著者
田渕 六郎
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-117, 1999-03-25

近年の歴史学、人類学、社会学の各分野における家族研究においては、「家族戦略」という概念を採用する研究が多く見られる。それは、従来の家族ないし世帯研究が、家族の受動的・非合理的側面を過度に強調していたことの反省に立ち、家族が環境に対して能動的・合理的に対応する側面を考察しようとする理論的意図を持つ。そのような概念を用いた研究は、戦略という概念を慎重に考慮して使用するのであれば、家族の諸行動の説明において様々な興味深い視点を提示すると同時に、社会学の他分野の理論的発展にも資するであろうゆえ、有益であると思われる。今後の家族社会学においては、家族の「適応」の側面を重視してきた家族ストレス諭の知見などを踏まえつつ、家族戦略研究を理論的に体系化していくことか、一つの重要な課題になるだろう。
著者
田渕 六郎
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.950-963, 2006-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
37
被引用文献数
5 4
著者
田渕 六郎
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.9_16-9_20, 2018-09-01 (Released:2019-01-18)
参考文献数
11
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 星 敦士 田渕 六郎 吉田 千鶴 岩間 暁子 菅 桂太 中川 雅貴 曺 成虎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):本研究では第一に男性の未婚化・晩婚化は非正規雇用の増大により引き起こされ、女性の未婚化・晩婚化は高学歴化に伴う賃金稼得力の上昇と関係がある。第二に結婚や家族に対して非伝統的な価値意識を持つ人ほど出生力が低く、反対に伝統的な意識を持つ人ほど出生力が高い。第三に男性と比べて女姓は結婚・出産を経験すると家事や育児を極めて多く遂行するようになる。第四に高齢の親に対しては男性よりも女性の方が心理的、経済的支援をより多く行っており、特に配偶者の親よりも自分の親に対して顕著である。また、孫がいない夫婦より孫のいる夫婦の方が祖父母から様々な支援をより多く受けていることが明らかとなった。
著者
田渕 六郎
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.69-108, 1998-03-25

ェスニシティはいかにして家族構造ないしは家族行動の説明要因として用いうるのだろうか。これが本稿が考察する問題である。家族・親族関連行動においてエスニシティによる差異が存在することは既に多くの研究の中で論じられてきた。本報告では、主として家族構造(中でも特に拡大世帯形成行動)とエスニシティとの関係に焦点をあてて、まずそれに関する先行研究を概観する。次いでそれら諸研究のなかでエスニシティがいかにして「説明変数」として用いられているかを確認し、それらの問題点を指摘するなかで、説明要因としてのエスニシティの理論的位置づけを論じる。本稿は家族に関連する行動のなかでも限られた部分のみを直接的な検討対象にするに過ぎないとはいえ、今後の様々な関連分野の実証研究に対しても理論上の示唆を投げかけるものとなろう。本稿の主要な主張は以下のように要約できる。エスニシティは、従来の当該分野の研究においては、特にミクロデータの分析の中で、収入階級、ジェンダーその他の要因を統制した効果である世帯拡大の性向として分析的に抽出され、当該エスニシティ集団に固有の「文化的」性向として理解されてきた。だが、そのような扱いは、エスニシティという説明変数の意味を素朴に「前提」し、それを一種の「残余カテゴリー」として扱う限りで、エスニシティという変数を用いた説明の理論化を放棄するものである。そのような説明に対抗して導入された「経済的説明」は、世帯拡大を貧困へ適応するための村処行動として位置づけ、エスニシティ集団間の差異を社会経済的構造における差異として理解する視座を開いた点で一定の意義を持ったが、理論的な問題を含んでいた。今後の当該分野における研究課題は、エスニック集団が(拡大世帯を形成する)「文化」を持つという前提に立たず、当事者の言説や日常経験に関するエスノグラフィックな記述的研究の伝統に立ち戻ることによって、エスニック集団間における諸属性の差異という現象がどのような具体的過程を通じて生じてくるのかということを、様々なエスニック集団について明らかにしていくことを通じて、説明変数としてのエスニシティ概念を洗練していくことであろうと思われる。
著者
和崎 春日 上田 冨士子 坂井 信三 田中 重好 松田 素二 阿久津 昌三 三島 禎子 鈴木 裕之 若林 チヒロ 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 望月 克哉
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

「グローバル化時代における中下層アフリカ人の地球的移動と協力ネットワーク」現代社会において、グローバライゼーションを生きるのは、北側社会や特別なアフリカ人富裕層だけではなく、「普通の」アフリカ人たちが、親族ネットワーク等を駆使して、地球を広く縦横に生き抜いている姿が、本共同研究から析出された。その事実を基礎にした外交上の政策立案が必用になってくることを、本共同研究は明らかにした。
著者
田中 重好 田渕 六郎 木村 玲欧 伍 国春
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.183-195, 2006-08-31

Tsunami evacuation plannings have been built on "alert-evacuation" model, which assumes "tsunami alert -transmission -evacuation behavior" connection. Analyzing the data on the behavior of residents (n=1,710) in coastal area of Aichi prefecture after the tsunami warning on September 5, 2004, the results indicated that only a few residents evacuated despite their strong concerns on tsunami. This behavioral pattern results from the "empirical knowledge" which was gained by their past experience of not evacuating after a tsunami alert. In order to transform this knowledge, we need to build a new evacuation model based on the understandings of ambiguity which people face in disasters.
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 永井 暁子 西野 理子 施 利平 金 貞任 加藤 彰彦 西村 純子 青柳 涼子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本、中国、韓国の研究者がそれぞれ自国での家族の総合調査のミクロデータを提供し合い、共同利用する体制を作って比較分析を積み重ねるという新たな試みとなる国際共同研究に取り組み、最終的にChanging Families in Northeast Asia : China, Korea, and Japan. Sophia University Pressという、共同研究者12名の論文を含む出版物の形で成果をまとめた。多彩な分析結果を大きくくくると、(1)人口の少子高齢化と経済社会のグロ-バル化および個人化という同一方向での変化のインパクトのもとで、3カ国の家族が、遅速の差はあれ、共通方向での変化を遂げつつあること、(2)しかし同時に、各国の社会文化的伝統の影響の強弱によって、3カ国の家族の世代間関係と夫婦関係のあり方や変化の仕方に違いが生じていることも併せて明らかにされた。
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 西野 理子 永井 暁子 稲葉 昭英
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、日本家族社会学会が5年ごとに実施し、ミクロデータを公開している全国家族調査(NFRJ)を基礎として、中国、韓国の有力な家族研究者たちとの協力関係のもとに、家族の国際比較研究を発展展開させようとする試みである。韓国については、韓国女性開発院が実施した全国規模の家族調査(KNSFS03)のミクロデータを活用し、適切なデータのない中国については、日本調査(NFRJ)との比較のための大規模調査を新規に実施することによって、東北アジアに隣接する3カ国の家族を、クロデータのレベルで比較分析する道を開いた。これは、家族研究において画期的なことと言って良い。そして、3カ国の分析チームが、個々人の研究成果の英文ペーパーを持ち寄って、2007年12月に国際研究集会を開き、さらにこれを彫琢して英文論文集の形で最終報告書をまとめた。内容としては、世代間関係、夫婦の役割関係や結婚満足度、家族生活とストレス、家族意識や家族形成パターン、子どもへの教育投資と階層化など、多岐にわたる家族の諸側面における3カ国での家族の異質性と共通性が浮き彫りにされた。しかし、国際間のデータ相互利用に関わる諸問題をクリアするのに時間を取られ、分析研究段階での時間不足となった面は否めず、個々の分析は、2カ国比較にとどまったものや、未だ初歩的な分析段階にとどまったものも散見される。幸い、基盤研究(C)での研究費補助が継続して得られることになったので、比較分析の幅と深さを一層推し進めた成果に結びつけていきたい。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 岩間 暁子 田渕 六郎 星 敦士 菅 桂太 中川 雅貴
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、国連欧州経済委員会により組織された「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加し、各国共通のパネル調査(GGS)を実施し、各国共通枠組みに従って社会経済・家族政策等に関する時系列データを収集することによって、日本の少子化の背景要因を比較分析し、少子化是正のためには、仕事と子育ての両立支援、長時間労働慣行の是正、若者の非正規労働化の是正、子育ての経済支援が有効であるとの結論をえた。
著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.117-122, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
44
被引用文献数
2

本稿は、近年の家族研究において注目されている構築主義的研究の動向を紹介することを目的とする。ここで構築主義的研究とは、以下で述べる意味で「構築主義的」な理論枠組みを採用していると考えられる研究を指す。関連する研究動向の紹介としては、拙稿 (田渕, 1996, 1998) のほかに、構築主義的家族研究を代表する研究であるGubrium and Holstein (1990) の訳書「あとがき」に訳者等による紹介があり、宮坂 (1999) や土屋 (1999) も関連する実証研究の動向を整理している。本稿は研究動向の紹介を網羅的に行う紙幅を欠くため、紹介はこれら先行研究に挙げられている文献と重複しないものを優先していることをお断りしておきたい。
著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.111-120, 2018-04-30 (Released:2019-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本稿は主として全国家族調査(NFRJ)データの分析にもとづき,世代間の居住関係の変化に焦点を当てて2000年代における現代日本家族の動態を明らかにした.有配偶子の親との同居は,夫親との同居率がやや低下したものの大きな変化は生じておらず,親との同居に関連する要因には,持続的なパターンと変化の両方がみられた.未婚子の親との同居については,親同居率が顕著に上昇しており,同居の関連要因について,未婚子の低い経済的地位と同居との関連が継続的に観察された.2000年代の世代間居住関係は,未婚子の親との同居が拡大するなかで,親と有配偶子との間の「直系家族制」的な同居が減少し,その構造も変化の兆しをみせている.こうした今日の世代間居住関係の変化を的確に解釈するためには,従来のような有配偶子とその親との関係に限定されないような研究枠組みからの接近が求められる.
著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.111-120, 2018
被引用文献数
1

<p>本稿は主として全国家族調査(NFRJ)データの分析にもとづき,世代間の居住関係の変化に焦点を当てて2000年代における現代日本家族の動態を明らかにした.有配偶子の親との同居は,夫親との同居率がやや低下したものの大きな変化は生じておらず,親との同居に関連する要因には,持続的なパターンと変化の両方がみられた.未婚子の親との同居については,親同居率が顕著に上昇しており,同居の関連要因について,未婚子の低い経済的地位と同居との関連が継続的に観察された.2000年代の世代間居住関係は,未婚子の親との同居が拡大するなかで,親と有配偶子との間の「直系家族制」的な同居が減少し,その構造も変化の兆しをみせている.こうした今日の世代間居住関係の変化を的確に解釈するためには,従来のような有配偶子とその親との関係に限定されないような研究枠組みからの接近が求められる.</p>