- 著者
-
星 敦士
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.1, pp.120-135, 2000-06-30 (Released:2009-10-19)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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本稿の目的は, 階層帰属意識の判断基準と比較基準を明らかにすることである.まず, 階層帰属意識の判断に影響する要因として, 従来の研究が用いてきた自身の社会経済的地位とともに, 地位認知の判断基準となる他者の社会的地位, 他者と自身との間の地位関係を含めて, 帰属意識の判断パターンに関する分析枠組みを構成した.1985年のGSSデータを用いて計量的に検証した結果, 階層帰属意識の判断について従来用いられてきた個人の地位から帰属意識を説明するという分析枠組みの妥当性を確認するとともに, 準拠集団論的なアプローチが指摘してきた他者の地位の影響についても部分的にその妥当性を実証した.個人は自己の地位評定を行う際に, 自身の社会的地位 (職業威信, 世帯収入) と, ネットワークの社会的地位 (学歴) を社会全体という比較基準において判断基準とする.また, 規定要因としての効果の大きさを比較すると, ネットワークの社会的地位の効果は, 本人の職業威信, 世帯収入よりも大きく, 個人の階層帰属意識の判断において重要な判断基準であるという結果をえた.一方, 自身とネットワークの地位関係に関する要因は階層帰属意識の判断パターンとしてほとんど考慮されていない.また, どのようなネットワークをもつかという準拠対象の構造的要因 (社会的地位の分散, 親密度) は, 階層帰属意識の判断に対して影響を与えていないことが明らかになった.