著者
安武 友美子 大室 美穂子 大池 貴行 森下 志子 川俣 幹雄 河崎 靖範 槌田 義美 新堀 俊文
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.148-152, 2011-10-31 (Released:2016-07-05)
参考文献数
32
被引用文献数
6

誤嚥性肺炎初発患者を対象に,発症にかかわる身体機能面,栄養状態,認知面の要因について後方視的に調査し検討した.その結果,歩行能力やADLが低下している患者,また認知能力の低下がある患者は嚥下能力が低く,誤嚥性肺炎発症のリスクがより高いことが示唆された.背景因子としての年齢,BMI,血清アルブミン値とは有意な相関が認められなかった.また基礎疾患として,脳血管疾患,呼吸器疾患との間で嚥下能力に差異は認められなかった.以上のことより,誤嚥性肺炎の発症リスクを低下させるためには,実用的な歩行獲得やADL向上を図るリハビリテーション,認知症進行の予防が重要であると考えられた.
著者
川俣 幹雄 大池 貴行 森下 志子
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.31-43, 2013-03

本研究の目的は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、以下COPD)における、呼吸練習の最新のエビデンスを明らかにすることにある。文献検索の電子データベースCochrane LibraryとMEDLINEを用いて、COPDにおける呼吸練習について検討した2003年1月から2012年3月までの研究論文を検索した。合計517編の論文が抽出され、スクリーニングの結果、7論文を検討対象とした。エビデンスの評価には、「Oxford Centre for Evidence-Based Medicine2011 Levels of Evidence(以下、OCEBM 2011)」を用いた。この評価法ではエビデンス・レベルは5段階で評価され、レベル1が最も高く"systematic review of randomized trials or n-of-1trials"に、基づくものとされている。エビデンスの評価手順は、OCEBMのプロトコルに従った。 その結果、COPDにおける呼吸練習のエビデンスとして次のことが明らかとなった。1)口すぼめ呼吸による運動時の呼吸困難の軽減効果はレベル4、2)口すぼめ呼吸による呼吸数減少はレベル2、最大吸気量の増大効果はレベル3であった。また、3)口すぼめ呼吸による運動耐久性の改善効果はレベル2であった。一方、4)横隔膜呼吸による呼吸数の減少はレベル2であったが、その他のアウトカムに関する報告はなかった。口すぼめ呼吸は、1秒率などの呼吸機能がより低下し、肺機能障害が高度なCOPD患者ほど効果が存在することが示唆されており、今後は呼吸練習の適応についてさらに検討することが課題である。Objective: The purpose of this study was to examine the latest evidence to support breathing exercise in patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Method: The systematic searches were conducted using the Cochrane Library (January 2003 to March 2012) and MEDLINE (January 2003 to March 2012). Of 517 articles screened, 7 studies were selected. The "Oxford Centre for Evidence-Based Medicine 2011 Levels of Evidence (OCEBM 2011)" was used in the evaluation of the evidence. In OCEBM 2011, the levels of evidence are evaluated in five steps. Level 1 based on a "systematic review of randomized trials or n-of-1 trials" is the highest strength of evidence. The evaluation of the evidence was applied according to the OCEBM 2011 protocol. Results: The results concerning the levels of evidence supporting breathing exercise in patients with COPD were as follows. 1) The evidence supporting pursed-lips breathing (PLB) in relieving dyspnea during exercise was level 4; 2) the evidence supporting PLB in decreasing the respiratory rate was level 2; the evidence supporting PLB in increasing inspiratory capacity was level 3, and 3) the evidence supporting PLB in improving exercise tolerance was level 2. 4) The evidence supporting diaphragmatic breathing in decreasing the respiratory rate was level 2, but the other outcomes that met the purpose of this study were not observed.
著者
森下 志子 森下 一樹 森田 正治 宮崎 至恵 甲斐 悟 中原 雅美 渡利 一生 松崎 秀隆 吉本 龍司 村上 茂雄 千住 秀明 高橋 精一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1179-D1179, 2005

【はじめに】シャトルウォーキングテスト(SWT)は慢性呼吸不全患者(COPD)を対象に開発された運動負荷試験である。そのプロトコルは標準化されており,その結果から運動処方を具体的に行うことが可能であるという特徴がある。健常者に用いられる運動負荷試験として20mシャトルランニングテストがあるが,元来,スポーツ選手の全身持久力を評価するために開発されたため,最初のステージで,予測最大酸素摂取量が24.5 ml/kg/minと設定されており,運動負荷が大きいという問題点を抱えている。SWTはCOPDを対象に開発されたものであるため,プロトコルが緩やかであり,走行困難な者でも実施可能である。しかし,SWTでの運動負荷の予測式はCOPDを対象としたものであり,健常者には当てはまらない。そこで本研究では健常者を対象にSWT中の酸素摂取量を測定し,その結果から予測式を算出することを目的とした。<BR>【対象】長崎県I町在住で,町が主催する健康教室へ参加した整形外科的疾患のない25名を対象とした。年齢は26~78(平均54.17±17.76)歳,男性5名,女性20名であった。<BR>【方法】測定は,身長,体重,握力,SWT歩行距離および運動終了時の実測酸素摂取量(実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>)を実施した。SWTは標準プロトコルに従って測定し,酸素摂取量は携帯型呼気ガス分析装置(MetaMax2,CORTEX)を用い,ブレスバイブレス方式で記録した。呼気ガス分析より得られた実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離の関係を検討するために単回帰分析を用いて予測式を作成した。<BR>【結果】実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離との関係は,実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>=0.030×SWT歩行距離+7.397(R<SUP>2</SUP>=0.841、p<0.01)となり,高い相関関係が認められた。実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>の予測式を作成する上で,年齢その他の要因の関与は認めなかった。SWTプロトコルにおいて,上記予測式を基にした各レベルの予測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>は,レベル1では7.697~8.297ml/kg/min,レベル2では8.597~9.497 ml/kg/minとなり,最高レベルであるレベル12では34.097~37.997 ml/kg/minと算出された。<BR>【考察】上記予測式の結果をMETsに換算すると,レベル1~12は2.1METs~10.9METsとなる。これをトレッドミルでの運動負荷試験として広く利用されているBruceプロトコルと比較すると,最大のレベルは3~4段階程度に相当する。Bruceプロトコルは,運動強度の増加が段階ごとに2~3METsと比較的大きく,日常的にトレーニングを行っていないものでも3段階までは到達可能である。今回の結果により,SWTでの運動負荷は,日常的にトレーニングを行っていない健常者に対する最適な運動負荷量を設定できるものと考える。