著者
木下 晃彦 山中 高史 小長谷 啓介 仲野 翔太 野口 享太郎 古澤 仁美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.684, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

トリュフ子実体の発生過程には土壌条件など非生物要因だけでなく、菌類やバクテリアなどの生物要因も関与すると考えられる。本研究では、日本の白トリュフとして知られるホンセイヨウショウロ(Tuber japonicum)の子実体発生要因の解明に向け、子実体発生地の微生物相(菌類、バクテリア)を明らかにすることを目的とした。2017年に三重、大阪、岡山の子実体発生地において、子実体直下の土壌コア(直径5cm、深さ5cm)を5地点採取した。また近接する非発生地からも土壌を採取した。土壌は冷蔵して持ち帰り、有機物や礫を除いた後、全ゲノムDNAを抽出した。菌類はITS2領域、バクテリアはV3-V4領域を対象に、メタゲノムシーケンシングを行った。得られた塩基配列はクリーニング後、情報解析を行った。その結果、バクテリア相は全調査地でRhizobiales, Acidobacteriales等が優占し、発生・非発生地間でおよそ75%の分類群が共通した。一方、菌類相は調査地間および発生・非発生地間で異なり、非発生地ではトリュフ菌のみならず他の外生菌根菌も少なかった。発表では各調査地の環境要因の結果を踏まえ、ホンセイヨウショウロ生育適地について考察する。
著者
古澤 仁美
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.78-96, 2015-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
65
被引用文献数
1
著者
藤本 潔 酒井 寿夫 森貞 和仁 古澤 仁美 中嶋 敏祐 布施 修 小林 繁男
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-90, 1998-12-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

1984年の長野県西部地震に伴い発生した御岳岩屑流は,森林域にも多大な被害をもたらした。この岩屑流発生から10年目の植生発達状況と立地環境との関係を明らかにするため,岩屑流堆積物が薄く堆積する標高約2000mの小三笠山北側の緩傾斜地(田の原)と,厚さ数10mの岩屑流堆積物で埋積された標高約950mの王滝川谷底部(氷ヶ瀬)にトランセクトを設け,地形断面測量,堆積物の粒径分析および植生調査を行った。波長数10〜100m程度,振幅10m程度の波状起伏がみられる田の原では,流水の影響を受けやすい谷部で粒径2mm以下の細土含有率や細土中のシルト・粘土含有率に顕著なばらつきがみられ,細土がほとんど存在しない箇所で出現種数・被度とも低い値を示すものの,細土含有率が5%程度以上ある地点では,微地形条件に関わらず,これらは同様の値を示した。氷ヶ瀬では岩屑流堆積面が現河床を含め3段に段丘化しており,岩屑流堆積後,河川による侵食作用を被ることなく安定した地形環境下にあった上位面が出現種数・樹高・被度のいずれも最も高い値を示した。これらの結果は,流水による侵食プロセスが初期植生発達過程に大きな影響を及ぼしていることを示す。岩屑流発生後,同じ期間を経ていると考えられる田の原と氷ヶ瀬上位面を比較すると,樹高およびそれぞれの種の被度百分率の合計値のいずれも標高の低い氷ヶ瀬上位面の方が高い値を示した。
著者
伊東 宏樹 日野 輝明 高畑 義啓 古澤 仁美 上田 明良
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.443, 2004 (Released:2004-07-30)

奈良県大台ヶ原において野外実験をおこない、ニホンジカ、ネズミ類、ミヤコザサの3つの要因が、樹木実生の生存に対してどのような影響を及ぼしているのかを評価した。1996年に、ニホンジカ、ネズミ類、ミヤコザサのそれぞれの除去/対照の組み合わせによる8とおりの処理区を設定し、その中に発生してきた、ウラジロモミ(1997年、2002年に発生)、アオダモ(1998年、2002年)、ブナ(1999年)の5つのコホートについて、マーキングして生存状況を追跡した。この結果を元に、それぞれのコホートの実生の生存時間について各処理の間で差があるかどうかをログランク検定により検定した。その結果、(1)すべてのコホートに共通して、シカ除去処理区におけるミヤコザサが生存時間に対して負の影響を及ぼしていることがわかった。また、(2)2002年のウラジロモミを除くコホートでは、ササ除去区において、シカが負の影響を及ぼしていた。一方、(3)アオダモ(1998年、2002年)およびウラジロモミ(2002年)の3つのコホートに対しては、シカの影響は、ササ残存区においては正の効果をもたらしていた。シカ除去処理をおこない、ミヤコザサを残存させた処理区では、ミヤコザサが急速に回復して林床を覆うようになった。(1)の効果は、このためであると考えられる。大台ヶ原のニホンジカは、ミヤコザサを主要な食料としており、ミヤコザサを減少させる要因である。(2)のように、ニホンジカは直接的には実生に対して負の効果をもたらすことがあるが、(3)のように、ミヤコザサを減少させることにより間接的に正の効果を及ぼすこともあることがわかった。ネズミ類除去処理については、顕著な効果は認められなかった。
著者
田中(小田) あゆみ 野口 享太郎 古澤 仁美 木下 晃彦 仲野 翔太 小長谷 啓介 山中 高史 水谷 和人 柴田 尚
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>トリュフは外生菌根性のきのこで,食用価値が高く,日本国内での栽培技術確立が求められている.欧米では,土壌pHが高く,攪乱後の土壌でトリュフ生産が増加することが知られているため,本研究では樹木に耕耘と石灰施肥を行い,細根生産量や外生菌根の形成率の変化を調べた.調査地は,山梨県のクリ林と茨城県のクヌギ林の2カ所とし,2016年春に3m×3mの処理区を設置した.山梨では1本の調査木の周囲に施肥区と対照区を隣り合わせに設置し,茨城では施肥区と耕耘区,対照区をそれぞれ独立に設置した.施肥区には約20t/haのてんろ石灰を2-3回に分けて散布した.細根生産はイングロースコア法により求め,根のスキャン画像について画像解析ソフトウェア(WinRHIZO)により総細根長や比根長を求めた.その結果,石灰施肥により細根生産量と比根長,根端数が増加し,菌根形成率も高まる傾向が認められた.しかし,これらの傾向は樹種や試験地間で異なった.また,耕耘処理は樹木の細根生産量や形態に大きな影響を与えなかった.以上より,てんろ石灰施肥による土壌養分量の増加は,樹木細根の量を増やし,トリュフをはじめとする外生菌根の形成を促進する可能性が示唆された.</p>
著者
佐藤 宏明 神田 奈美 古澤 仁美 横田 岳人 柴田 叡弌
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.185-194, 2005
参考文献数
31
被引用文献数
6

糞粒法によってニホンジカの生息密度を推定するためには,単位面積当たりの糞粒数を測定する他に,1頭1日当たりの排糞回数と排糞粒数,および糞粒消失速度を知る必要がある.しかし,これらの値は地域や植生,季節で異なるにもかかわらず,労力上の問題から他地域で得られた値で代用されている.そこで本研究では奈良県大台ヶ原にて糞粒法による信頼度の高い生息密度推定値を得ることを目指し,2001年5月から11月までの月1回,1頭1回当たりの排糞粒数を調査するとともに,原生林,ササ草地,移行帯の三植生で糞粒消失速度を測定した.原生林とササ草地では固定区画を設定し,月毎の加入糞粒数を数えた.以上の測定値と既存の1頭1日当たりの排糞回数を用いて原生林とササ草地における生息密度を推定した.さらに,糞粒消失速度と気温,降水量,糞虫量との関係も調べた.その結果,糞粒消失速度は植生と季節で大きく異なり,気温,降水量,糞虫量とは無関係であった.これまで報告されている視認にもとづく区画法による生息密度推定値と比較したところ,糞粒法による推定値は過大であり,また植生と季節によっても大きく変動していた.これらの結果をもとに糞粒法による生息密度推定の問題点を検討し,大台ヶ原におけるシカの個体数管理のための望ましい生息数調査法を提案した.
著者
古澤 仁美 宮西 裕美 金子 真司 日野 輝明
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.318-325, 2003-11-16
被引用文献数
20

ニホンジカによって林床のミヤコザサが強度の探食を受けている大台ヶ原の針広混交林において,シカ排除区とササ刈り区を設けてリターおよび土壌の移動量を測定した。移動した樹木葉と樹木枝は非ササ刈り区ではササ刈り区と比べて小さく,ミヤコザサにはこれらの移動を抑止する効果が認められた。ミヤコザサの地上部現存量とリターおよび土壌の移動量とは指数関数的な負の相関が認められた。シカ排除処理後3年間経過した区ではミヤコザサの地上部現存量は回復し,リターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林で報告されている値と同程度であった。それに対してシカを排除しない対照区ではリターおよび土壌の移動量は他の広葉樹林の約1.2〜4.3倍であった。現在の大台ヶ原ではニホンジカによるミヤコザサの採食の影響でリターおよび土壌の移動量が増加していると示唆された。
著者
後藤 義明 金子 真司 池田 武文 深山 貴文 玉井 幸治 小南 裕志 古澤 仁美
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.327-336, 2004-11-16
参考文献数
36

人工的に調整した海水をクヌギ林に散布して,空中消火による海水の散布が森林に及ぼす影響を調査した。海水散布後の樹冠通過雨の導電率(EC)およびNa^+,Cl^-濃度は急激に上昇したが,降雨とともに低下し,2カ月後には平常の状態に回復した。土壌抽出水のECは海水散布の1週間後にピークに達し,その後は徐々に低下していった。土壌抽出水のECが最も高かった1週間後であっても土壌に残留する塩分は植物に障害を与えることはないであろうと判断された。海水散布の2日後には葉に褐変が現れ,11日後にはほとんどの葉に壊死が生じた。木部圧ポテンシャルの測定から,この褐変は葉が水ストレス状態になったことによる萎凋ではなく,海水による葉への直接的な影響によるものと考えられた。海水散布後の5カ月間は落葉量が増加したが,それ以降は海水散布の影響は現れなかった。胸高直径および樹高成長,堅果生産量にも海水散布の影響は現れなかった。今回の実験により,海水16mm(16Lm^<-2>,散布時間約10分)程度の散布量であれば,クヌギの生育に大きな影響を及ぼすことはないと判断された。