- 著者
-
根岸 孝康
- 出版者
- 口腔病学会
- 雑誌
- 口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.2, pp.364-381, 1978 (Released:2010-10-08)
- 参考文献数
- 27
顎口腟機能と密接に関連した舌は, 咀嚼は勿論のこと発音運動においても重要な役割を果たしている。そこで舌の機能的進化の実態を解明する目的で, 舌運動との関連において, ヒトを含む霊長類の舌の筋構築と筋紡錘分布の変遷を比較調査した。ツパイでは, 舌筋構築は比較的単純で, 舌に筋紡錘は存在しない。スローロリスでは, 上縦舌筋が舌の正中部に限局した小線維束として配列し, 筋紡錘が頤舌筋に1個出現した。ニホンザルでは, 舌筋構築はより複雑となる。上縦舌筋の発達は悪いが, 頤舌筋はよく発達している。筋紡錘は, 頤舌筋に94個, 茎突舌筋に8個, 舌骨舌筋に6個と外舌筋に多く分布し, 上縦舌筋には6個, 横舌筋には8個と内舌筋にも出現し, 総数61個の筋紡錘が出現した。ヒトでは舌筋構築はきわめて複雑で, 上縦舌筋は舌背部から舌外側縁に広く発達し, 筋紡錘は上縦舌筋に159個, 横舌筋に79個, 下縦舌筋に22個, 垂直舌筋に8個と内舌筋に268個と多く出現した。頤舌筋には121個, 茎突舌筋には75個, 舌骨舌筋には37個と筋紡錘は外舌筋に233個分布し, 舌全体では501個の筋紡錘が片側で存在した。