著者
本庄 武
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.76-91, 2002 (Released:2017-06-02)

本稿は、規範意識の維持・回復・強化を図ることを刑罰の目的とする理論である積極的一般予防論について、心理学理論に依拠しつつ検討するものである。第1に、積極的一般予防論が刑罰制度一般の存在根拠たり得るかについては、それを肯定し得る理論も存在したが、認知的発達理論によれば、刑罰による権威的な対応は萎縮効果をもたらし規範意識の発達にとって妨げとなると解し得た。第2に、積極的一般予防論が新たな立法により重罰化を行う根拠になり得るかについては、重罰化の効果を否定的に解し得る研究が存在した他、刑罰一般の積極的一般予防効果を根拠付け得る研究によっても規範意識を涵養するためにどの程度の刑罰が必要かを明らかにすることは困難に思われた。
著者
本庄 武
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

19年度は、第1に国内において、量刑が争点となる実際の裁判でのあるべき弁護活動、並びに裁判員制度の下でどのような対応策を検討しているかについて聴き取り調査を行った。また、裁判員制度の下での量刑評議をどのように行うことが想定されているか、模擬裁判でどのような取組みがされているかについて文献研究を行うと共に裁判実務家の意見聴取を行った。以上の検討を踏まえ、特に評議における量刑相場(量刑傾向)の扱われ方をチーマに研究会で報告を行った。第2に、裁判員制度の対象となる少年の刑事裁判における量刑及び家裁への再移送のあり方につ.いて従来の研究を発展させ、学会で報告を行った。またその成果の一部として、判例評釈を執筆した他、論文を執筆中である。第3に、アメリカ合衆国マサチューセッツ州における量刑の実情について実態調査を行うと共に文献研究を行った。マサチューセッツ州では、連邦とは異なり、拘束力のない量刑ガイドライン制度を採用しており、量刑の統一性と個別的妥当性を両立させるシステムとなっており、連邦量刑ガイドラインに対してなされているような、硬直的で個別的妥当性を犠牲にした量刑となっているとの批判を回避し得ており、裁判員制度の下での量刑を考える上でも極めて示唆的であった.第4に、アメリカ合衆国連邦最高裁の近時の量刑に関する判例の研究を行うと共に、現地の研究者との間で意見交換を行った。連邦最高裁では裁判官の量刑裁量を拡大する方向での判決を相次いで下している。この動向は、ガイドライン制度の下で量刑の統一性乏個別的妥当性を両立させるというマサチューセッツ州の制度と方向性を同じくしており、非常に興味深いものである。以上の日米の動向についての調査に17-19年度の調査の成果を踏まえ、20年度論文を執筆する予定である。

1 0 0 0 OA 9 刑務所医療

著者
本庄 武
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.524-529, 2015-07-30 (Released:2020-11-05)
著者
本庄 武
出版者
日本刑法学会
雑誌
刑法雑誌 (ISSN:00220191)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.301-304, 2009-02-25 (Released:2020-11-05)
著者
本庄 武
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.33-49, 2017 (Released:2018-10-31)

少年の刑事責任の低減を示す脳科学の知見は,アメリカの判例に積極的に取り入れられ,少年に対 する死刑の廃止や仮釈放のない終身刑の大幅な制限をもたらしている.この背景には,法学者と科学 者の活発な共同研究,大規模な共同研究を支援する体制,経験科学の知見を司法に導入することに対 する裁判所の寛容な姿勢があると考えられる.脳科学の知見は,現在各州で少年に対する厳罰化を抑 制する立法を後押ししており,将来的に,少年に対する刑事処分全体ひいては少年司法全体の改革を もたらす可能性がある.脳科学は,少年司法の基盤をパレンス・パトリエに基づく慈悲の精神から, 意思決定能力の未成熟さという科学的な知見に移行させ,少年犯罪者を成人から区別して取り扱うと いう発想を強固にする.重大犯罪においても,少年の刑事責任の低減に見合った処分のあり方が求め られる.現在までのところ,脳科学は青年期に関する発達心理学の知見を補強するという慎重な用い られ方をしており,その限りで弊害は乏しい.日本の少年司法も脳科学の知見を取り入れるべきであ ろう.
著者
赤池 一将 福田 雅章 山口 直也 三島 聡 徳永 光 本庄 武
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究は、大別して、海外における民営刑務所についての調査・検討と、日本国内において進行していたPFI刑務所(2005年春以降、4施設が開設またはその準備の状況にあった)についての調査・検討とから構成された。上記の研究代表者、分担者の他に、岡田悦典(南山大学教授)、笹倉香奈(甲南大学専任講師)、萩原聡央(名古屋経済大学専任講師)、前者については、2005年度に、アメリカ合衆国、オーストラリア、イギリス、2006年度に、イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国、フランス、2007年度に、フランスにおいて現地における施設参観、関係者に対する面接調査等を行った。また、後者については、2005年度に、市場化テストモデル事業の実施された宮城刑務所、2006年度に、建設中の美祢社会復帰促進センター、2007年度に、開設後の美祢社会復帰促進センター、播磨社会復帰促進センター、を参観したほか、日本におけるPFI刑務所計画を推進してきた法務省担当者、参入企業担当者、施設受入れを決定した自治体関係者に対する面接調査を重ね、また、座談会を開催した。3年間の研究期間中に、30回を超える研究会を実施し、論文22件(内、雑誌における刑務所民営化関連特集掲載6件、関連紹介論文11件、関連単行本収録論文3件)、書籍1件(論文9件、座談会記録1件)、学会報告3件(主催国際シンポジウム1件を含む)の成果をあげた。また、2008年度刑法学会大会における分科会(刑務所への民間参入の意義と課題)での報告が予定されている。