著者
瀧井 一博 大久保 健晴 勝部 眞人 植村 和秀 永井 史男 谷川 穣 前田 勉 國分 典子 五百籏頭 薫 小川原 正道 松田 宏一郎 島田 幸典 佐野 真由子 塩出 浩之 福岡 万里子 中村 尚史 牛村 圭 今野 元 山田 央子 清水 唯一朗 岩谷 十郎 奈良岡 聰智 Breen John
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

明治維新から150年が経過した。日本は今、明治日本という西洋近代に対する稀有なキャッチアップを遂げた自らの歴史的経験を振り返り、その経験を学術的に分析して、その功罪を人類の歴史的遺産として今後似たような歩みをするかもしれない世界中の他の国々や地域に対して提供する使命を有しているといえる。本研究課題においては、明治日本の世界史的意義を学際的かつ内在的に把握するための研究ネットワークを構築することが掲げられた。そのために、海外の研究者とも積極的に連携して、明治史のグローバルな関心と日本の学界を接合することを促進した。
著者
米原 謙 赤澤 史朗 出原 政雄 金 鳳珍 區 建英 松田 宏一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、近代日本のナショナル・アイデンティティの歴史的形成と変容を、中国や韓国と関連づけて、政治思想史の観点から明らかにしようとしたものである。この三国は、ともに「欧米の衝撃」によって国民国家形成の課題に直面したが、日本だけがいち早く欧米の政治文化を受容し、1890年には立憲政度を導入した。植民地となった韓国や、侵略と内戦によって国家統一に時間を要した中国に比べると、日本は順調に国民国家形成に成功したといえる。しかし日本の立憲主義は、「国体論」という一種の「市民宗教」(ルソー)とセットだったので、1930年代に国体論による立憲主義への逆襲が起こった。つまり政治思想や政策過程の内面まで立ち入ると、近代日本の政治は常に興亜論(アジア主義)-脱亜論、伝統-近代の間を動揺したことがわかる。こうした分裂の構造を、一方ではナショナル・アイデンティティという分析ツールを使うことで、他方では中国や韓国との構造的連関によって明らかにするのが、本共同研究の目的意識である。C・テイラーによれば、アイデンティティの形成は常に「重要な他者」を媒介にしている。近代日本にとって「重要な他者」はまず欧米だったが、中国や韓国は、日本にとって近代化のための反面教師であるとともに、ナショナル・アイデンティティの根拠となる「重要な他者」でもあった。本共同研究の参加者は、国体論・アジア主義・国粋主義・ナショナリズムなどを切り口にして、こうした問題にアプローチした。