著者
大槻 順朗 大八木 豊 島谷 幸宏 朴 埼〓
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.361-366, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

Urban development causes serious changes to watershed conditions by decreasing storage area, introducing pavement and channeling. As a result, the peak discharge has been increasing and the arrival time of peak becomes early. The purpose of this study is to investigate the state of retention facilities such as irrigation ponds and paddy area in Mikasa River watershed. The result of investigation shows the rate of the capacity of flood control of dam, ponds and paddy area are 37.1%, 14.6%, 48.3% and total capacity is 3, 063, 000m3.For the estimate of the storage facility effects, we applied the distributed runoff model considering ponds and paddy area effects. The result of calculation showed that the peak discharge at Sanno Bridge decreased 36m3/s by dam, 31m3/s by ponds and 36m3/s by paddy area.
著者
西廣 淳 大槻 順朗 高津 文人 加藤 大輝 小笠原 奨悟 佐竹 康孝 東海林 太郎 長谷川 雅美 近藤 昭彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.175-185, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
56
被引用文献数
5

著者らは,かつて里山として利用されてきた自然環境を持続可能で魅力的な地域づくりに役立てる方策を「里山グリーンインフラ」と称し,個々の活動の有効性の検証や社会実装について議論している.本稿では,印旛沼流域に広く分布し,かつて水田として利用され,現在では多くが耕作放棄地になっている「谷津」(台地面に刻まれた枝状の幅の狭い谷)に着目し,谷津の湿地としての維持・再生や,その流域の台地・斜面の草原や樹林の維持・再生によってもたらされうる多面的機能を,既存の知見や現地での調査結果から論じる.具体的には,谷底部を浅く水温の高い水域として維持することは,脱窒反応を通して下流への栄養塩負荷を軽減しうる.谷底部での湧水を保全するとともに水分を保持する畔状の構造に成形することで,絶滅危惧種を含む多様な生物の生息場となる湿地環境を生み出しうる.また定量的評価に課題はあるものの,雨水の流出抑制や浸透を通して治水にも寄与する可能性がある.
著者
小山 彰彦 乾 隆帝 伊豫岡 宏樹 皆川 朋子 大槻 順朗 鬼倉 徳雄
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.191-216, 2022-03-17 (Released:2022-04-20)
参考文献数
55

堤体高 15 m を越えるハイダム撤去に対する河口域の生態系の応答を調査した事例は世界的に限られている.本研究では荒瀬ダム撤去前に該当する 2011 年から撤去後の 2018 にかけて調査を行い,球磨川水系の河口域の底質と生物相の変化を評価した.調査期間の秋季と春季に調査を計 14 回実施し,球磨川と前川に設置した 178 定点が調査された.このうち,本研究では 138 定点を解析に使用した.底質変化の指標として,調査定点のシルトと粘土の割合を算出した.結果,2012 年の春と 2014 年の春にそれぞれ粗粒化が認められた.これらの粗粒化は主に 2010 年の荒瀬ダムゲートの開放と 2011 年の大規模出水と関連すると考えられる.底生生物群集の変動を解析した結果,定点ごとの生物相の変動は,特定の調査時期,あるいは季節性に基づかないことが示唆された.この結果から,ダム撤去が河口域の底生生物群集に与えた影響は決して大きくなかったと考えられる.一方,球磨川と前川の両河川では内在性種が 2012 年の秋季から 2013 年,あるいは 2014 年の秋季にかけて顕著に増加した.同時期に,内在性種のアナジャコとニホンスナモグリ,およびこれらの巣穴を利用する共生種の出現定点数の増加が認められた.アナジャコとニホンスナモグリは砂泥質,および砂質環境に生息するため,底質の粗粒化が本種らの生息地の拡大を促進した可能性が示唆される.しかしながら,本調査を開始する前には河口域で底質のかく乱が既に観測されている点,本調査域では河川改修や自然再生事業に伴い直接的な土砂の投入が行われている点などから,本研究で観察された底生生物の出現パターンの変化が荒瀬ダム撤去とどの程度直接的に関係しているのかは十分に検証できていない.この関係を明らかにするために,今後,荒瀬ダムの堆積土砂の動態を評価すべきであろう.
著者
大槻 順朗 乾 隆帝 野田 洋二 皆川 朋子 一柳 英隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00112, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2

海・河川域双方を生息場とする通し回遊魚3種(カマキリ,シマウキゴリ,スミウキゴリ)を対象に,海・河川水温を加味した気候変動による影響を評価した.1980年代~2010年代の水温の公共観測値を1級水系ごとに整理し,沿岸・河川河口域の月別の平均値と変動勾配を得た.水温を含む生息環境条件を説明変数とし,生息有無を評価するモデルを構築し,変数の重要度を比較した.また,構築したモデルで将来の想定水温での生息可能性を評価した.その結果,カマキリ,スミウキゴリでは2月海水温,シマウキゴリでは4月河川水温が生息確率へ最も強く影響する水温に抽出された.水温の変動勾配は海域(+1.29℃/100yrs)よりも河川河口域(+3.93℃/100yrs)で大きく,将来の想定水温では3種ともに河川水温上昇による制限がより強いことが示唆された.
著者
末次 忠司 大槻 順朗
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.141-156, 2021-08-01 (Released:2022-11-04)
参考文献数
12

近年各地で水害が発生しているが,防災・減災のためには,従来の堤防やダムによる整備以外に流域対応の施設や対応が必要となる。令和2(2020)年7月に国土交通省は審議会の分科会答申を踏まえて,「流域治水」への転換を進めることとした。今後これを着実に推進するにあたっては,総合治水の反省の下に,課題を踏まえながら,施策を実施していくことが必要である。また,その際,治水行政や河道・施設計画を分析・評価した水害裁判の判決にも着目して、流域治水手法の位置付けや適否などについて考慮しなければならない。
著者
神谷 大介 赤松 良久 渡邊 学歩 大槻 順朗 二瓶 泰雄 上鶴 翔悟
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_87-I_94, 2014
被引用文献数
1

本論文では近年増加してきている局地的豪雨災害に対し,小規模集落での課題と適切な支援方策を検討するため,2013年に発生した山口・島根豪雨災害における萩市須佐川を対象として,調査・分析を行った.この結果,避難勧告の発令基準は雨量と水位によって規定されているが,実際には水位のみで判断されていた.雨量を基に判断すれば,1時間以上早く避難勧告が発令出来たことを示した.住民は周囲の状況を見て避難を判断しており,膝上以上の水位の中,危険な避難行動を行っていた.安全な避難を促すためには,事前のリスクコミュニケーションと雨量を基にした避難準備情報の発表が必要であることを示した.