- 著者
-
村木 二郎
- 出版者
- 国立歴史民俗博物館
- 雑誌
- 国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, pp.165-190, 2003-10-31
12~13世紀に,経塚は全国各地で造営された。特に,平安京を中心とした近畿と,大宰府を中心とした九州北部が2大中心地であったため,これまでの研究も西日本の経塚が対象となることが多かった。しかし,ここ数年東日本の経塚調査例も増えてきている。そこで本稿では東日本の経塚のなかで,銅製経筒や土製・石製の専用経筒・外容器を出土した経塚を対象に,地域的な傾向をみていく。経塚は地域色の強い遺跡であるため,個々の資料を詳しく検討する際にはどうしても特殊性が目立ってしまう。そのため本稿では巨視的な立場で東日本の経塚を概観することにより,今後の研究における基礎作業をおこなうことが狙いである。手法として,まず銅製経筒を近畿系の経筒と,製作技法の異なる一鋳式経筒に分類し,その分布地域を押さえる。次に,外容器を珠洲系,東海系,石製などに分け,これらの分布圏も同様にみていく。また,経筒を埋納するにあたって外容器を用いる場合や石室を造る場合がある。出土状況が明らかな例が増えてきたため,こういった情報をもとに埋納法にもとづいた分類も加えた。これらの作業により,日本海側と太平洋側の違い,関東の独自性などが明確に現われる。それらをもとに,東日本の経塚は,陸奥,出羽,関東,中部高地・静岡東部,東海西部,加越,嶺南の7地域に区分することができた。