著者
赤池 一将 福岡 英明
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

(1)2003年中に当該テーマの基礎的文献を検討した後、2004年2月に、フランス司法省行刑局および青少年司法保護局を尋ね、本研究の進行についての協力依頼を行った。その後、同年7月および2005年1月の2度にわたって、フランスの官民共同運営刑事施設2施設、民間委託型の犯罪少年収容施設1施設を参観し、官・民双方の職員に対する調査を行った。その内容は、上記施設における職員組織、職員と被収容者との関係、刑務作業、医療、外部交通、社会復帰プログラムなどについて、官・民の協力形態の実情とその具体的課題に関するものであった。(2)この過程で、フランスの官民共同運営施設は、厳罰政策によって惹起される過剰収容への対策という側面と同時に、民営化論と並行して進行していた1980年代以降の被収容者に対する政府の一貫した社会化推進政策(被収容者に市民として可能なかぎりの公役務を提供しようとする政策)によってその構想が規定されているとの認識を得た。そこで、日本の行刑改革会議(03〜04年)においても議論となったフランスの施設医療を例に、フランスの近年の政策変化とその意義について検討を行った。(3)また、この社会化推進政策が、拘禁施設をめぐるフランス犯罪社会学の理論動向(施設の閉鎖的性格を否定し、被収容者の継続的な生活時間からその役割を捉える)から強い影響を受けている点を確認し、その原点となった哲学者フーコーの監獄観とその行刑実務への影響を理論的に整理した。(4)最後に、利益追求を目的とする民間企業による刑事施設民営化は、NPO団体を中心とする施設外の人的資源による行刑への介入によって条件付けられ、この二種の外部世界との接触によって規定される点を理論的に検討した。そして、民営化による刑罰機能の変化と人的民間資源の活用に関する継続的研究を、新たな共同研究プロジェクトとして策定した。
著者
赤池 一将 福田 雅章 山口 直也 三島 聡 徳永 光 本庄 武
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究は、大別して、海外における民営刑務所についての調査・検討と、日本国内において進行していたPFI刑務所(2005年春以降、4施設が開設またはその準備の状況にあった)についての調査・検討とから構成された。上記の研究代表者、分担者の他に、岡田悦典(南山大学教授)、笹倉香奈(甲南大学専任講師)、萩原聡央(名古屋経済大学専任講師)、前者については、2005年度に、アメリカ合衆国、オーストラリア、イギリス、2006年度に、イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国、フランス、2007年度に、フランスにおいて現地における施設参観、関係者に対する面接調査等を行った。また、後者については、2005年度に、市場化テストモデル事業の実施された宮城刑務所、2006年度に、建設中の美祢社会復帰促進センター、2007年度に、開設後の美祢社会復帰促進センター、播磨社会復帰促進センター、を参観したほか、日本におけるPFI刑務所計画を推進してきた法務省担当者、参入企業担当者、施設受入れを決定した自治体関係者に対する面接調査を重ね、また、座談会を開催した。3年間の研究期間中に、30回を超える研究会を実施し、論文22件(内、雑誌における刑務所民営化関連特集掲載6件、関連紹介論文11件、関連単行本収録論文3件)、書籍1件(論文9件、座談会記録1件)、学会報告3件(主催国際シンポジウム1件を含む)の成果をあげた。また、2008年度刑法学会大会における分科会(刑務所への民間参入の意義と課題)での報告が予定されている。
著者
石塚 伸一 赤池 一将 浜井 浩一
出版者
龍谷大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本における犯罪者・非行少年処遇は、未だ科学化が進んでおらず、法律家の先入見に支配されている。中央政府主導の犯罪対策には限界があるを自覚した政府は、地方政府や地域社会、NPOとの連携を模索している。他方で、市民は、人間科学にもとづく犯罪問題の解決に期待をしているが、十分な情報をもたないために、扇情的な犯罪報道に聳動して、刑罰ポピュリズムに惑わされる傾向がある。犯罪者・非行少年の処遇において、法と人間科学への期待は大きい。個別分野での科学的実践を通じて、実践的科学としての犯罪学の領域に フィードバックされる諸課題を受け止めながら、法と人間科学の中に新たな犯罪学を構築していく必要がある。