- 著者
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大澤 研一
- 出版者
- 大阪歴史博物館
- 雑誌
- 大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.0033-0042, 2016 (Released:2022-05-21)
慶長二十年(一六一五)の大坂夏の陣は、近世大坂の町の成立を考えるうえで一つの大きな画期となった。しかし、その後の復興の過程については関連史料が少なく、詳しい状況はわかっていなかった。最近確認した高津屋の記録は天明六年(一七八六)のものであるが、高津屋が元和六年(一六二○)にかけて上町の町割りをおこなったこと、大坂城外曲輪の堀を埋めた後の土地を開発したという復興の具体にかかわる記述があるほか、復興後、町家としての利用のなかった土地を支配し続け、そのなかから大坂城定番や大坂役人衆の屋敷として収公されていく土地のあったことをその場所を書きあげて記している。こうした特定の町人が大坂の町の復興にかかわった事例はこれまで知られておらず、また復興した土地がその後利用されていく様子を伝えたこの史料はたいへん貴重なものと評価できる。本稿ではこの史料を全文翻刻し、今後の活用に供するほか、本史料のもつ歴史的意義を明らかにしようとしたものである。