著者
福田 秀志 高山 元 井口 雅史 柴田 叡弌
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.265-274, 2008-11-30
参考文献数
30
被引用文献数
1

カメラトラップ法を用いて、大台ヶ原各地域の哺乳類相の現状と、ニホンジカの生息場所の季節変化について調査した。東大台ヶ原(以下、東大台)に9地点、大台ヶ原南東部(以下、大台南東)に7地点、西大台ヶ原(以下、西大台)に3地点の合計19地点に、2002年の6月下旬から11月下旬と2003年の4月下旬から9月上旬まで自動撮影装置を設置した。その結果、ニホンザル、ムササビ、キツネ、タヌキ、テン、アナグマ、イノシシ、ニホンジカの4目8種と未同定のコウモリ類が撮影された。各調査地域のカメラ稼動延べ日数(総カメラ日)は、東大台で913日、大台南東で1,561日、西大台では729日だった。全体では、ニホンジカが圧倒的に多く2,837回(全哺乳類の出現回数の95.2%)を占め、次いでニホンザルの93回(3.1%)で、他の哺乳類は少なかった。とくに、東大台ではニホンジカが2,043回(99.0%)を占めた。一方、大台南東・西大台では、ニホンジカ以外の哺乳類がそれぞれ12.6%、16.3%と一定割合を占めた。ムササビは大台南東のみで、アナグマは西大台のみで撮影された。また、東大台やそこに近接する地点では、シカ以外の哺乳類が全く撮影されない地点も認められた。ニホンジカは、東大台では春季から夏季に増加し、秋季には減少する傾向が認められた。一方、大台南東、西大台では、東大台で撮影頻度が低下する秋季に増加する傾向が認められた。以上のことから、ミヤコザサ草原が広がる東大台では、ニホンジカが圧倒的に優占する単調な哺乳類相となっていると考えられた。また、大台南東や西大台では東大台に比べ哺乳類相は多様と考えられたが、その生息密度は高くないと考えられた。
著者
福田 秀志 高山 元 井口 雅史 柴田 叡弌
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.265-274, 2008-11-30 (Released:2018-02-09)
参考文献数
30
被引用文献数
5

カメラトラップ法を用いて、大台ヶ原各地域の哺乳類相の現状と、ニホンジカの生息場所の季節変化について調査した。東大台ヶ原(以下、東大台)に9地点、大台ヶ原南東部(以下、大台南東)に7地点、西大台ヶ原(以下、西大台)に3地点の合計19地点に、2002年の6月下旬から11月下旬と2003年の4月下旬から9月上旬まで自動撮影装置を設置した。その結果、ニホンザル、ムササビ、キツネ、タヌキ、テン、アナグマ、イノシシ、ニホンジカの4目8種と未同定のコウモリ類が撮影された。各調査地域のカメラ稼動延べ日数(総カメラ日)は、東大台で913日、大台南東で1,561日、西大台では729日だった。全体では、ニホンジカが圧倒的に多く2,837回(全哺乳類の出現回数の95.2%)を占め、次いでニホンザルの93回(3.1%)で、他の哺乳類は少なかった。とくに、東大台ではニホンジカが2,043回(99.0%)を占めた。一方、大台南東・西大台では、ニホンジカ以外の哺乳類がそれぞれ12.6%、16.3%と一定割合を占めた。ムササビは大台南東のみで、アナグマは西大台のみで撮影された。また、東大台やそこに近接する地点では、シカ以外の哺乳類が全く撮影されない地点も認められた。ニホンジカは、東大台では春季から夏季に増加し、秋季には減少する傾向が認められた。一方、大台南東、西大台では、東大台で撮影頻度が低下する秋季に増加する傾向が認められた。以上のことから、ミヤコザサ草原が広がる東大台では、ニホンジカが圧倒的に優占する単調な哺乳類相となっていると考えられた。また、大台南東や西大台では東大台に比べ哺乳類相は多様と考えられたが、その生息密度は高くないと考えられた。
著者
安藤 正規 柴田 叡弌
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.131-136, 2006-04-01 (Released:2008-01-11)
参考文献数
45
被引用文献数
6 6

本総説において, シカ類による樹木剥皮発生の特徴とシカ類が剥皮を行う要因について総合的に検討した。シカ類は剥皮をする際に樹種を選択しており, この選択性は森林の樹木構成に影響を与えていた。世界中の多くの研究報告においては, シカ類による剥皮は冬季の餌不足が原因であるとされていた。一方, いくつかの研究報告においては冬以外の季節に発生する剥皮について, 実験的な証明はないものの, ルーメン胃内環境の適正化を目的として樹皮を採食しているという可能性が示唆されていた。今後この点について明らかにしていくためには, 飼育シカ類を用いた実験研究および野生シカ類のルーメン胃内環境の詳細な調査が不可欠である。また, 「シカ類が反芻動物としての消化生理をもつ」という視点をもつことは, シカ類の採食生態を研究していく上で新たな発想を与えてくれるであろう。
著者
佐藤 宏明 神田 奈美 古澤 仁美 横田 岳人 柴田 叡弌
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.185-194, 2005
参考文献数
31
被引用文献数
6

糞粒法によってニホンジカの生息密度を推定するためには,単位面積当たりの糞粒数を測定する他に,1頭1日当たりの排糞回数と排糞粒数,および糞粒消失速度を知る必要がある.しかし,これらの値は地域や植生,季節で異なるにもかかわらず,労力上の問題から他地域で得られた値で代用されている.そこで本研究では奈良県大台ヶ原にて糞粒法による信頼度の高い生息密度推定値を得ることを目指し,2001年5月から11月までの月1回,1頭1回当たりの排糞粒数を調査するとともに,原生林,ササ草地,移行帯の三植生で糞粒消失速度を測定した.原生林とササ草地では固定区画を設定し,月毎の加入糞粒数を数えた.以上の測定値と既存の1頭1日当たりの排糞回数を用いて原生林とササ草地における生息密度を推定した.さらに,糞粒消失速度と気温,降水量,糞虫量との関係も調べた.その結果,糞粒消失速度は植生と季節で大きく異なり,気温,降水量,糞虫量とは無関係であった.これまで報告されている視認にもとづく区画法による生息密度推定値と比較したところ,糞粒法による推定値は過大であり,また植生と季節によっても大きく変動していた.これらの結果をもとに糞粒法による生息密度推定の問題点を検討し,大台ヶ原におけるシカの個体数管理のための望ましい生息数調査法を提案した.
著者
田中 美江 柴田 叡弌
出版者
名古屋大学大学院生命農学研究科附属演習林
雑誌
名古屋大学森林科学研究 (ISSN:13442457)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-6, 2006-12

人工林の構造の相違と野ネズミの生息状況との関係および人工林内での野ネズミの利用環境,すなわち微生息環境に対する選好性を明らかにし,これらを野ネズミの格間で比較した.捕獲された野ネズミはアカネズミ,ヒメネズミ,およびスミスネズミであった.アカネズミは森林構造の相違に関わらず生息し,さらにその中で様々な微生息環境を利用していた.ヒメネズミは森林構造の相違に関わらず生息していたが,人工林内において倒木の多い場所などを高頻度で利用していたOスミスネズミは沢沿いの調査区のみで捕獲され,地表堆積物の豊富な環境を高頻度で利用していたoLたがって,人工林における野ネズミの生息条件およびその中での微生息環境に対する選好性は種によって異なると推察された。
著者
森 照貴 三宅 洋 柴田 叡弌
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.377-386, 2005
参考文献数
52
被引用文献数
2

岐阜県北部を流れる2つの小規模河川において、河畔林が現存する河川区間(現存区)と河畔林が伐採された河川区間(伐採区)との間で環境特性および底生動物の群集構造を比較した。相対光量子束密度および底生動物の生息密度は現存区よりも伐採区で高かった。刈取食者および捕食者に属する底生動物の生息密度は現存区より伐採区で高かった。光量の増加に伴う付着藻類の一次生産量の増加が、底生動物(特に刈取食者)の増加を引き起こしたものと考えられた。付着藻類量は伐採区よりも現存区で多かった。刈取食者の生息密度が増加するに伴い摂食圧が増大したために、付着藻類の現存量が減少したものと考えられた。河畔林の部分的な伐採により底生動物の群集構造が変化していた。伐採による群集構造の変化は、コカゲロウ属の生息密度の変化と強い関係があるものと考えられた。河畔林の部分的な伐採は、光環境の改変を介して、高次の栄養段階に属する底生動物の群集構造に影響を及ぼすことが明らかになった。