著者
木下 政人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.449-454, 2015-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
15

近年,CRISPR/Cas9やTALENなどを用いたゲノム編集技術が急速に進展し,非モデル生物においてもゲノムの改変が容易になった.同様に各生物におけるゲノム情報もますます充実してきている.このような背景の下,ゲノム編集技術は今後,水産業にも大きな影響を及ぼすと考えられる.本稿では,これまでの遺伝子導入技術とゲノム編集技術の違いを述べ,ゲノム編集技術の一つである遺伝子破壊技術を用いた養殖マダイでの育種の試みを紹介する.そして,ゲノム編集技術の水産生物への有効性と可能性,および,今後解決すべき課題について論じる.
著者
木下 政人 豊田 敦 家戸 敬太郎 吉浦 康寿 岸本 謙太 村上 悠 片山 貴士 鷲尾 洋平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

養殖魚の育種はほとんど行われていないのが現状である。伝統的な選抜育種法による育種は、長期間を要するという欠点があった。そこで、ゲノム編集法の一つであるCRISPR/Cas9を用いて、マダイとトラフグにおいてミオスタチン遺伝子を破壊することで筋肉増量品種作製を試みた。ミオスタチン遺伝子のエキソン1内の配列をターゲットを設定し、single guideRNAおよび Cas9 RNA を人工授精した1細胞期の受精卵にマイクロインジェクション法により導入した。その結果、いずれの魚種においても高効率でミオスタチン遺伝子破壊に成功し、筋肉量を増加した個体の作製に成功した。
著者
吉浦 康寿 吉川 廣幸 木下 政人
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在、ゲノム編集技術による養殖魚の品種改良が注目されているが、実用化した場合、環境保護の観点において、ゲノム編集魚の逃亡による野性魚との遺伝子交雑問題は避けられない。そこで、養殖魚の不妊化に着目した。魚類では、三倍体化等の不妊化技術はあるものの、いずれの方法も実用化にあたり確実性が乏しい。本研究は、ゲノム編集技術を用いて100%の不妊化が可能な遺伝的不妊魚の作出を目指す。また、この不妊魚は次世代を作出できないため、大量生産が難しい。この課題を克服するため、代理親魚法を利用して、これらの遺伝的不妊魚を簡便かつ大量生産する技術を開発する。
著者
木下 政人 豊原 治彦 志水 寛
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1485-1492, 1990
被引用文献数
14 63

<i>Modori</i>-inducing proteinase (MIP) could be classified into four types as follows on the basis of the extractability from muscle, the optimum temperature for the activity of myosin heavy chain degradation, and the sensitivity to n-butanol. (1) Sarcoplasmic-50°C-MIP (Sp-50-MIP) which is easily extractable, acts optimally at 50°C, and is not sensitive to n-butanol, (2) sarcoplasmic-60°C-MIP (Sp-60-MIP) which is also easily extractable, acts optimally at 60°C, and is sensitive to n-butanol, (3) myofibrillar-50°C-MIP (Mf-50-MIP) which is tightly associated with myofibrils, acts optimally at 50°C, and is not sensitive to n-butanol, and (4) myofibrillar-60°C-MIP (Mf-60-MIP) which is also tightly associated with myofibrils, acts optimally at 60°C, and is sensitive to n-butanol.<br> Twelve fish species examined were classified into the following five groups according to the dis-tribution pattern of the above 4 types of MIP. (1) The species having only Sp-60-MIP, such as walleye pollack, mud dab, rainbow trout, brown croaker and red sea bream, (2) the species having both Sp-50-MIP and Sp-60-MIP, such as threadfin bream, (3) the species having both Mf-50-MIP and Mf-60-MIP, such as crucian carp, Pacific mackerel and file fish, (4) the species having both Sp-60-MIP and Mf-60-MIP, such as nibe croaker and tilpia, and (5) the species having Sp-60-MIP, Mf-50-MIP, and Mf-60-MIP, such as shortfin lizard fish.