著者
栃尾 巧 森地 恵理子 広瀬 統 中田 悟 久世 淳子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-127, 2008-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
18

近年の研究から, メイクアップは心理的な指標だけでなく生理的な指標においても精神的ストレスの緩和効果があることが示されている。本実験において, われわれは, 精神的ストレスとsuperoxide dismutase (SOD), catalase (CAT) のような活性酸素消去酵素の関係およびメイクアップによる精神的ストレス緩和効果の活性酸素消去酵素に対する影響について調べた。実験1において, 精神的ストレス負荷前後に唾液中のコルチゾール濃度とSOD活性を測定したところ, 負荷前に比べコルチゾール濃度の増加とSOD活性の低下がみられた。また, 実験2において, 精神的ストレス負荷後にメイクアップを行った実験群は, 精神的ストレス負荷前に比べ, 唾液中のコルチゾール濃度は減少傾向にあり, SOD, CAT活性は増加した。また, 心理的効果として, 状況不安の低下や精神的健康度の上昇などが示された。以上の結果から, メイクアップは精神的ストレスによる心理的不安を解消し, 活性酸素消去酵素の活性低下を抑制すると考えられた。
著者
藤井 匡 栃尾 巧
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.66-71, 2021-05-20 (Released:2022-03-09)
参考文献数
26

フラクトオリゴ糖(FOS)は,スクロースにβ-2,1-結合フルクトースユニットが転移したポリマーで,プレバイオティクスとして広く使用されている.特に三糖のFOSであるケストースは,酪酸産生菌などの腸内有用菌を選択的に増殖させるなど,プレバイオティクス機能が特に高いことが報告されている.我々は,ケストースを効率的に生産するために,四糖のFOSであるニストースの副生が抑制されケストースを特異的に生成する酵素の取得を試みた.大腸菌表層提示法を用いてスクリーニングした結果,Beijerinckia indica 由来酵素の変異体BiBftA H395R/F473Yがケストースを特異的に蓄積した.特にH395Rが重要な変異であり,ケストース以上の長鎖が生成することを抑制し,かつスクロースが糖転移せずに分解することをも抑制していると考えられた.反応のタイムコースを確認した結果,BiBftA H395R/H473Yによってスクロースの44%程度がケストースに変換され,このときニストースの副生は1%程度に抑制されていた.この改良酵素は,ケストース結晶の飛躍的生産コスト削減と生産効率向上に寄与すると考えられた.
著者
門田 吉弘 北浦 靖之 遠藤 明仁 栃尾 巧
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.123-131, 2020 (Released:2020-08-19)
参考文献数
35

ケストースは, スクロースに1分子のフルクトースが結合した三糖のオリゴ糖である。我々は, プレバイオティクスとして流通している種々のオリゴ糖との比較試験を実施し, ケストースが, 最も幅広い腸内有用菌に対して良好な増殖を示すオリゴ糖であることを明らかにした。さらに, ケストースの継続的な摂取によって, アレルギー疾患や生活習慣病を予防・改善できる可能性も明らかにしており, ケストースが様々な生理機能を有するプレバイオティクスとして, 人々の健康維持に貢献できる可能性を示した。また, 我々は, ケストースの実用化に関する研究として, 工業的製造の際に使用される酵素の改良にも取り組んでいる。本稿では, ケストースによる有用菌増殖効果をはじめとして, ケストースが有する様々な生理機能および, 製造酵素の改良に向けた取り組みについて紹介する。