの改善には効果的であった。また、Lp(a)はHDL-Cの増加に伴って高くなる可能性が示唆された。なお、HDL-C値の改善にはカロリーカウンターによる運動量の影響は認められなかった。3)自覚症状訴え数が有意に減少した。このことは本セミナー出席率の高い群において特に顕著に観察された。自覚症状改善度上位者からは、健康教育による食行動の改善とその維持を窺わせる応答が得られた。4)食事の評価においては、(1)緑黄色野菜の摂取頻度・充足率の有意な増加、(2)本セミナー出席率の高い群ならびにHDL-C改善度の高い群において、食事診断得点の改善度が有意に大きかった。(3)介入後に穀類エネルギー比の有意な増加、動物牲脂質比、Na/K比、食塩摂取量(g/l,000kcal)、飽和、一価・多価不飽和脂肪酸摂取量の有意な減少がみられたが、これらの変化量との血清脂質値の変化量との相関性を見いだせなかった。(4)LDL-C低下の大きかった群ほど近代型食事(豊川の食物消費の二次元空間図による)の傾向が弱まる方向への変化が有意に認められた。5)エゴグラムにおいては、保健行動の変容に自我状態の関与を示唆する所見が得られた。以上より、本健康教育システムは健康意識の啓発の動機づけやその維持に効果的であったと考えられる。今回は多様な要因の中で、より望ましい方法を模索した研究デザインであったが、健康教育セミナーへの継続的参加を促すためには、対象者の生活時間の変化を配慮した開催日時の調整、保健行動の変容にマイナスの自我状態を有する対象者への対応等についてさらに詳細な検討を重ねる必要がある。本研究により得られた知見と反省を活かして、より実践可能な健康教育システムの開発に今後とも努力したい。
著者
吉村 健清 早川 式彦 溝上 哲也 徳井 教孝 八谷 寛 星山 佳治 豊嶋 英明
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地域住民を対象とした大規模コホート調査(JACC Study)の調査票情報および保存血清および1997年末までの予後追跡調査データを用いて、胃がんのリスク要因を解析した。死亡を結果指標としたコホート解析では、胃がんリスクを高める要因として、短い教育歴、胃がん家族歴あり(男:RR,1.6;女:RR,2.5)、男の喫煙(RR,1.3;喫煙開始10-19歳:RR,1.9)、女性では生殖歴・出産歴がないこと、胃がん検診未受診(男:RR,2.0)があげられた。家族歴では、特に女で母親が胃がんの塙合に高いリスクを示した。また胃がんには家族集積性があることも示唆された。一方で、これまで胃がん関連要因として報告されてきた緑黄色野菜・高塩分含有食品・緑茶の摂取との関連は明らかでなかった。追跡期間別に分けた分析方法を用いると、干物類は、胃がんがあると摂取が減少する可能性が示唆された。また、コホート内症例対照研究の手法により、調査開始時に採取された血清を用いて、IGF、SOD、sFAS、TGF-b1の4項目を測定、胃がん罹患および死亡との関連を検討した。TGF-b1は、女性において、4分位で最も低い群にくらべ、値が高い群ほど胃がん罹患・死亡のリスクが上昇する量-反応関係を認めた。その他の3項目は、罹患と死亡で一致した傾向は認めなかった。同様の手法により、胃がんとの関連が強いとされる血清項目を測定した結果、Helicobactor pylori陽性のオッズ比は1.2、pepsinogen低値(胃粘膜萎縮あり)のオッズ比は1.9であった。H. pyloriのリスクが比較的低かったことの理由として、本解析集団が高齢であることが考えられる。現在、H. pyloriのCag-A抗体について測定を進めている。