著者
松崎 学
出版者
山形大学教職研究総合センター
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 = Bulletin of Teacher Training Research Center, Yamagata University
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-38, 2006-03-21

特定の小学校における教師の大半が,民主的な教師-子ども間関係のあり方とその具体的な対応について,親学習プログラムSTEPを通して学習した。民主的な学級機能が存在する場合の子どもの認知を想定して質問項目が用意された。各学期末において,学級機能と子どもの適応状態を測定した。学年末のデータにもとづく因子分析によって「学級機能尺度」が作成された。また,その因子間関係が共分散構造分析によって検討された。他方,3学期間の学級機能因子構造の変遷についても検討された。その結果,学級機能は,3因子で構成され,教師のかかわり(第Ⅰ因子「子どもの主体性を尊重した教師のかかわり」)を通して,学級集団内での所属感のある関係性(第Ⅱ因子「学級集団への所属感と有能感」)が創出され,その経験の中で,集団凝集性(第Ⅲ因子「集団凝集性」)が高められるように機能していることが明らかになった。また,3学期間の因子構造の変化については,STEP実施後の影響か,2学期で教師のかかわりが一つの因子としてまとまりを見せ,さらにその積み重ねの結果か,集団内における有能感や所属感に関する因子が3学期においてまとまりを見せた。キーワード:学級機能, 親学習プログラムSTEP, 教師のリーダーシップ, 教師-子ども間関係
著者
菅沼 崇 古城 和敬 松崎 学 上野 徳美 山本 義史 田中 宏二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.32-41, 1996
被引用文献数
1

本研究は友人によるサポート供与と評価懸念が生理的, 認知的, および行動的なストレス反応に及ぼす効果を実験的に検討することを目的とした。2 (友人サポートの有無) ×2 (評価懸念の有無) の要因計画で, 被験者は大学生79名。彼らはそれぞれ親しい友人と実験に参加した。サポート供与条件では, 友人は被験者がアナグラム課題を遂行している間, 自発的にそして被験者の要請に応じてサポートを供与した。他方, サポートなしの条件では, 友人はサポートを一切供与しなかった。評価懸念ありの条件では, 友人は被験者が課題を遂行する状況を観察することができた。従属変数としてのストレス反応は, 平均血圧 (MBP), 認知的干渉, および課題正答数で測定された。<BR>その結果, 評価懸念あり条件ではサポート供与の有無の条件間に差はなかったが, 評価懸念なし条件ではサポート供与あり条件の方がなし条件よりMBPが有意に低いことが認められた。したがって, 評価懸念をもたらさない友人のサポート供与はストレスを緩和する効果をもつことが指摘された。
著者
松崎 学
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度および8年度ともに、7月末から8月はじめの1週間、何らかの問題を抱えた子どもちた(小学生)が、STEP(Systematic training for effective parenting)を用いてサポ-ティヴなかかわりをすることができるように訓練されたスタッフとともに過ごした。合宿経験を通して、自分が抱えている問題(ストレッサー)に対する認知的評価や対処行動がどのように変容するかを、特に内藤(1993a,1993b,1994,1997)によって考案されたPAC分析(Personal attitude construct)を用いて追跡検討した。その結果、研究成果報告書に示したように、母親がLD(学習障害)かもしれないという男児(小4)は、他の子どもと比較して他の子どもがわかることが自分にはわからないということに気づき、その悩みを抱えていた。その年のゴールデンウィーク以降不登校気味であったが、合宿後の2学期は、いったん登校するようになったものの、12月の風邪による欠席をもとに3学期は完全な不登校となった。しかし、その問題に正面からぶつかることとなり、結果的には一種の障害受容、ないしは、自己受容を果たし、等身大の自分の生き方を見いだした。そして、4月以降、元気に登校している。その他のケースでも、大半の子どもがストレスフルな状況におかれていて、しかし、子ども自身ではそれを乗り越えることができないほどのストレスであっても、合宿という中でのかかわりを一つの契機として子ども自身が若干の変化を見せ、それを感じた親や教師がその子に対するかかわり方に変化を見せ、本来のサポート関係をつくり出してくれると、子どもは自分の問題としてなんとか乗り越えていく姿を見せてくれると言えよう。そういうことの積み重ねが、ハ-ディネス形成につながっていくであろうと考察された。