著者
松村 将司 宇佐 英幸 小川 大輔 市川 和奈 畠 昌史 清水 洋治 古谷 英孝 竹井 仁 篠田 瑞生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.239-246, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

〔目的〕関節可動域(ROM)と筋力に関して,年代間の相違とその性差を検討すること.〔対象〕若年群,中年群,高齢群に分けられた脊柱,下肢に整形外科的既往のない男女141名.〔方法〕ROMと筋力測定は,股,膝,足関節に対して行った.〔結果〕ROMは,多くの項目が男性は中年群,女性は高齢群で著明に低下し,股関節内転,膝関節屈曲,足関節背屈では性差を認めず,股関節外旋のみ男性が有意に大きく,その他の項目は女性で有意に大きい値を示した.筋力は,多くの項目が男女とも中年群で著明に低下し,若年群の股関節伸展・外転・内転,膝関節伸展・屈曲,中年群の膝関節伸展において男性で有意に大きい値を示した.〔結語〕男女それぞれのROM,筋力の加齢による変化の傾向および性差を考慮した理学療法を実施することが重要である.
著者
松村 将司
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0189, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】良性発作性頭位めまい症(以下,BPPV)は,内耳の耳石器や半規管の障害で発症する疾患である。今回,めまい発症から10日間歩行不可能だったが,徒手的治療によって即時的にめまいが改善し,歩行可能となった症例を担当したので報告する。【方法】症例は60歳代男性である。現病歴は,10日前に運転していたところ突然めまいが出現し,運転困難となり当院に救急搬送され入院となった。その後,MRI,聴力検査など実施したが大きな問題はなく,投薬治療が実施された。しかし,移動は車椅子のみで歩行不可能であった。なお,理学療法の処方は入院10日後であり,診断名はBPPVであった。既往歴は,約1カ月前に追突事故にあっていたが,現在は症状はなかった。主訴は,目の前が回り起き上がれない,右を向くとめまいがする,であった。動作を観察すると,起き上がり時には頸椎を動かさないように,非常にゆっくりと真っ直ぐ起き上がっていた。理学療法を始めるにあたり,BPPVに対する耳石置換法が未実施だったため,担当医と相談の上,実施の許可を得た。本症例は,既往歴に追突事故があったため,最初に頸椎のSecurity testを実施したが,問題は認められなかった。次に,右を向くとめまいがするとの訴えがあったため,水平半規管型BPPVを疑い,Supine roll testを実施した。しかし,若干の気持ち悪さが誘発されるのみであった。そのため,後半規管型BPPVに対するDix-Hallpike testを実施したところ,左のテスト時に著明な回旋性眼振を数秒認め,同時にめまいが誘発された。これより左後半規管型BPPVの可能性が示唆された。【結果】治療として後半規管に対する耳石置換法であるEpley法を左に対して実施した。1セット実施した結果,眼振は消失し,めまいも軽減された。そのため,引き続き3セット実施したところ,めまいはさらに軽減し,起き上がりがスムーズに行えるようになり,直後に軽介助から近位監視レベルでの歩行が可能となった。2日目の再評価では,右を向いた際のめまいが残存していた。Supine roll testでめまいが誘発されたため,水平半規管に対するLempert roll法を実施した結果,めまいは軽減した。3日目には症状改善し独歩可能となっていたため,日常生活での注意事項などを指導し,翌日退院となった。【結論】本症例の場合,水平半規管様のめまいの訴えであったが,実際には後半規管に対するテストで陽性となった。これに対しEpley法で即時的に眼振,めまいが改善し歩行可能となったが,翌日には再び水平半規管様の訴えがあった。BPPVでは耳石置換法による治療後,他の半規管に耳石が入り込むことがあり,また,水平・後半規管に耳石が存在する混合型もある。本症例も両者のどちらかであった可能性があると考える。理学療法士が前庭の理学療法を理解をしていることで,今回のように事前に医師と相談でき,適切な理学療法実施につながると考える。
著者
松村 将司 藤本 修平 栗原 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.197-204, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

〔目的〕小学生バドミントン選手の傷害実態を調査し,疫学的な特徴として学年や性別に応じた疼痛の有無,傷害部位の特性を検証すること.〔対象と方法〕無記名による自己記入式質問紙に回答した男子143名,女子187名に対して,学年や性別に応じた疼痛の有無,傷害部位の関連性を検討した.〔結果〕今現在,疼痛を有しているのは男子24名,女子34名であり,過去に疼痛を経験したのは男子59名,女子79名であった.学年と疼痛の関連について,過去の疼痛経験は高学年が有意に多かった.学年と疼痛部位の関連については,過去の疼痛経験は「足首」が高学年で有意に多かった.〔結語〕小学生バドミントン選手は,足関節に傷害が多く,高学年では傷害を経験する割合が多いことがわかった.
著者
清水 洋治 須永 遼司 宇佐 英幸 市川 和奈 小川 大輔 畠 昌史 松村 将司 竹井 仁
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.200-209, 2016 (Released:2018-09-26)
参考文献数
18

本研究の目的は,条件の異なるスクワット動作遂行中における下肢関節角度の関係と下肢関節間の運動比率の存在,筋活動量の特性を明らかにすることとした。対象は,健常成人男性8 名とした。運動課題は,足圧中心の3 つの異なる条件(1:中間位,2:前方位,3:後方位)での両脚スクワット動作とした。結果,3 条件とも股関節角度に対する膝・足関節角度の関係は,直線回帰式で示せた。股関節角度を基準とした膝・足関節角度の運動比率(膝/股比,足/股比)は,3 条件とも一定に推移したがその値は条件間で異なり,条件1・2 ではそれぞれ1.1,0.4,条件3 では0.9,0.2 となった。筋活動量は3 条件とも,大腿直筋,内側広筋,外側広筋,前脛骨筋の活動が動作開始から終了にかけて有 意に増加した。前脛骨筋のみ動作間の違いがあり,条件2,1,3 の順で有意に活動量が多かった。本研究より,スクワット動作では下肢関節間に一定の運動比率が存在したが,その値は足圧中心位置により異なり中間・前方位より後方位で小さいことが示された。
著者
宇佐 英幸 竹井 仁 畠 昌史 小川 大輔 市川 和奈 松村 将司 妹尾 淳史 渡邉 修
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.155-164, 2011-12-25

健常者24名(男女各12名)を対象に(平均年齢:男性21.3歳女性20.6歳),大腿・骨盤の動きと仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きを,腹臥位と腹臥位・膝関節伸展位での股関節5・10・15°伸展位,15°伸展位から10・20N・mの伸展方向への加重を大腿遠位部に加えた肢位の6肢位で撮像したMRI(Magnetic Resonance Imaging: 磁気共鳴画像)を用いて解析した。結果,男女とも,股関節伸展角度の増加に伴って,大腿は骨盤に対して伸展し,骨盤は前傾した。股関節非伸展側の仙腸関節では前屈,第3/4・4/5腰椎椎間関節と腰仙関節では伸展の動きが生じた。しかし,第3/4腰椎椎間関節を除く各部位の動きは,10N・m加重時と20N・m加重時の間では女性だけにみられた。これらの結果から,他動的一側股関節伸展時の腰椎骨盤-股関節複合体を構成する関節の正常な動きが明らかになった。
著者
松村 将司 宇佐 英幸 小川 大輔 市川 和奈 畠 昌史 見供 翔 竹井 仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100760-48100760, 2013

【はじめに】アライメントは理学療法を行っていくうえで必ず評価するものだが、その基礎となるデータを包括的に示した研究は少なく、特に日本人を対象として年代別に調べたものはない。そこで今回、骨盤と下肢アライメントの年代比較と性差を分析した。【方法】被験者は20-79歳の健常成人141名(男68名、女73名)とし、A群:20-30歳代(男25名、女25名)、B群:40-50歳代(男21名、女25名)、C群:60-70歳代(男22名、女23名)の3群に分けた。平均年齢はA群:男26.6歳、女27.8歳、B群:男49.1歳、女50.3歳、C群:男69.9歳、女69.6歳であった。立位アライメントの測定は、一眼レフカメラ(Canon EOS Kiss X4)を用い正面像、側面像を撮影した。画像解析にはシルエット計測(Medic Engineering社)を用い、矢状面:骨盤前傾角度・膝伸展角度、前額面:骨盤傾斜角度・大腿脛骨角度(以下、FTA)・大腿四頭筋角度(以下、Q-angle)の解析を行った。navicular drop test(以下、NDT)は計測器を作成し測定した。立位での踵骨角度、腹臥位での大腿骨前捻角の測定はゴニオメーターで行った。分析には、各年代の男女それぞれにおいて左右の測定値に有意差がないことを確認し左右の平均値を用いた。結果は、二元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)で処理し、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は研究安全倫理委員会の承認を得た上で、被験者には事前に研究趣旨と方法について説明した後、書面での同意を得て実験を行った。【結果】括弧内に平均値を、性差は男:女の順に示す。骨盤前傾角度とFTAは交互作用を認め、年代と性別に主効果を認めた。骨盤前傾角度は男性には年代差はなく、女性においてA群(17.5°)とB群(17.7°)がC群(13.7°)より有意に大きく、性差はA群(14.2°:17.5°)とB群(13.6°:17.7°)で女性が有意に大きかった。FTAは、男性には年代差はなく、女性においてC群(176.5°)がA群(174.5°)とB群(173.4°)より有意に大きく、性差はA群(178.1°:174.5°)とB群(176.7°:173.4°)において男性が有意に大きかった。以下の項目は交互作用を認めなかった。前捻角、Q-angle、膝伸展角度については、年代と性別に主効果を認めた。それぞれ、A群(10.6°、17.8°、180.8°)とB群(11.0°、19.0°、179.8°)がC群(8.3°、14.8°、176.5°)より有意に大きく、性差は女性が有意に大きかった(7.5°:12.3°、15.2°:19.1°、177.4°:180.7°)。NDTは性別に主効果を認め、男性が有意に大きかった(9.2mm:8.2mm)。骨盤傾斜角度、踵骨角度は有意差を認めなかった。【考察】年代比較の結果から、男性には年代による差がみられず、女性では60-70歳代に骨盤前傾角度が小さくなり、FTAが大きくなった。また、前捻角、Q-angle、膝伸展角度については男女含めた全体の平均として60-70歳代に小さくなっている。前捻角が小さいと股関節が外旋し、運動連鎖としてQ-angleは小さくなるため、以上の結果から、健常成人は60-70歳代に膝内反・屈曲傾向が強まり、特に女性では骨盤後傾と膝内反が強まることが示された。次に性差をみると、A群とB群において骨盤前傾角度は女性が、FTAは男性が大きく、C群では有意差を認めなかった。また、前捻角、Q-angle、膝伸展角度については、従来から言われている通り女性のほうが大きい結果を示した。そして、足部の回内程度を表すNDTは、男性のほうが大きい値であった。これらから、性差を比較すると男性は股関節外旋、膝内反・屈曲、足部回内位、女性は股関節内旋、膝外反・伸展位となっており、年代比較と同様、60-70歳代に女性の骨盤後傾、膝内反が強まることで、それ以前に存在した男女差がなくなったと考える。以上から、健常成人の場合、男性のみでは年代によって変化は現れないが、女性では60-70歳代に変化が現れることがわかった。特に骨盤前傾角度とFTAについては、女性特有の変化として注目する必要があると考える。また、男女含めた健常成人では股・膝関節に関連する項目が60-70歳代に変化しており、この年代がアライメントに変化が生じ始める重要な年代であると考える。【理学療法学研究としての意義】日本人における年代別間の骨盤と下肢アライメントを網羅して比較したデータはなく、健常成人における基礎データとなると考える。
著者
宇佐 英幸 竹井 仁 畠 昌史 小川 大輔 市川 和奈 松村 将司 妹尾 淳史 渡邉 修
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.155-164, 2011-12-25

健常者24名(男女各12名)を対象に(平均年齢:男性21.3歳,女性20.6歳),大腿・骨盤の動きと仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きを,腹臥位と腹臥位・膝関節伸展位での股関節5・10・15°伸展位,15°伸展位から10・20N・mの伸展方向への加重を大腿遠位部に加えた肢位の6肢位で撮像したMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)を用いて解析した。結果,男女とも,股関節伸展角度の増加に伴って,大腿は骨盤に対して伸展し,骨盤は前傾した。股関節非伸展側の仙腸関節では前屈,第3/4・4/5腰椎椎間関節と腰仙関節では伸展の動きが生じた。しかし,第3/4腰椎椎間関節を除く各部位の動きは,10N・m加重時と20N・m加重時の間では女性だけにみられた。これらの結果から,他動的一側股関節伸展時の腰椎骨盤-股関節複合体を構成する関節の正常な動きが明らかになった。