著者
山口 裕之 梶原 昭博 林 尚吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.567-579, 2000-04-25
被引用文献数
3

小型航空機やヘリコプタが比較的低高度で航行するとき, 山林や建物等の前方障害物を検地しクリアな航路を確保することは, 衝突事故防止において極めて重要である.このような障害物のうち, 特に高圧送電線は背景とのコントラストが得にくいため視認性が悪く, これまで多くの接触事故が報告されている.本論文では, 航行における前方障害物検知に対してミリ波帯レーダセンサを想定し, 物理光学法(PO)を用いて高圧送電線のミリ波帯レーダ反射断面積(RCS)を検討している.まずPOの有効性を確認するために, 電波暗室内で取得した94GHzにおけるRCSと比較・検討する.次に, 送電線はアルミニウム線をより合わせたより線形状(周期的な表面特徴)をしていることに着目して, より線形状がRCSに与える影響について明らかにする.実際, 送電線はレーダ照射範囲よりも長い.そこで本計算では, アンテナの指向性をガウシアン分布と近似することによって上記の状況を模擬し, RCSを算出している.
著者
飯島 幸人 浜田 悦之 鈴木 裕 荒井 郁男 鈴木 務 林 尚吾 大津 皓平
出版者
東京商船大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

船舶の知能化に関連する分野は極めて広く, ただ単に船舶自身が知能を持つだけでは安全なる運航はできず, 陸上からの支援や, 海図データ, 海気象データなど数多くのデータの収集と伝送などが必要となる. 本研究ではまず船舶自身の知能化に関する基本的問題を研究し, 大よその指針を得ることができた. 本研究は1988年オーストラリアで開催されて国際航法学会で発表され, 世界中から注目されるところとなった. また航海, 特に知能化無人航行に必要であるディジタル海図, いわゆる電子海図については, 海岸線や等深線までの距離計算の高速処理のためには海図データのフォーマットを緯度経度表示ではなくラジアン表示の方が良い. また, レーダ映像との比較には大圏図法で行うべきだが高速処理には特に高精度を必要としないなら漸長緯度図法の方が良い. 高度知能化船では, 海象気象情報は正確で高精度であることが要求されるが, 海洋観測衛星(MOS-1)の現状の性能では不充分である. MSRアンテナパターンと偏波回転によるひずみ補正の基礎的研究を行った. その結果偏波回転の影響を補正した上で逆フィルタをかければ, 沿岸部や島などにおいてメインローブのみの画像を上回る分解能が得られ, しかも海域の輝度温度もメインローブのみの画像に近いものとなった. これらを総合した実験は, 実験規模の制約から一部の実験にとどめたが初期の目的は達成できた. 今後, 海運界と造船界では現状の改革の面から知能化少人数船の建造要求は強くなり, 研究が盛んになると思われるが, その際本研究がその基礎をなすものとして大いに参照されることと思われる. しかし研究は完成したものではないので, かえって残された問題や今後鋭意研究しなければならない事項が数多く浮上してきているので, さらに一層の研究を続けていく予定でいる.
著者
林 尚吾 桑島 進 HAYASHI Shogo
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

船舶においてレーダを用いる場合には雑音とみなされる海面からの反射は、それをリアルタイムに除去するための方法はまだ確立されていない。実現のためには、船舶レーダの信号に含まれる波浪の特徴を詳細に検討し、波の向き、高さなとの状況を考慮した信号処理の開発が必要となる。視点を変えれば、レーダ信号から波に関する情報が得られる可能性もある。これまでは各研究者独自に大きな労力を払って収集してきたレーダのデータを、ここでは、個々の目的に応じた信号処理に利用できるデータのセットとしてまとめた。統一フォーマットでまとめることにより、各研究者の信号処理アルゴリズムの定量的な比較・評価にも利用できるものである。観測は新潟県上下浜周辺および弥彦山周辺、静岡県御前崎周辺および駿河湾、神奈川県相模湾および東京湾、富山県新湊周辺、千葉県九十九里浜、茨城県霞ヶ浦などで行なった。さまざまな気象・海象状況において、波に対する向きおよび海面からの高さなどを変えて収集・記録した。レーダ信号の記録と同時に、気象・海象情報、波浪状況の記録も行なっている。レーダ信号は方位方向に約0.1度間隔、距離方向に15cm間隔を基本として収集したため膨大な量のデータとなったが、バイナリーデータでCR-RあるいはDVDに記録することにより比較的容易に提供可能な形式とすることができた。また一部のデータはインターネットによる公開、配布も可能である。