著者
岩間 暁子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.177-189, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
47
被引用文献数
2

本稿の課題は(1)この20余年の階層研究における家族をめぐる研究の整理,(2)家族社会学で階級や階層に払われてきた関心のありようの検討,(3)両分野における1980年代半ば以降の研究動向のまとめと今後の課題の提示,という三つである。(1)に関しては,階層研究では家族は所有する社会経済的資源をもとに再生産機能を遂行する単位であるとみなされてきたこと,女性や家族も研究対象となったが家族内部の関係性への関心は低かったことが明らかになった。(2)に関しては,階級・階層論的アプローチの必要性は90年代後半まで指摘されてきたものの,実証研究は少なかった。また,90年代には家族の「個人化」「多様化」を「個人の選択」ととらえた研究への関心が高まったが,階層論的観点からの検討はおこなわれなかった。(3)については家族の社会階層や女性自身の階層が家族に及ぼす影響の実証的検討,階級や階層を考慮した個人化の再検討の必要性を指摘した。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 星 敦士 田渕 六郎 吉田 千鶴 岩間 暁子 菅 桂太 中川 雅貴 曺 成虎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):本研究では第一に男性の未婚化・晩婚化は非正規雇用の増大により引き起こされ、女性の未婚化・晩婚化は高学歴化に伴う賃金稼得力の上昇と関係がある。第二に結婚や家族に対して非伝統的な価値意識を持つ人ほど出生力が低く、反対に伝統的な意識を持つ人ほど出生力が高い。第三に男性と比べて女姓は結婚・出産を経験すると家事や育児を極めて多く遂行するようになる。第四に高齢の親に対しては男性よりも女性の方が心理的、経済的支援をより多く行っており、特に配偶者の親よりも自分の親に対して顕著である。また、孫がいない夫婦より孫のいる夫婦の方が祖父母から様々な支援をより多く受けていることが明らかとなった。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 岩間 暁子 田渕 六郎 星 敦士 菅 桂太 中川 雅貴
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、国連欧州経済委員会により組織された「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加し、各国共通のパネル調査(GGS)を実施し、各国共通枠組みに従って社会経済・家族政策等に関する時系列データを収集することによって、日本の少子化の背景要因を比較分析し、少子化是正のためには、仕事と子育ての両立支援、長時間労働慣行の是正、若者の非正規労働化の是正、子育ての経済支援が有効であるとの結論をえた。
著者
与謝野 有紀 林 直保子 都築 一治 三隅 一百 岩間 暁子 佐藤 嘉倫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済資本、人的資本、文化資本に続く第4の資本としての社会関係資本の形成プロセスと機能について、社会的諸資源、近隣ネットワークや社会参加といったライフスタイルとの関連で理論的、実証的に明らかにしようとするものである。手法としては、質問紙調査、実験、コンピュータ・シミュレーション、フィールドワークをもちいた。また、2004年1月に面接調査法による調査を行い、ランダムにサンプル1000ケースに対して707ケースの回収をみた。日本での社会関係資本に関する本格的な面接調査は本調査が最初であり、日本の社会関係資本の状況を知る上での基礎データを提供するとともに、他の手法と補完しながら、以下の知見を最終的に得た。(1)社会関係資本の主要素として一般的信頼感に焦点を絞って解析した結果、信頼の生成メカニズムに関する現行の主要理論(「信頼の解き放ち理論」)のプロセスは、日本では一切確認されない(2)一般的信頼感の生成のためには、近隣ネットワーク、自主的な参加を前提とするクラブへの参加など、中間集団に対するコミットメント関係の形成が重要であり、これらの中間集団において醸成された個別的な信頼感は、他者一般に対する信頼感を形成する重要な基礎となる。また、この知見は共分散構造分析によるデータ解析とコンピュータ・シミュレーションによって同時に確認されており、頑健性が高い。(3)社会関係資本の形成のための投資と回収のプロセスを「社会関係基盤」概念を提出することで定式化し、さらに近畿調査データを用いて、この点を実証し、社会関係資本のセーフティーネットとしての機能と階層固定化機能の両者を確認した。(4)社会関係基盤については、フィールドワークからも投資、回収概念の高い適用可能性が確認された。これらの研究成果については、論文、著書のほか、日独先端科学技術会議(学術振興会・フンボルト財団共催)や本研究を中心に企画された第39回数理社会学会シンポジウムで報告されている。
著者
白倉 栄美 中井 美樹 与謝野 有紀 岩本 健良 米澤 彰純 岩間 暁子 持田 良和
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本年度は、中流階層を中心とした文化とライフスタイルの実態を解明するため、昨年度実施した川崎市における「ライフスタイルと文化に関する意識調査」(郵送質問紙調査)を中心に研究活動を推進した。研究経緯は、データ収集の最終調整を行い、データコーディング作業、データ入力を経てデータセットを作成、さらにデータクリーニング作業、コンピュータでのデータの統計解析、研究報告および検討会議を経て研究成果報告書を作成した。本研究の特徴および成果は、わが国で肥大化したといわれる中流階層〜上層の文化状況とライフスタイルとの関連を明らかにしたこと、また、中流階層の文化消費やライフスタイルの差異を個人的要因に求めるだけでなく、マクロな社会的要因である「場」の効果を測定したことにある。ライフスタイルと文化的諸実践に及ぼす社会階層の効果、家庭文化のの効果、学校効果、企業などの勤務先集団の効果等について検討した結果、主な知見として以下の点が明らかになった。1.諸文化活動を分析すると、学歴や職業などの社会的地位変数によって正統文化嗜好と大衆文化嗜好に差異がみられる。同じ社会階層であっても、出身家庭の文化資本および教育は正統文化活動を促進するよう作用する。2.正統文化と大衆文化の両方に関与する文化的オムニボア(cultural omnivore)が若い年齢層ほど増加し、社会全体としてみると文化的寛容性が高まる方向にある。3.男性と女性で文化消費に差があり、男性は大衆文化嗜好が強く、女性は正統文化嗜好が強い。4.女性の大衆文化化は、配偶者の文化消費傾向からの影響で始まる割合が多い。5.社会関係において文化的境界を用いる人は高学歴層に多く、文化資本と強い関連を示す。6.学校効果と企業効果が顕在化しやすい文化側面が存在する。
著者
岩間 暁子
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.100-122, 1994-04-15 (Released:2009-11-16)
参考文献数
18

本稿は、人がどのように社会現象の中に不公平を見出していくのか、という認知メカニズムの解明を目的とする。ここでは学歴と職業についての不公平認知を取り上げ、両者が共に社会階層とパーソナリティ要因の双方によって規定されることを明らかにする。パーソナリティ要因として特に権威主義と無力感に注目し、これらと不公平認知との関係を明らかにする。女性データを用いて構造方程式による分析を行った結果、以下の三つの知見が得られた。(1)社会階層が低いことは、学歴や職業に関する不公平認知を形成する(2)権威主義的であることは社会にある不公平を認知しにくくさせる(3)無力感を持つことは権威主義的性格を形成する
著者
中田 知生 岩間 暁子 高田 洋 中井 美樹 岩間 暁子 高田 洋 村上 あかね 中井 美樹
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究においては、欧米において社会学分野の学術雑誌に頻繁に用いられる新しい分析モデルについて、理解し、社会学研究にどのように適用できるかを考え、実際に分析を行ってみることである。本研究においては近年の社会学の理論構築のために収集された調査データ、特に、変化を扱うことが可能であるパネルデータや、調査においての回答拒否を含んだデータなどは、従来の分析方法では正確な推定値を算出することができないからである。本研究では、アメリカの大学における統計学・データ解析に関する実際を知った上、それらを分析する方法としてのそれらの新しい統計モデルやそれらを分析するソフトウェアに関する情報を収集した。採取的には、雑誌論文において、これらの新しい方法のいくつかについて、論文を執筆して掲載した。