著者
升屋 勇人 戸田 武 市原 優 森山 裕充 景山 幸二 古屋 廣光
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

全国の天然林、人工林において樹木疫病菌の調査を行った。特に渓流のリターを中心に調査を行うとともに、枯死木があればその根圏土壌からの分離を行った。その結果、現時点で約1000菌株以上を確立した。これらの中にはP. cinnamomiなどの重要病害も含まれている。これらの菌株の詳細については、現在DNA解析と形態観察を継続して行っている。これまでに国内では約20種程度の種数が確認されていたが、そのほとんどは畑地であり、森林において多くの種類が検出される点は新規性が高く、日本における本病害のリスクを正確に把握するための一助となる。また、当年度は関西においてヒノキ幼木の枯死に樹木疫病菌が関係している可能性が考えられ、今後詳細な接種試験が必要である。さらにイチョウの集団的な枯損にも樹木疫病菌が関与しているか可能性があり、より詳細な現地調査を行っているところである。本年度はP. cinnamomi、P. cambivora、P. castaneaeを各種ブナ科樹木苗木の樹皮に有傷での接種試験を行った。その結果、クリではP. castaneaeが特に強い病原力を有すると考えられた。またその他の樹種に対してもそれぞれ病原性を有することが確認され、感染すれば十分に各樹種に損害を与えることが明らかとなった。特にコナラ、ミズナラ、クリは本病害に対して感受性が高い可能性がある。これらの成果は、これまで原因不明であった枯死のいくつかに本病原菌が関与する可能性を示すものである。
著者
景山 幸二 宇井 格生
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.148-152, 1983
被引用文献数
2 7

北海道立北見農業試験場の連・輪作試験圃場でインゲンおよびダイズの連作障害に関係するとされる<i>P. myriotylum</i>と未同定の<i>Pythium</i> sp. (<i>Pythium</i>sp. A)とについてそれらの宿主範囲および分布を検討した。<i>P. myriotylum</i>は,輪作区に栽培されるエンバク,テンサイ,ジャガイモ,コムギ,アカクローバのうちテンサイのみに強い病原性を示し,マメ科作物ではエンドウ,アズキ,ダイズ,インゲンに強い病原性を示したが,品種によりその程度は異なった。<i>Pythium</i> sp. Aは,テンサイに対し,またマメ科作物ではエンドウ2品種,ダイズ1品種,インゲン3品種に強い病原性を示した。網走支庁管内19か所および帯広1か所から生育の劣ったインゲンを採取し,根から<i>Pythium</i>属菌を分離したところ,1か所から,<i>P.myriotylum</i>, 7か所から<i>Pythium</i> sp. Aが得られた。<br>北見農業試験場の連・輪作試験圃場5区,網走支庁管内17か所,伊達1か所,帯広1か所の各種作物の畑地より土壌を採取し,ライムギ苗を用いて間接分離を行った。その結果,<i>P. myriotylum</i>はいずれの土壌からも分離されず,<i>Pythium</i> sp. Aは3か所から分離された。以上の結果から,<i>P. myriotylum</i>と<i>Pythium</i> sp. Aは宿主範囲および分布ともに狭い種と認められる。
著者
升屋 勇人 田端 雅進 市原 優 景山 幸二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.318-321, 2019-12-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

国産漆の需要拡大とともに国産漆増産の機運が高まる中,これまでに多くのウルシの植林が全国で行われてきたにも関わらず,漆液の収穫にこぎつけている地域は多くない。そこにはウルシの育成時における何等かの阻害要因が存在すると考えられた。実際に全国で植林したウルシの衰退傾向が著しい地域において調査を行った結果,北海道や岩手県を除く衰退林のほとんど全てで土壌より植物疫病菌の1種Phytophthora cinnamomiが検出された。分根苗を用いた土壌混和による接種試験では,菌を入れていない土壌と比較して明らかな衰退枯死が見られた。本研究により,P. cinnamomiは日本のウルシ植林において阻害因子の一つとなり得ると考えられた。また,本病害を新病害「ウルシ疫病」とすることを提案した。
著者
福井 博一 景山 幸二 松本 省吾 松本 省吾
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

根腐病抵抗性の4倍性Rosa multifloraと根頭がんしゅ病抵抗性をのPEKcougelを交配し、複合抵抗性台木の育成を目指した。得られた種子から胚を摘出して胚培養を行った。遺伝子マーカーを用いて交雑後代の検証を行った結果、3個体のF1個体が得られた。これらのF1は根頭がんしゅ病と根腐病に対して高い複合抵抗性が確認できた。接木親和性検定の結果、' F1 No.1'、' F1 No.5'が台木として有望であった。