著者
村上 慎司
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.15-25, 2019 (Released:2019-04-02)

政策と規範概念を架橋する研究は社会保障において急務の学術的課題である。本稿の目的は文献読解によって経済学者A・センと政治哲学者J・ウルフの研究を比較検討し社会保障の規範理論に基づく政策研究を発展させることである。両者に共通する特徴は、単一の規範理論から演繹的に特定の政策を導出することではなく、価値の多元主義を承認したうえで、多様な価値対立構造を明確化し、社会的選択を導くために規範理論的知見を活かすという点にある。だが、センは、超越論的アプローチと状態比較アプローチを相互排他的に論じて、後者の優位を主張するのに対して、ウルフは、理想理論と非理想理論を相互補完的であり、政策研究として後者を重視するものの、前者もガイダンスとしての役割があることを認めている。両者の議論を比較検討した結果、本稿は理想理論と非理想理論の補完関係を認めるほうが社会保障の議論にとって建設的であると言う見解を提示する。
著者
角崎 洋平 村上 慎司
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.119-131, 2016-08-31 (Released:2019-02-15)
参考文献数
10

2002年以降日本において,生活福祉資金貸付版のリバースモーゲージ制度が実施されているが,その運用実態は解明されていない.本稿の目的は,このリバースモーゲージ制度の運用実態を実証的に把握し,その問題点を確認するものである.調査は,全国47都道府県の社会福祉協議会に対して郵送された自記式調査票に基づいて実施した.33都道府県の社会福祉協議会から回答を得た.本調査結果を通じて,(1)要保護世帯向けリバースモーゲージの今後の債権回収が懸念されること,(2)債権回収に際して競売を避けるために相続人の任意の協力に依存せざるをえなくなっていること,(3)借受人の同居遺族の居住福祉にネガティブな影響を与えていること,(4)社会福祉協議会と福祉事務所の連携が不十分であることが明らかになった.
著者
小沢 修司 山森 亮 平野 寛弥 堅田 香緒里 鎮目 真人 久保田 裕之 亀山 俊朗 小林 勇人 村上 慎司 村上 慎司
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は、研究者と市民のネットワーク形成から生み出された議論を通じて、ベーシック・インカムに関する三つの目的を総合的に検討した。第一に、生存権・シティズンシップ・互酬性・公共性・フェミニズム思想といったベーシック・インカムの要求根拠を明らかした。第二に、ベーシック・インカムに関する政治的・財政的実現可能性を考察した。第三に、現行の年金や生活保護のような所得保障制度の問題点とベーシック・インカムにむけた改良の方向性を議論した。