著者
西廣 淳 大槻 順朗 高津 文人 加藤 大輝 小笠原 奨悟 佐竹 康孝 東海林 太郎 長谷川 雅美 近藤 昭彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.175-185, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
56
被引用文献数
5

著者らは,かつて里山として利用されてきた自然環境を持続可能で魅力的な地域づくりに役立てる方策を「里山グリーンインフラ」と称し,個々の活動の有効性の検証や社会実装について議論している.本稿では,印旛沼流域に広く分布し,かつて水田として利用され,現在では多くが耕作放棄地になっている「谷津」(台地面に刻まれた枝状の幅の狭い谷)に着目し,谷津の湿地としての維持・再生や,その流域の台地・斜面の草原や樹林の維持・再生によってもたらされうる多面的機能を,既存の知見や現地での調査結果から論じる.具体的には,谷底部を浅く水温の高い水域として維持することは,脱窒反応を通して下流への栄養塩負荷を軽減しうる.谷底部での湧水を保全するとともに水分を保持する畔状の構造に成形することで,絶滅危惧種を含む多様な生物の生息場となる湿地環境を生み出しうる.また定量的評価に課題はあるものの,雨水の流出抑制や浸透を通して治水にも寄与する可能性がある.
著者
周 月霞 吉武 央気 東海林 太郎 森下 祐 小河 健一郎 堀江 隆生 関谷 雄大 中村 洋平 河野 誉仁 林田 寿文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.205-210, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
11

気候変動における想定最大規模洪水の発生及び環境の単調化を背景に,治水と環境を一体的検討できる3 次元河道設計ツールが益々重要となっている.本検討では,三重県雲出川の直轄区間を対象として,3次元河道設計ツール(iRIC-Nay2DH, EvaTRiP (Pro))を用いて治水・環境の一体的検討を試行し,その有効性の確認・留意点及び課題を抽出することを目的とした.ALB 測量データを用いて構築した水理解析モデル及び河川特徴を反映する環境評価閾値の設定は,治水,環境を一体で予測できることを確認した.また,大河川において3次元ツールを活用するにあたり,地形等の条件設定の留意点,現地調査結果の精度不足や3次元ツールに中長期視点で植生動態を考慮できない等の課題を整理した.