著者
後藤 昭 村井 敏邦 三島 聡 石塚 伸一 村井 敏邦 葛野 尋之 水谷 規男 福井 厚 土井 政和 前田 朗 佐々木 光明
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

(1)全国の刑事施設および更生保護関連機関等に関する実態調査およびデータベース作成:統一的な調査を実施するため、「施設調査票」を作成し、全国的に施設参観を実施した。その他、元矯正施設職員、施設関係での訴訟を提起している当事者、弁護士等から、日本または海外の矯正施設の現状や新たな立法動向等についての聴き取りを行った。これらの調査から、刑事施設が現在抱えている最大の問題は過剰収容であり、それによって、施設運営も保安的観点が重視され、処遇面がおろそかにされるおそれがある等の状況が把握された。日本の刑罰システムに関する総合的なデータベース作成については、国内外のインターネット上で提供されている情報を利用しやすい形態にまとめた。その他、海外については、NGOの発行した年次活動報告書、欧州人権裁判所の重要判例関する資料を収集した。日本については、近代監獄改革関連事項に関する年表を2001年度分まで完成させた。(2)現行制度および運用に関する評価・分析、ならびに「対案の」提示:かつて本研究会が、拘禁二法案への対案として作成した『刑事拘禁法要綱案』(1996年)につき、改訂作業を行った(「改訂・刑事拘禁法要綱案」)。改訂に際しては、近年、日本においてもNGO活動が盛んとなりつつあることや、行政機関の情報公開に対する意識が高まっていること等、新しい社会の動向にも注目した。主な改訂のポイントは、施設内処遇に市民が協力するという形態を積極的に採用したこと、施設処遇に対する第三者機関としての市民の監視を充実させたことにある。刑事施設の抱える問題点に対する一つの回答でもあり、施設だけで処遇を担うのではなく、一般社会と連携しながら、また一般社会に対しアカウンタビリティを果たしながら施設を運営していくべきであるとの方向性を示したものである。改訂作業に加え、改訂要綱案に基づく施設運営の実現可能性についても検討を行った。そのために、数名の被収容者を想定し、入所時から出所時までのシミュレーションを作成した。(3)研究成果の公表およびシンポジウムの開催:以上の研究成果を広く公表するために、研究会のホームページを立ち挙げた。2002年3月9日には、法政大学において、「21世紀の刑事施設-グローバル・スタンダードと市民参加」と題するシンポジウムを開催した。
著者
小宮 友根 北村 隆憲 森本 郁代 三島 聡 佐藤 達哉
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、裁判員裁判の評議において裁判官がおこなうファシリテーションについて、その技法とそれが評議の展開に及ぼす影響を解明しようとするものである。現職裁判官をはじめとする法曹の協力のもと、現実の裁判員裁判に限りなく近い模擬裁判を実施し、その録画を主として会話分析の手法を用いて分析することで、裁判官が用いるファシリテーション技法の会話的特徴とそれが評議にもたらす帰結を体系的に解明するとともに、それに対する学際的な分析と評価をおこなう。
著者
池貝 隆宏 三島 聡子 小林 幸文
出版者
日本環境学会
雑誌
人間と環境 (ISSN:0286438X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.2-14, 2019-10-02 (Released:2020-04-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

神奈川県沿岸のマイクロプラスチック汚染状況を把握するため,相模湾4地点及び東京湾1地点の海岸で漂着マイクロプラスチックの調査を行い,漂着状況の空間変動と時間変動を調べた。空間変動については,満潮線の漂着状況の特徴が海岸間で大きく異なることが分かった。この差は,外洋由来ではなく,内陸の発生源由来のマイクロプラスチックの影響を強く受けたことにより生じたと推定された。満潮線に漂着したマイクロプラスチックの一部は海風により内陸側へ輸送されるが,その傾向はペレットで顕著に表れた。また,満潮線に漂着するマイクロプラスチックのサイズ分布は,沿岸を漂流するマイクロプラスチックに比べて大きいものの割合が高くなることが分かった。時間変動については,気象の影響として沖から陸に向かう風向の強風が長時間続いたときに漂着量が増加し,台風時の漂着量は平時の3倍に達することが分かった。季節変動では,相模湾沿岸では季節風の影響を受け,沖から陸に向かう風が卓越する春期に沖合の漂流マイクロプラスチックが陸域近くに輸送されてその密度が高くなるため,漂着量が増加すると推定された。一方,マイクロプラスチックの材質構成は,期間を通じて大きな変化は見られなかった。2つの海岸で漂着が確認された小粒径の発泡ポリスチレン球の由来を推定したところ,クッション材として利用される微小発泡ビーズの可能性が高いと推定された。こうした製品の適正な処理が重要であることが示唆された。
著者
赤池 一将 福田 雅章 山口 直也 三島 聡 徳永 光 本庄 武
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究は、大別して、海外における民営刑務所についての調査・検討と、日本国内において進行していたPFI刑務所(2005年春以降、4施設が開設またはその準備の状況にあった)についての調査・検討とから構成された。上記の研究代表者、分担者の他に、岡田悦典(南山大学教授)、笹倉香奈(甲南大学専任講師)、萩原聡央(名古屋経済大学専任講師)、前者については、2005年度に、アメリカ合衆国、オーストラリア、イギリス、2006年度に、イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国、フランス、2007年度に、フランスにおいて現地における施設参観、関係者に対する面接調査等を行った。また、後者については、2005年度に、市場化テストモデル事業の実施された宮城刑務所、2006年度に、建設中の美祢社会復帰促進センター、2007年度に、開設後の美祢社会復帰促進センター、播磨社会復帰促進センター、を参観したほか、日本におけるPFI刑務所計画を推進してきた法務省担当者、参入企業担当者、施設受入れを決定した自治体関係者に対する面接調査を重ね、また、座談会を開催した。3年間の研究期間中に、30回を超える研究会を実施し、論文22件(内、雑誌における刑務所民営化関連特集掲載6件、関連紹介論文11件、関連単行本収録論文3件)、書籍1件(論文9件、座談会記録1件)、学会報告3件(主催国際シンポジウム1件を含む)の成果をあげた。また、2008年度刑法学会大会における分科会(刑務所への民間参入の意義と課題)での報告が予定されている。