著者
田畑 泰彦 林 壽郎 筏 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、細胞の分化増殖を促す細胞増殖因子を材料とうまく組み合わせることにより、積極的に細胞を増殖させる機能を備えた生体材料を開発することである。つまり、細胞増殖因子の徐放化技術とこれまでの人工材料とを複合化することによる生体材料の創製を試みる。そのため、その第一段階としての、細胞増殖因子の徐放化の検討を行った。この徐放化技術により、増殖因子のin vivoでの安定性の向上、ならびにその作用を有効に発揮させることができる。そこで、平成6年度には、増殖因子を徐放化するための高分子ハイドロゲルの調整、ならびにハイドロゲルからのモデルタンパク質の徐放化を調べた。タンパク質はその環境の変化により容易に変性失活することから、まず、架橋ハイドロゲルを作製し、その後、タンパク質をハイドロゲル内に含浸させる方法によりタンパク質含有ハイドロゲル製剤を得た。平成7年度においてはハイドロゲル用の生体内分解吸収性の高分子としてゼラチンを取り上げ、グルタルアルデヒドにて化学架橋することによりゼラチンハイドロゲルを作製した。これらの架橋試薬ならびにゼラチンの濃度を変化させることにより、ゼラチンハイドロゲルの分解性はコントロール可能であった。ハイドロゲルからの塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)の徐放を試みたところ、ハイドロゲルの分解とともにbFGFが徐放され、その徐放パターンがハイドロゲルの含水率、つまり分解性により変化することがわかった。本年度はbFGF含浸ゼラチンハイドロゲルから徐放されるbFGFの生物活性について検討した。その一つの方法として、bFGF含浸ゲルをマウス皮下に埋入した後の血管新生効果を評価した。bFGFの水溶液投与群においては全く血管新生が認められなかったのに対して、bFGF含浸ハイドロゲルの周辺には有意な血管の新生が認められ、ハイドロゲルから徐放されたbFGFの生物活性が残存していることが確かめられた。また、微粒子状のゼラチンハイドロゲルを用いた場合にも、同様にbFGFの血管新生作用の増強が見られた。
著者
林 壽郎
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.257-261, 2001-03-05 (Released:2011-08-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1
著者
古田 雅一 浜崎 宏治 Wirkner Sandra CONSTANTINOIU Elena 高橋 克忠 林 壽郎
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 = Food irradiation, Japan (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.24-28, 2002-09-30
被引用文献数
2

食品には大腸菌群、細菌を中心とした一般生菌、カビ、酵母など多種多様な微生物汚染を受ける可能性があり、これらの中で病原性のある食中毒菌を殺菌するためにγ線、電子線を用いた放射線殺菌がすでに世界各地で実用化されている。例えば香辛料の照射は100000トンに達し、米国においては2000年5月以来γ線、電子線を用いた冷凍牛肉パテ(ハンバーガー用)の実用照射が開始されている。さらにわが国においても香辛料照射の許可申請が成されている。しかしながら、食品の汚染微生物の放射線感受性は多様であり、また照射後の食品からこれらの微生物を抽出する際の効率など、許可された線領域において個々の食品の汚染度に見合った適切な殺菌線量を決定するのは汚染菌の種類や量が比較的少ない医療用具に比べて困難であることが予想される。我々は微生物が増殖する際、発生する微少な熱量を試料24個の同時計測が可能な高感度の熱測定装置で検出し、(60)COガンマ線照射後の酵母、大腸菌、芽胞の増殖パターンを図式化した。その結果、放射線量を増加させた場合、比較的低線量の場合には増殖時の熱発生のパターンは変化せず、増殖開始時間の遅れ(ta(i))が増大する。すなわち放射線の効果が殺菌的に働いていること、また高線量になるに従って増殖開始後の熱発生量増加の度合い(増殖速度定数:μi)が減少する、すなわち静菌的な効果も同時に現れる。