著者
晝間 文彦
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス学会年報 (ISSN:18843328)
巻号頁・発行日
no.11, pp.81-95, 2011-07-20

長期的な報酬(効用)を犠牲にして、目前の報酬を衝動的に選んでしまうという行動は時間不整合的行動と呼ばれるが、この衝動的行動は個人レベルだけでなく、社会レベルでも経済コスト的に見て大きな問題である。本稿では、標準的経済学では説明困難な行動を「準双曲割引」モデルで説明して、そうした行動を抑制する手段としての自制を取り上げている。準双曲割引モデルでは、規制する自己と規制される自己という2つの自己を想定することが自然であるが、それは認知心理学での「2重過程理論」と整合的である。本稿では、前者が後者を規制する程度を自制力ととらえ、Frederick(2005)らの研究を援用して、認知能力およびパーソナリティを自制力の代理変数として、それらと時間割引率との関係を、アンケート調査データを用いて検証した。その主要な結果は、パーソナリティは有効でなかったが、認知能力は、時間割引率と有意な負の関係を持つことが確認された。これは高い認知能力は時間割引率を低める(すなわち、現在重視型でなく、将来重視型となる)こと、すなわち自制力の有効性を示唆している。最後に今後の議論への足掛かりとして、この結果が、2重過程理論に基づく自制力という視点の他に、脳を情報処理機能のネットワークとする単一過程理論でも説明可能であるという議論にも言及している。
著者
晝間 文彦 池田 新介 須斎 正幸 高橋 泰城 筒井 義郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

時間割引率は人々の現在と将来にかかわる意思決定を決める重要な要因で、時間割引率が高いほど現在を重視した(せっかちな)、低いほど将来を重視した(我慢強い)意思決定を意味する。この研究では、時間割引率がどのような要因に関係しているかをアンケートによって調べたが、時間割引率は自制力が高いほど、認知能力が高いほど、低いことが明らかとなった。これは時間割引率に対する教育の有効性を示唆するものである。
著者
筒井 義郎 大竹 文雄 藤田 一郎 晝間 文彦 高橋 泰城
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

時間割引は多くの経済実験において、少額を早く受け取るオプションと多額を遅く受け取るオプションのどちらを選択するか、というタスクで測定される。本研究課題は、(1)遅れ(現在から最初のオプションまでの時間)と期間(2つのオプションの間の時間)を明示的に分離して、それぞれが時間割引に与える効果を特定する、(2)喫煙が時間割引に対してもたらす効果について明らかにする、という2つの課題を主たる目的とする。(1)については、これまでに行った実験の結果を論文にまとめ、本年度6月にJournal of Risk and Uncertaintyに掲載した。(2)については、昨年度早稲田大学で行った、非喫煙者と喫煙者、断煙者と非断煙者を比較する実験の結果を分析した。その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて高い時間割引を示すことが明らかにされた。また、断煙者は非断煙者よりも、お金に対しては高い割引率を示すが、タバコについては、むしろ忍耐強くなるという結果を得た。この後者の結果の頑健性については疑問があり、詳細な実験条件設定に問題がある可能性を検討して、それらを改良した実験を本年1月と2月に大阪大学において実施した。その結果は現在解析中であるが、おおむね、喫煙者は非喫煙者に比べて高い時間割引を示す点にでは早稲田実験と同じである。断煙者と非断煙者を比べると、お金については両者の時間割引には差がなく、タバコについては、断煙者の方がよりせっかちになるという結果が得られた。今年度の実験結果の方が直観に整合的であるが、両方の結果をどのようにまとめていくかは検討中である。一方、fMRI実験については、早稲田大学健康科学部の正木教授の協力が得られ、本年2月と3月に、異時点間選択を行っている喫煙者の脳画像を撮像した。引き続き、行動実験の結果をまとめつつ、断煙者および非喫煙者についても撮像していく。