著者
臼井 将勝
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

魚類寄生甲殻類や食用昆虫など,学術的知識の応用から甲殻類アレルギー患者での交叉反応リスクが懸念されながらも実際に調査されていないものに目を向け,トロポミオシンという共通アレルゲンの存在に焦点を絞って各食品やその調理品に含まれる濃度や含量を明確にするために研究を行った。その結果、魚類口腔内に寄生するウオノエ類とこれらが混入した調理品や食用昆虫等において、エビトロポミオシン様タンパク質が原材料表示義務の生じる濃度を超えて存在することを明らかにした。さらに、キダイ寄生ウオノエ類を例にLC-MS/MS分析によってトロポミオシン様タンパク質が真にトロポミオシンであることを証明した。
著者
多賀 悠子 伏屋 玲子 浜野 かおる
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

クルマエビ漁獲量の減少に伴い,種苗生産に使用する親エビの確保が近年難しくなっている。そのため,陸上水槽で飼育した親エビを用いた採卵技術の確立が求められているが,交尾が十分に行われないことが問題となっており,その原因として水中音や飼育水の振動によるストレスの影響が疑われている。そこで,水槽内で交尾が行われる条件を明らかにするため,曝気による音と振動をはじめとして,水槽壁の衝撃吸収性,水槽サイズや底質と交尾との関係を調査した。その結果,後二者は交尾に影響を与え,アンスラサイト(破砕石炭)を底質に用いた場合には底面積が0.75 m2以上で交尾が行われた。一方,前二者は交尾に影響を及ぼさなかった。
著者
吉浦 康寿 吉川 廣幸 木下 政人
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在、ゲノム編集技術による養殖魚の品種改良が注目されているが、実用化した場合、環境保護の観点において、ゲノム編集魚の逃亡による野性魚との遺伝子交雑問題は避けられない。そこで、養殖魚の不妊化に着目した。魚類では、三倍体化等の不妊化技術はあるものの、いずれの方法も実用化にあたり確実性が乏しい。本研究は、ゲノム編集技術を用いて100%の不妊化が可能な遺伝的不妊魚の作出を目指す。また、この不妊魚は次世代を作出できないため、大量生産が難しい。この課題を克服するため、代理親魚法を利用して、これらの遺伝的不妊魚を簡便かつ大量生産する技術を開発する。
著者
高橋 洋 中山 耕至 竹下 直彦 武島 弘彦 橋口 康之 田上 英明
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

種内の遺伝的多様性は種の存続に不可欠と考えられている。本研究は,その遺伝的多様性が脊椎動物中最も低いレベルであるにもかかわらず,長期間絶滅せずに存続してきた魚類の一種“アカメ”のゲノム分析を行った。ゲノムデータからもアカメの遺伝的多様性が現時点でゲノムが解読されている脊椎動物の中で最も低いことが示されたが,一部の領域が高いヘテロ接合度を示すことが明らかになり,選択圧によって一部の領域に遺伝的多様性が維持されている可能性が示唆された。
著者
隠塚 俊満 中山 奈津子 伊藤 克敏 持田 和彦
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

作用機序の異なる11種の除草剤の珪藻キートセロスおよび鞭毛藻ヘテロシグマに対する急性毒性を検討した結果、珪藻はブロマシルなど光合成の光化学系Ⅱ阻害剤に対してより高い感受性を示した。また、近年赤潮が頻発している福山港の環境水中除草剤濃度を測定した結果、環境水中濃度は毒性値より50倍以上低い濃度であった。さらに、福山港表層の微細藻類計測値から微細藻類の多様度変化検討し、多様度を説明する環境パラメータを検討した結果、ブロマシル濃度は多様度変化と有意な相関が認められた。そのため、除草剤は実環境中で鞭毛藻赤潮の発生を含む微細藻類の群集構造に影響を及ぼしている可能性が想定された。
著者
臺丸谷 美幸
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アメリカ合衆国市民として朝鮮戦争へ従軍した日系アメリカ人二世に焦点をあて、従軍が彼らの社会生活へもたらした影響をジェンダーとエスニシティの視点から解明した。カリフォルニア州出身者を対象とし、日系新聞の分析、退役軍人へのインタビュー調査、朝鮮戦争記念碑建設などにみる従軍経験の再記憶化の考察を行った。日系二世たちにとって従軍経験は退役後の社会参入を促し、進学や就職へ直結する生活基盤を築く契機となったが、この背景には1950年代の冷戦対立と国内の人種政策が密接に絡んでおり、これは合衆国における移民の排除と包摂を巡るポリティクスとして捉えることが可能であることを示した。
著者
矢田 崇 棟方 有宗 Schreck Carl B.
出版者
国立研究開発法人水産研究・教育機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

サケ科魚類の降河行動と耐病性の制御機構について、「神経系-免疫系-内分泌系」間の相互作用という観点から調べた。行動でタイプ分けした個体群の比較により、水面近くに定位する群、または環境変化に反応して効果行動を起こしやすい群では、脳神経系での副腎皮質ホルモン刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子の発現量に特徴的な差異が見られた。一方免疫系では、行動タイプによる顕著な差異は認められなかったが、環境変化に対する抑制的な反応が見られた。