著者
長谷川 雅美
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.423-428,a3, 2003-05-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本講では, 水田で繁殖するカエル類の生活史と住み場所の特徴を紹介した後, 生息個体数を把握するための方法として, 卵塊のカウントと標識再捕獲法に基づく個体数推定について紹介する。さらに, 生息数の長期的な動態を効率よく行うためのセンサス方法として, 時間/距離当たりの遭遇個体数センサス, 鳴き声のセンサスについて解説した。現時点で最も必要な調査は, 比較的良好な水田環境に生息するカエルの種類ごとの個体数と生物量を評価することであり, それなしに, 生態系に配慮した圃場整備における保全あるいは復元の目標値を持ち得ない。
著者
小瀬古 伸幸 長谷川 雅美 田中 浩二 進 あすか 木下 将太郎
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-32, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
30

【目的】WRAPの視点を反映した看護計画を用いた精神科訪問看護の効果を明らかにすることである.【方法】本研究では1群事前事後テストデザインを用いた.2015年1月~9月に精神科訪問看護を受けている15名を対象にWellness Recovery Action Plan(WRAP)の視点を反映させた看護計画を用いた介入を6か月間行い,介入前と6か月後で日本語版Profile of Mood States(POMS)短縮版,日本語版Rosenberg Self Esteem Scale(RSES-J),日本語版Rathus Assertiveness Schedule(RAS),Global Assessment of Function(GAF)を測定した.【結果・考察】6か月後の中央値で有意に改善したものは,POMSの「不安-緊張」「抑うつ-落ち込み」「活気」「疲労」「混乱」,RASの「目標志向・成功志向・希望」「自信をもつこと」「手助けを求めることをいとわないこと」,GAFであった.WRAPの視点を反映させた看護計画を用いた精神科訪問看護は,リカバリーを促進する有効な方法であると示唆された.
著者
金子 是久 明星 亜理沙 長谷川 雅美 宮下 直
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.189-199, 2013-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

In this study, we aimed to investigate the habitat of grassland plants which flower in the spring, compared to the difference of the long-term mowing management of semi-natural grasslands in the Shimousa plateau in the Chiba Prefecture of Japan. In grassland plants which flower in the spring, Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius were found in the section mowed 1 time per year according to the May survey. However, the appearance frequency and presence of Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum were high in the sections mowed 3~4 times per year. We considered that in Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius, their germination and growth are suppressed gradually, their roots decline, and plants will not grow soon. Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum have grown under good sunshine with low-medium herbaceous conditions, and have adapted repeating seed dispersal and vegetative propagation in the environment of mowing 3~4 times per year for more than 20 years. Many Luzula capitata and Ixeris dentate were found in the environment that conducted excessive mowing of 10 times or more per year for more than 10 years. These species have developed repeating seed dispersal and vegetative propagation under the environment of intense mowing pressure for a long time, not being suppressed. On the other hand, Pteridium aquilinum, Potentilla fragarioides, Potentilla freyniana, Chaenomeles japonica, and Imperata cylindrica have grown, adapting to the cover of tall herbs. We considered that the appearance of grassland plants which flower in the spring has been affected by the differences of continuous mowing frequency for a long time and the presence or absence of the inhibition of high-stem herbaceous plants by mowing frequency after blooming and fruitage.
著者
田中 浩二 吉野 暁和 長谷川 雅美 長山 豊 大江 真人
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.184-193, 2015
被引用文献数
1

<b>目的:</b>精神科看護師が日常的な看護実践の中で意識的あるいは無意識的に経験している患者看護師関係における共感体験の特徴を明らかにすることである.<br><b>方法:</b>精神科看護経験を5年以上有する看護師30名を対象として非構造的面接を実施した.面接では関係性が深化し印象に残っている事例とのかかわりについて語ってもらい,Bennerの解釈的現象学に依拠して解釈した.<br><b>結果:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験として,4つのテーマが解釈された.「患者との関係性への関心と患者理解に向かう欲動」「患者と看護師の人間性や生活史が影響しあう」というテーマには,看護師が患者にコミットメントし,患者の負の感情や苦悩を緩和したいという看護師の願望が現れていた.また「ケアの効果の現れで体験する確かに通じ合えた感覚」「時空を超えた一生の絆」というテーマには,患者と看護師が通じ合え,両者の間で喜び,感動,驚きなどの感情体験や安心感,満足感が共有されたことが現れていた.<br><b>結論:</b>精神科看護師の患者看護師関係における共感体験は,ケアの一場面を取り出して説明できる現象を超えたものであり,日常のケアの連なりの中や両者の生きる時間が影響しあう中で体験されることが考えられた.
著者
田和 康太 細浦 大志 露木 颯 長谷川 雅美 佐久間 元成 遠藤 立 安東 正行 松本 充弘 黒沼 尚史 中村 圭吾 佐川 志朗
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00033, (Released:2022-07-21)
参考文献数
60
被引用文献数
1

コウノトリの採餌環境として着目されている田中調節池において,魚類を対象とした生息状況調査を 2018 年および 2019 年に実施した.また,台風 19 号通過に伴う洪水前後での魚類の分布状況を比較することで,平水時の田中調節池における魚類の生息地としての問題点および今後の配慮方針について検討した.平水時の農閑期(2018 年 12 月)では,支線排水路における魚類の分類群数および個体数は少なく,魚類の全く採集されない調査区も存在した.また,同時期に幹線排水路で確認された魚類が末端排水路ではほとんど記録されなかった.洪水後の農閑期(2019 年 11 月~12 月)には,支線排水路において魚類の分類群数,個体数ともに洪水前に比べて顕著に増加し,洪水前にはみられなかったタモロコやメダカ属等が採集された.また,洪水前には乾燥していた支線排水路も洪水後には湛水され,ドジョウ等の魚類が採集された.洪水後の各支線排水路におけるドジョウの個体数や魚類全体の個体数および分類群数には泥深が正の効果を示し,底泥の柔らかい水路環境が魚類の越冬環境として好適と考えられた.2019 年の農繁期における水田調査では,カラドジョウの繁殖のみが田面で確認された.以上より,洪水によって利根川本川から幹線排水路,支線排水路まで水域が連続し,魚類の分布域が拡大することが示唆された.その一方で,平水時の支線排水路までの連続性は低く,農繁期に多種の魚類が田面まで遡上できないこと,農閑期には支線排水路で魚類が十分に越冬できないことが明らかになった.平水時の田中調節池における魚類の繁殖場所・越冬場所としての機能を高めるためには,特に幹線排水路と支線排水路,そして支線排水路と田面との落差を解消させること,さらに底泥の柔らかい水路区間を積極的に保全し,河道内のワンド等とも連続させることで魚類の越冬場所を確保することが重要と考えられた.その一方で,こうした取り組みによって外来種の分布域を拡大させる可能性があることにも留意し,健全な水域の連続性の確保を目指す必要があるだろう.
著者
小林 頼太 長谷川 雅美
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.2, pp.169-173, 2005-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17

Xenopus laevis, a frog commercially traded as a laboratory and pet animal, was first recorded in the wild at four localities in the Kanto plain, central Japan. Frogs found in the Tonegawa River might be a feral population established in the past decade because several X. laevis have been collected intermittently since the late 1990's. It is uncertain, however, whether Xenopus found at three other localities (Hasuike Pond in Fujisawa City, Inbanuma Pond in Shisui Town, and A ditch in Nagara Town) have established feral populations because there are few or no subsequent capture records since the first record at each locality.
著者
西廣 淳 大槻 順朗 高津 文人 加藤 大輝 小笠原 奨悟 佐竹 康孝 東海林 太郎 長谷川 雅美 近藤 昭彦
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.175-185, 2020-03-28 (Released:2020-04-25)
参考文献数
56
被引用文献数
5

著者らは,かつて里山として利用されてきた自然環境を持続可能で魅力的な地域づくりに役立てる方策を「里山グリーンインフラ」と称し,個々の活動の有効性の検証や社会実装について議論している.本稿では,印旛沼流域に広く分布し,かつて水田として利用され,現在では多くが耕作放棄地になっている「谷津」(台地面に刻まれた枝状の幅の狭い谷)に着目し,谷津の湿地としての維持・再生や,その流域の台地・斜面の草原や樹林の維持・再生によってもたらされうる多面的機能を,既存の知見や現地での調査結果から論じる.具体的には,谷底部を浅く水温の高い水域として維持することは,脱窒反応を通して下流への栄養塩負荷を軽減しうる.谷底部での湧水を保全するとともに水分を保持する畔状の構造に成形することで,絶滅危惧種を含む多様な生物の生息場となる湿地環境を生み出しうる.また定量的評価に課題はあるものの,雨水の流出抑制や浸透を通して治水にも寄与する可能性がある.
著者
竹内 陽子 長谷川 雅美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.4_13-4_24, 2012-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

本研究は,前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:以下,FTDとする)の視覚空間認知機能が保たれている点を重視して,自閉症患者用のTEACCHプログラムの活用に着目した。本研究の目的は,FTD患者の特徴を活かしてTEACCHプログラムの一部にある「構造化」による介入を行うことで,その有用性を検証することである。対象者は,認知症専門病院でFTDと診断された10名のうち,同意が得られた4名であった。対象者には,視覚的な構造化,時間の構造化,空間の構造化,作業の構造化の4つの構造化プログラムで約3か月間介入した。分析は,FTD患者の反応や変化から構造化プログラムのどの要素に有用性があるかを検証した。その結果,視覚的な構造化,時間の構造化,作業の構造化で有用性が認められたが,空間の構造化に対しては,有用性は判定できなかった。本研究から,FTD患者の日常生活援助として構造化プログラムを活用することの有用性が示唆された。
著者
谷本 千恵 長谷川 雅美
出版者
金沢大学つるま保健学会 = the Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University
雑誌
金沢大学つるま保健学会誌 (ISSN:13468502)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.1-10, 2009

本研究の目的は、我が国の精神障がい者のセルフヘルプ・グループの活動の実態と活動上の課題ならびに活動が発展するための条件を明らかにすることである。全国の精神障害者のセルフヘルプグループ579団体のリーダーに自己記入式質問紙を郵送し活動状況について尋ねた。有効回答である112グループのリーダーの半数が自分たちのグループは発展していないと考えていた。また活動が発展しているセルフヘルプ・グループのリーダー8名に対し半構造的インタビューを実施し、質的記述的に分析した。分析の結果、セルフヘルプ・グループが発展するための条件は、【リーダーシップ能力】、【メンバーの参加意欲】、【(グループ)運営技術】、【(専門職の)必要に応じた継続的支援】、【社会資源】の5つのカテゴリーに分類された。 精神障がい者は疾患の特徴や若年での発症、長期入院による社会経験の不足などから対人関係の持ちにくさや社会生活技能の不足などの課題を抱えており、リーダーシップ能力や積極的な参加、仲間意識、協調性などが阻害されている可能性がある。したがって、当事者のみでセルフヘルプ・グループを効果的に運営することは大変困難であり、専門職の支援が不可欠である。専門職は必要に応じた継続的な支援を行い、当事者の主体性を尊重し、人として対等の関係性の中で当事者が徐々に自信をつけ、自律していけるように見守ることが必要である。 Purpose : The aim of this paper is to identify characteristics of the current activities that self-help groups for individuals with mental illness are involved in. We also attempt to identify requirements for the successful management of self-helpgroups for individuals with mental illness. Method : Stage one of this study assessed the actual condition of self-help groups for individuals with mental illness in Japan. An anonymous questionnaire was mailed to 579 leaders of self-help groups for individuals with mental illness, and validresponses were obtained from 112 individuals. The period of investigation was from August 2006 to February 2007. We defined the groups led by individuals withmental illness as self-help groups ; other group types were defined collectively as support groups. In Stage two of the study a qualitative descriptive design wasused. Participants were 8 leaders of 5 self-help groups. Semi-structured interviews were conducted after consent was obtained. The data collection period was fromJuly to September 2007. Result and Discussion : Stage 1 : A total of 62.5% of the groups studied were self-help groups. Approximately 60% of self-help groups were associated with health care professionals. The main purpose of the groups was friendship and their main activities were recreation and outings. A few of the groups engaged in social action for advocacy. More than half of self-help group leaders reported thinking that their groups were not successful because of a shortage of new members. Group leaders thought that the requirements for successful self-help groups included such elements as professional and administrative support, positive attitudes and mutual support among members, adequate funding, space for meetings, support for the leader, and effective group management. Stage 2 : Five categories emerged from data analysis : long-term support for needs, leadership ability, positive attendance, group management skill, social support. Characteristic problems of individuals with mental illness include poor interpersonal relationships, difficulties in coping with routine living, lack of consciousness of their disease, and poor adaptability to environmental change. Such characteristics can inhibit leaders from exhibiting leadership behaviors or prevent individuals from participating in group activities through active collaboration with others. It seems that creating successful self-help groups is difficult for members because of the characteristics of disease and disability. Therefore, professional support is indispensable. Conclusion : The present research suggests that continuing equal relationships as individuals and long term support for needs are very important when professionals support a self-help group. In addition, opportunities to promote autonomy in deference to the independence of the individuals concerned and knowledge as well as indirect technical support were important.
著者
田中 浩二 長谷川 雅美
出版者
Japan Academy of Nursing Science
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-10, 2014-03-20 (Released:2014-02-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:高齢者のうつ病からの回復について,生活世界との関連の中で明らかにすることである. 方法:うつ病と診断され精神科治療を受けており,寛解または維持期にある65歳以上の高齢者8名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した. 結果:高齢者は,うつ病の発症から急性期にかけて心身が【生活世界からの疎外や圧迫】を受けており,生活世界の中で自由に生きることができなくなっていた.そのような疎外や圧迫が強くなることによって,【厭世観による死の衝動からの支配】に至っていた.これらの体験は,治療につながるきっかけとなり,精神科治療を受ける中で【生活世界へ帰還するきっかけを実感】することができていた.生活世界への帰還は,うつ病からの寛解を意味していた.うつ病高齢者にとっての生活世界への帰還のあり方は【なじみの人間関係や日常生活に帰還】し,【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】に至ることであった. 結論:看護師は,高齢者のうつ病からの回復を支援するために,【なじみの人間関係や日常生活への帰還】【死の衝動からの解放と天寿全うへの託し】を重視した環境創りをすることが重要である.
著者
長田 恭子 長谷川 雅美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 2013-06-10 (Released:2017-07-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

本研究は,自殺企団後のうつ病者を対象として,自殺に至るまでと自殺企図後の感情および状況を明らかにすることを目的とした.うつ病あるいは双極性障害で自殺未遂が原因で入院となった11名を対象にナラテイヴ・アプローチを活用した非構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,自殺前の感情および状況として【常在する自殺念慮】【強い孤独感】【長年にわたる家族への我慢】【価値のない自分】【生への絶望感】【自殺の衝動】の6カテゴリー,自殺後の感情および状況として【死への執着】【自殺の肯定】【医療者への隠された本音】【抑うつ状態の持続】【家族からの疎外感】【先がみえない不安】【自殺念慮の緩和】【再生への意欲の芽生え】の8カテゴリーが抽出された.参加者は,自殺未遂後も【死への執着】や【自殺の肯定】を抱えており,自殺前からの不変的環境下において,容易に自殺念慮が高まる可能性があることが明らかになった.自殺未遂者に対する多職種による包括的支援の必要性が示唆された.
著者
石田 奈那 長谷川 雅美 尾崎 真澄
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.91-102, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
19

東アジア原産のコウライギギTachysurus fulvidraco は2008 年に日本で初めて発見され, 2016 年に特定外来生物に指定された.本種による生態系や社会経済への影響が懸念されているが,その実態はいまだ明らかではない.そこで,本種の侵入が確認された印旛沼を対象に,その生息状況と水産業への影響について調査した.本研究では2018 年5 月から12 月に採捕された試料の生殖腺指数や体サイズの変動から,繁殖期が少なくとも5 月から7 月頃であると推定された.さらに漁業で混獲される個体の多くは,食品への混入リスクが高い当歳魚であることがわかった.また本種による水産業への被害の有無を明らかにするため,アンケート調査を行った.その結果,本種の鋭い棘条によって漁業者や水産加工業者が怪我をするほか,加工原料となる小魚に混入し仕分け作業が増加するといった被害が明らかになった.
著者
田中 浩二 長谷川 雅美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_53-62, 2012-09-20 (Released:2012-10-16)
参考文献数
20

目的:うつ病高齢者の生活世界に根ざした体験を明らかにし,抑うつを緩和するための看護への示唆を得ることである.方法:うつ病と診断され精神科治療を受けている65歳以上の高齢者11名を対象に,非構成的面接を行い,Giorgiの科学的現象学的方法で分析した.結果:6つのテーマが導き出された.うつ病高齢者は,過去の【負の記憶の重み】を抱えながら現在を生きており,さらに【老いによる喪失の重み】【抑うつを伴う身体症状からの脅かし】【他者との相互作用から起こる自己の存在価値の低下と孤独】という老いを生きることに基づく苦しみを体験することで抑うつを深めていた.これらの体験は全て【死の強い意識化】につながっており,それによってさらに抑うつが増強するという悪循環が生じていた.一方では,他者や世界とのつながりが実感できることで【生きる力の再生】を体験し,抑うつを緩和することができていた.結論:うつ病高齢者の体験の基盤には,死にふれて生きることや人としての尊厳が脅かされやすいことへの苦悩があることが考えられた.看護師は,うつ病高齢者が抑うつを抱えながらも【生きる力を再生】できるように働きかけることが重要である.
著者
安達 寛人 塩谷 幸祐 田口 玲子 長谷川 雅美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.40-49, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

本研究は,一豪雪地域で生活を継続している統合失調症を持つ人の経験について当事者の語りから明らかにすることを目的として,精神科デイケアまたは就労支援事業施設に通所している統合失調症者11名を対象に半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析を行った.結果,本研究における豪雪地域で生活する統合失調症を持つ人の経験は,【健康維持の心がけと習慣化】【日常生活維持のための自己決定】【積雪環境への適応】【周囲の人々からの支え】【今後の生活への希望となるものの獲得】【自分の病気と療養生活の受け入れ】【対人関係における配慮】【問題や課題の保留と我慢】の8カテゴリーに分類された.積雪環境において,彼らは自身の気分変調への対処や気持ちの整理をし,周囲のサポートを受けながら【積雪環境への適応】をすることで生活を継続していることが明らかとなった.本研究では,当事者が健康を維持できるよう配慮しながら,積雪に関連した移動手段の確保や余暇活動の支援の重要性が示唆された.
著者
小林 頼太 長谷川 雅美 宮下 直
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.795, 2005

カミツキガメ(<i>Chelydara serpentina</i>)は淡水から汽水域にかけて生息するアメリカ原産の雑食性カメ類である.日本へは,1960年代からペットとして輸入され,近年では全国各地から野外へ逸出した個体が発見されるようになった.千葉県印旛沼周辺では1990年代中頃より本種が頻繁に発見されるようになり,2002年には国内で初めてカミツキガメの定着が確認された.カミツキガメは在来種と比較して大型であり,また多産であることから個体数が増加した場合,生態系へ大きな影響を及ぼす可能性がある. そこで本研究ではカミツキガメの管理を目的とし,まず,本種の印旛沼流域における分布を調査した. 2000年から2004年の期間に印旛沼流域において,罠掛けによる捕獲および聞き取り調査を行った結果,カミツキガメが確認された地点は流入河川である鹿島川及びその支流に偏っており,こうした傾向に顕著な変化は認められなかった.また, 2002, 2003年に合計28個体(オス10,メス18)に電波発信機を装着し,利用区間距離を記録した結果,外れ値の1個体を除いた27個体の平均(±SD)は405±192mであり,性差は見られなかった.また,この傾向は追跡期間(18-597日)とは相関がなかった.外れ値の 1個体に関しては短期間に移動し,最終的に利用区間は約2300mとなった. 次に,消化管および糞内容物から,カミツキガメを支える餌生物について評価した.その結果,カミツキガメは主に水草やアメリカザリガニなど,環境中に豊富にある資源を摂食していた.これらの結果をふまえ,今後のカミツキガメの管理方針について検討を行う.
著者
長田 恭子 長谷川 雅美
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-11, 2013
参考文献数
18

本研究は,自殺企団後のうつ病者を対象として,自殺に至るまでと自殺企図後の感情および状況を明らかにすることを目的とした.うつ病あるいは双極性障害で自殺未遂が原因で入院となった11名を対象にナラテイヴ・アプローチを活用した非構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,自殺前の感情および状況として【常在する自殺念慮】【強い孤独感】【長年にわたる家族への我慢】【価値のない自分】【生への絶望感】【自殺の衝動】の6カテゴリー,自殺後の感情および状況として【死への執着】【自殺の肯定】【医療者への隠された本音】【抑うつ状態の持続】【家族からの疎外感】【先がみえない不安】【自殺念慮の緩和】【再生への意欲の芽生え】の8カテゴリーが抽出された.参加者は,自殺未遂後も【死への執着】や【自殺の肯定】を抱えており,自殺前からの不変的環境下において,容易に自殺念慮が高まる可能性があることが明らかになった.自殺未遂者に対する多職種による包括的支援の必要性が示唆された.
著者
坂田 金正 高田 靖司 植松 康 酒井 英一 立石 隆 長谷川 雅美 蔭山 麻里子 浅川 満彦
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.135-139, 2006-12-30

To study the biogeography on the Japanese insular helminth fauna of Apodemus speciosus (Muridae, Rodentia), thoses from the Izu Islands in Japan were investigated in the present survey. A total 525 individuals of the large Japanese field mice were collected between March, 1984 and June, 1998. From the field mice collected on five islands in the of Izu Island Chain, including Ohshima Island (abbreviated to o), Nii-jima Island (n), Shikine jima Island (s), Kozu-shima Island (k) and Miyake-jima Island (m), 10 parasitic nematode species, namely, Heligmonoides speciosus [o, n, s, k, m; showing the abbreviations of the localities], Rhabditis strongyloides [o, k], Syphacia frederici [o, n, k, m], Heterakis spumosa [o, n, s, k], Subulura suzuldi [k], Rictularia cristata [s, k, m], Physaloptera sp. [o, k, m], Mastophorus muris [n, k], Eucoleus sp. [k], and Trichunis sp. [s], were detected through the present examination. This is the first report of the parasitic nematodes obtained from A. speciosus in the Izu Islands. The nematodes obtained except for Physalopera sp. have been reported already from A. speciosus occurring on the main islands and several offshore islands of Japan. The distribution pattern of homogenic development nematode genera, Heligmonoides and Heligmosomoides, was "Heligmonoides speciosus present, Helib nosomoides kurilensis absent"-type.
著者
樋口 広芳 長谷川 雅美 上條 隆志 岩崎 由美 菊池 健 森 由香
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.69-75, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)

八丈小島は外来種であるイタチや野ネコがいない島として,典型的な伊豆諸島の食物連鎖系が残された唯一の島である.しかし昭和44年全島民が離島の際に残されたノヤギが増加し植生被害が顕在化したため,本研究会がノヤギの駆除を提言し,東京都と八丈町が2001年~2007年に計1137頭のノヤギを駆除した.その後,植生は回復していったが,駆除後の生態学的調査は行われていなかったため,今後の保全と活用に資するための基礎査として本研究を行なった.植物においては,希少種であるハチジョウツレサギ,カキラン,オオシマシュスランが駆除後はじめて確認され,爬虫類では準固有種であるオカダトカゲが他の島と比較してより高密度で生息していることが確認された.鳥類では2013年には準絶滅危惧種のクロアシアホウドリが飛来し,2016年-2017年には2個体,2017-2018年には7個体が巣立ち,同種の繁殖北限地となった.イイジマムシクイやアカコッコ,ウチヤマセンニュウなどの希少種が観察されたほか,準絶滅危惧種のカラスバトも高密度で生息していることが確認され,本島が伊豆諸島において貴重な生態系を有することが示唆された.