- 著者
-
柳本 高秀
- 出版者
- 北海道旭川北高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動の理解に関する理解度を調査し、また、これまでに行った授業実践の結果を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小、中学生、高校生に対する質問紙調査、面接調査を行った。児童・生徒が持つ、「月の満ち欠け」、「金星の満ち欠け」、「惑星の視運動」に対する理解の特質を、これらの調査から明らかにした。これまでの授業実践の評価に基づき、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。中・高校生の日食・月食、月の満ち欠けに関する調査からは、多くの生徒に、月の満ち欠けと食現象に多くの混合した誤認識が存在することが明らかとなった。また、空間概念を形成する具体的内容である「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、2割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約75%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」・「惑星の視運動」に関する授業実践でも、物体によってできる影と物体そのものにできている陰の2種類のかげの区別やモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に、相対運動を1つの視点だけでなく、多視点で見る視点移動能力の発達傾向が見られ、空間認識能力の高まりが確認できた。