著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11783, (Released:2020-09-08)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
河上 淳一 烏山 昌起 宮崎 優 青木 美保 進 訓央 松浦 恒明 原口 和史 藤戸 郁久 森口 晃一 宮崎 かなえ 日野 敏明 曽川 紗帆 中村 雅隆 宮薗 彩香 工藤 僚太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cd0841, 2012

【はじめに、目的】 腱板断裂術後は再断裂が問題である。近年の再断裂率を下げる要因の報告では、リハビリテーション開始の遅延や装具装着期間延長が推進されている。当院での腱板断裂術後は、装具装着は昼夜問わず3~8週装着、退院は3~4週としており、リハビリテーション開始・装具装着期間延長を検討している。装具装着延長になると、安全性確保の半面で退院後の自宅生活に制限をきたす。特に入浴は、更衣・移動・洗体・洗髪の動作を通常装具なしで行う必要がある。入院時の入浴は、三角巾・ペットボトルなどを利用した簡易装具にて対応をしていた。しかし、自宅での介助なし入浴には、三角巾で被覆される面積が大きいために洗体が困難、三角巾の衛生面が問題になると看護師により指摘を受けた。さらに、症例からも簡単かつ安全に入浴できるようにしたいとの要望があった。入浴用装具購入も検討したが、一般に販売されているものは散見されなかった。そのため、I安全性の向上、II衛生面の向上、III安価の3項目を充たすことで、自宅でも安全に入浴可能な入浴用装具開発を目的にて本検討を実施した。【方法】 試作品(以下:1号)を作成し、使用方法を看護師に説明し腱板断裂術後症例の入浴時に使用させた。その中で、看護師・症例よりあがった問題点を随時改良していった。1号は、EVA樹脂素材のスイムヘルパー(以下:スイムヘルパー)とポリ塩化ビニル(以下:塩ビ)のパイプと紐2mを使用した。スイムヘルパーは、直径15cm・高さ10cmの円柱を3個、塩ビパイプは直線タイプの長さ40cm・直径17mm、紐2mを使用した。スイムヘルパー3個の中央に塩ビパイプを通し、塩ビパイプの中に紐を通すことで、通常装具のように肩から吊るすようにした。部品代は約1800円だった。【説明と同意】 本装具作成にあたって、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た。【結果】 結果として、1号から改良を加えて6号の装具までを作成した。作成の中でI安全性の問題となった点は、A前腕の下方制動性がないB手指・手関節周囲の支えがないC着脱に患肢を動かす必要がある D塩ビパイプが抜け落ちる点だった。II衛生面の問題となった点は、E塩ビの中を通した紐が乾かない点だった。III安価の問題点は、特になかった。【考察】 結果から得られたA~Eの問題点は、6号作成の過程で解決させた。Aは、腱板断裂術後の症例では一般に内転・内旋方向で腱板縫合部の伸張が加わり、下方・内転方向を自身で制御すると腱板に収縮が起こり、再断裂の可能性を高め問題となる。そこで、スイムヘルパーを通す直線の塩ビパイプを前・中・後の3本に分けた。中と後の塩ビパイプ間には、塩ビの三又継手を取り付けし、その継手外側には10cmのパイプを取り付けた。この工程で前腕を支持する部分を作成した。さらに、塩ビパイプに直接前腕を乗せると、圧を一点で受けるので、発泡ポリエチレン性カバーを装着した。Bは、A同様の問題に加えて、通常装具のように手関節を安定させる部品が付いていなかったので、不安感を感じる症例が多かった。そこで、直線の塩ビパイプ先端には、塩ビの直角ジョイント4個と10cmの塩ビパイプ3本で手指・手関節を支える部分を作った。これらの部品は、ジョイント部が可動することで体格に合わせた位置で手関節部を固定できるようにもなった。Cは、紐をかぶるように着脱するので、患肢を動かす必要があった。そこで、直線パイプ前方後方にドリルにて穴を開け、リング状の部品をつけた。紐は両先端にカラビナをつけた。これで、患肢を台に固定した状態でも紐が簡単にまわせるようになった。D塩ビパイプが抜け落ちるのは、Bで可動できる部品を使用した為に、パイプが抜け落ちる可能性が出現し問題点となった。そこで、塩ビパイプの中に結束バンドを通しパイプが抜け落ちないように工夫した。Eは、塩ビパイプの中に通した紐が乾きにくいことが問題となった。この点は、Cの問題点改善で同時に解決した。以上のA~Eの5点を中心に改善することで、I・IIの目的を達成できた。また、IIIに関しては、当初より問題となっていなかったが、部品を見直すことで1400円程度になった。この入浴用装具を利用することで、早期退院かつ装具延長になっても自宅で安全で安心して入浴できるようになると考えている。しかし、現在の入浴用装具は、解剖学・運動学的観点と看護師・症例・理学療法士の主観的意見で作成した。そこで、今後は入浴用装具の違いがどのように腱板に負荷となるかを確かめ、更に改良していきたい。【理学療法学研究としての意義】 本作成過程の意義は、理学療法士が他職種との関わりの中で、新たな職域を拡大するための一助となると考える。
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.587-592, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。
著者
山口 雄大 進 訓央 兼川 雄次 松浦 恒明 圓尾 明弘
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.96-100, 2020-03-25 (Released:2020-04-30)
参考文献数
5

脛腓骨骨折術後感染再燃にiMAP(intra-medullary antibiotics perfusion)が有効であった1例を経験したので報告する.症例は61歳男性.階段を踏み外した際に左足を捻ってついて受傷.エックス線写真で関節面に骨折線のある脛腓骨遠位骨幹部骨折を認め,locking plateとK-wireによる固定を行った.術後1か月時に創部より排膿を認め経静脈的抗菌薬投与開始,症状軽快し以降は血液検査上CRP陰性であった.術後10か月時に創部より排膿再発し,皮膚欠損も認めた.深部感染を併発したと判断し,抜釘・掻爬自家骨移植・一期的に髄内釘に置換し,脛骨にiMAP-pinを2本と皮下にセイラムサンプチューブを留置した.ゲンタマイシン40mg/50ml生理食塩水/dayを3箇所から持続注入し,創部より持続陰圧を行った.2週間後にiMAP-pin抜去し,アンピシリン/スルバクタム点滴投与を2週間継続したところ,創部は徐々に閉鎖していった.以降感染再燃所見は認めず,疼痛なく歩行可能で経過している.圓尾らが開発したiMAP-pinは従来使用されていた東北大式骨髄針よりも抜けにくい構造となっており,骨接合術後の感染に対する治療法として有効であった.
著者
李 容承 松浦 恒明 進 訓央 兼川 雄次 谷口 秀将
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.40-42, 2016-03-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
12

3例と症例数は少ないが,肩関節前方脱臼に対して上腕近位部を外側に水平移動させることで上腕骨頭が関節窩の前縁を越えるようにして整復することができた.本法は,脱臼時の肢位のまま整復するため,侵襲が少ないと言える.多くの場合,救急外来における肩関節前方脱臼の整復法の第一選択は前方挙上法で,第二選択がStimson法やヒポクラテス法であるが,Stimson法は腹臥位・長い整復時間を要するし,ヒポクラテス法は骨折や腋窩神経損傷を起こす恐れがある.第一選択の前方挙上法で整復できない場合,第二選択として本法を試すことは有意義かもしれない.