著者
田代 大祐 中原 雅美 中川 昭夫
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.228-232, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

【目的】本研究は,椅子座位と便器座位の姿勢の違いおよびその身体的負担を検証し,便器座位姿勢の特徴を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】健常若年成人男性19名を対象とし,椅子座位と便器座位の2つの姿勢において3次元動作解析装置を用いた姿勢計測(脊柱角度,体幹角度,骨盤角度,大腿角度,臀部の高さ)と胸壁計測(胸部・腹部における呼吸変化量),床反力計を用いた臀部荷重率,表面筋電計を用いた体幹筋活動量(腹直筋・腰部脊柱起立筋)を計測し比較した.【結果】上部脊柱角度,体幹角度,臀部荷重率,上部胸郭の胸壁体積変化量において便器座位が椅子座位に比べて有意に高値を示した.また,骨盤角度,大腿角度,臀部の高さにおいて便器座位が椅子座位に比べて有意に低値を示した.【結語】便器座位は,姿勢を脊柱後弯位に変え,呼吸努力を増加させるため身体的負担が大きい姿勢であることが示唆された.
著者
田代 大祐 中原 雅美 中川 昭夫
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.410-417, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
32

健常若年成人男性19名を対象に,排泄姿勢である前傾座位と上肢支持手すりを用いた上肢支持前傾座位において3次元動作解析装置を用いた姿勢計測(脊柱角度,体幹角度,骨盤角度,大腿角度,臀部の高さ,円背指数)と胸壁計測(呼吸変化量),床反力計を用いた臀部荷重率,表面筋電計を用いた体幹筋活動量を計測し,姿勢を比較検討した.上肢支持前傾座位が前傾座位に比べて臀部の高さ,呼吸変化量が有意に高値を示し,上部脊柱角度,体幹角度,骨盤角度,円背指数,臀部荷重率,腹部体幹筋活動量が有意に低値を示した.上肢支持前傾座位は脊柱後彎を抑制し,上肢の支持性を向上させることで呼吸運動を良好にする姿勢であることが示唆された.
著者
松田 憲亮 本間 和也 吉住 浩平 永井 良治 中原 雅美 金子 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.81-85, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

〔目的〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニング効果と筋活動変化を検討することである.〔対象〕健常成人男性32名を対象とした.〔方法〕対照群と皮膚冷却群に分け,低負荷での股関節外転運動からなるトレーニングを6週間実施した.隔週で等尺性股関節外転最大筋力と中殿筋の表面筋電図を測定した.皮膚冷却群では最大随意収縮時および最大随意収縮時を基準としてその30%の負荷量時の積分値と平均周波数を測定し,トレーニング開始時を100%として正規化し比較した.また,冷却部位の皮下組織厚,皮膚表面,深部組織温度を計測した.〔結果〕等尺性最大筋力は皮膚冷却群で4~6週後有意に増加した.筋積分値は6週後,有意に増加したが,平均周波数の変化は認められなかった.〔結語〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニングでは,有意な筋力増強効果が認められた.筋力増強には皮膚冷却刺激による運動単位動員の促進とtype I線維における筋活動特異性や運動強度が反映されていることが示唆され,type II線維の活動増加については判別できなかった.
著者
池田 翔 松田 憲亮 池田 拓郎 永井 良治 中原 雅美 岡本 龍児
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.973-976, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
19
被引用文献数
6 1

〔目的〕転倒予測指標として応用歩行予備能力の有用性を検討する.〔対象〕二次予防事業対象者の高齢女性36名.〔方法〕運動機能評価,歩行周期変動,応用歩行予備能力,生活活動量,転倒恐怖感を測定し,転倒経験の有無でこれらの平均値を比較した.転倒予測因子を多重ロジスティック回帰分析から検討し,Receiver-Operating-Characteristic曲線からカットオフ値を求めた.〔結果〕転倒群では歩行周期変動が有意に増加し,応用歩行予備能力と生活活動量が有意に低下した.応用歩行予備能力は転倒予測因子として有用性は認められず,生活活動量と中等度の相関を認めた.〔結語〕応用歩行予備能力は生活活動量の評価と併用し,移動能力の補足的な値として利用できる可能性が示唆された.
著者
下田 武良 川﨑 東太 鈴木 あかり 森田 正治 永井 良治 岡 真一郎 中原 雅美 池田 拓郎 髙野 吉朗 金子 秀雄 江口 雅彦 柗田 憲亮
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.132, 2016

<p>【目的】</p><p>本学では2010年より、クリニカル・クラークシップ(以下CCS)での臨床実習を関連施設で開始した。CCSとは従来の「患者担当型・レポート重視型」の指導形態から「見学・模倣・実施」の段階を経て、診療を経験する「診療参加型」の臨床実習である。実地の経験を積むことが臨床実習の役割であり、チェックリストを用いたCCSは経験値向上に有利であるとされている。そこで今回、CCSと従来型臨床実習の各検査測定項目における経験の有無について調査したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は、CCS方式である関連施設(急性期2施設、回復期1施設)で臨床実習を終了した37名、従来型方式である外部施設で臨床実習を終了した44名の学生とした。なお、各施設における学生間の学業成績に差はなかった。外部施設の選定基準は、主な対象疾患が中枢神経領域および運動器領域であり、施設区分が急性期もしくは回復期の病院とした。調査期間は2013年10月から2014年8月とし、各期8週間の臨床実習終了後にアンケート方式で調査した。アンケート内容は、臨床実習で検査・測定を行った疾患領域別の人数、および本学が使用しているCCSチェックリストの検査測定技術項目(40項目)の経験の有無とした。アンケート集計結果よりCCS群、従来型臨床実習群の一人当たりの疾患領域別経験人数、各検査測定項目の経験率を比較した。</p><p>【結果】</p><p>一人当たりの疾患領域別の経験人数では、CCS群が中枢神経領域6.5±5.2人、運動器領域7.2±5.4人、呼吸・循環器領域2.0±4.2人、その他0.7±1.6人、合計16.4±12.1人であった。従来型臨床実習群が中枢神経領域2.4±2.5人、運動器領域3.9±6.7人、呼吸・循環器領域1.7±4.6人、その他0.2±0.8人、合計8.2±11.5人であった。各検査測定項目の経験率では、CCS群が平均92.7±10.9%で、上腕周径、MMT(肩甲帯・手関節)を除く全ての項目が80%以上であった。従来型臨床実習群が平均81.6±17.4%で、上肢全般、頸部・体幹のMMT、ROM-t項目ならびに片麻痺機能検査において経験率が80%以下の結果となった。</p><p>【考察】</p><p>今回の調査では、中枢神経領域、運動器領域の検査測定を実施した経験人数に、大きな差がみられた。患者担当型である従来型臨床実習群に対し、診療参加型であるCCS群では、多くの疾患に対し検査測定の実施が可能となる。これらの結果から、各検査測定項目の経験率においても、上肢全般、頸部・体幹のMMT、ROM-t項目や片麻痺機能検査に差がみられたと考えられる。また、チェックリストを用いることで、指導者や学生に経験することの意識が働き、広い範囲で検査測定項目の実施に反映されたと考えられる。</p><p>【まとめ】</p><p>CCSは同じ測定項目であっても複数の患者に対して繰り返し経験でき、技術項目修得の向上が期待される。経験豊富なセラピストが理学療法をスムーズに進められるのも経験値の高さによるものであり、学生も経験を積み重ねることで臨床的感性の向上を期待したい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者には事前に紙面および口頭にて研究内容を説明し、同意を得たうえで実施した。</p>
著者
村上 茂雄 中原 雅美
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.737-739, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
13

[目的]本研究は筋力維持増強運動としての他動的関節運動(他動運動)の効果を明らかにするとともに,その具体的方法を検討することを目的とした。[対象と方法]対象は健常男子学生39名であり,対象群と他動運動のみ実施する群,視覚的注意を伴う他動運動を実施する群に分けた。対象群と他動運動群,視覚的注意群に対し筋機能評価運動装置(BIODEX社製 BIODEX SYSTEM3)にて筋出力を計測した。[結果]対象群と比べ他動運動群は膝伸展,屈曲ともに最大トルク値が有意に低下した。視覚的注意群では,伸展最大トルク値のみ有意な低下を示し,他動運動群と比べ最大屈曲トルク値が有意に高値を示した。[結語]視覚的注意を伴う他動運動では部分的ではあるが筋出力発揮に繋がり,筋力維持増強運動として活用できる可能性が示唆された。
著者
松田 憲亮 池田 翔 鶴 大輔 永井 良治 中原 雅美 池田 拓郎 光武 翼
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.159-163, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
33
被引用文献数
1

〔目的〕女性前期高齢者のプレフレイルに影響する要因を分析することを目的とした.〔対象と方法〕前期高齢女性78名を対象とした.フレイル判定基準により,フレイルであったもの3名を除き,プレフレイル群と健常群に分け,各評価項目値の2群間比較を行った.また,多重ロジスティック回帰分析によりプレフレイルに影響する要因を検討した.〔結果〕プレフレイルへ関連する要因としてBody Mass Index,転倒自己効力感,健康意識,歩行速度が有意な独立変数として選択された.〔結語〕女性前期高齢者ではBody Mass Indexの増加や移動能力低下以外に精神的・心理的側面の低下がプレフレイルに関連することが示唆された.
著者
永井 良治 中原 雅美 森田 正治 下田 武良 岡 真一郎 鈴木 あかり 濱地 望 池田 拓郎 金子 秀雄 高野 吉朗 江口 雅彦 柗田 憲亮
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.713-719, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
11
被引用文献数
2

〔目的〕臨床実習指導者を対象に,クリニカルクラークシップ(CCS)の取り組みに対する意見をまとめ,今後のCCS型臨床教育の捉え方を検討するための資料とすること.〔対象と方法〕4年目以上の理学療法士60名を対象に,自己記入式質問紙を用いたアンケート調査を実施した.〔結果〕実習形態については,診療に参加させながら学生の成長を促すことができるとの回答が多かった.しかし学生は受身的な取り組み姿勢で,チェックリストを埋めることに意識が向きやすいことが示された.学生の理解度の把握については理学療法全体に関する理解の指導方法が課題になっていることが示された.〔結語〕現在のCCSの取り組みが明らかになった.学生の取り組み姿勢や指導方法については,臨床実習指導者と連携して検討していきたい.
著者
森下 志子 森下 一樹 森田 正治 宮崎 至恵 甲斐 悟 中原 雅美 渡利 一生 松崎 秀隆 吉本 龍司 村上 茂雄 千住 秀明 高橋 精一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1179-D1179, 2005

【はじめに】シャトルウォーキングテスト(SWT)は慢性呼吸不全患者(COPD)を対象に開発された運動負荷試験である。そのプロトコルは標準化されており,その結果から運動処方を具体的に行うことが可能であるという特徴がある。健常者に用いられる運動負荷試験として20mシャトルランニングテストがあるが,元来,スポーツ選手の全身持久力を評価するために開発されたため,最初のステージで,予測最大酸素摂取量が24.5 ml/kg/minと設定されており,運動負荷が大きいという問題点を抱えている。SWTはCOPDを対象に開発されたものであるため,プロトコルが緩やかであり,走行困難な者でも実施可能である。しかし,SWTでの運動負荷の予測式はCOPDを対象としたものであり,健常者には当てはまらない。そこで本研究では健常者を対象にSWT中の酸素摂取量を測定し,その結果から予測式を算出することを目的とした。<BR>【対象】長崎県I町在住で,町が主催する健康教室へ参加した整形外科的疾患のない25名を対象とした。年齢は26~78(平均54.17±17.76)歳,男性5名,女性20名であった。<BR>【方法】測定は,身長,体重,握力,SWT歩行距離および運動終了時の実測酸素摂取量(実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>)を実施した。SWTは標準プロトコルに従って測定し,酸素摂取量は携帯型呼気ガス分析装置(MetaMax2,CORTEX)を用い,ブレスバイブレス方式で記録した。呼気ガス分析より得られた実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離の関係を検討するために単回帰分析を用いて予測式を作成した。<BR>【結果】実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離との関係は,実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>=0.030×SWT歩行距離+7.397(R<SUP>2</SUP>=0.841、p<0.01)となり,高い相関関係が認められた。実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>の予測式を作成する上で,年齢その他の要因の関与は認めなかった。SWTプロトコルにおいて,上記予測式を基にした各レベルの予測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>は,レベル1では7.697~8.297ml/kg/min,レベル2では8.597~9.497 ml/kg/minとなり,最高レベルであるレベル12では34.097~37.997 ml/kg/minと算出された。<BR>【考察】上記予測式の結果をMETsに換算すると,レベル1~12は2.1METs~10.9METsとなる。これをトレッドミルでの運動負荷試験として広く利用されているBruceプロトコルと比較すると,最大のレベルは3~4段階程度に相当する。Bruceプロトコルは,運動強度の増加が段階ごとに2~3METsと比較的大きく,日常的にトレーニングを行っていないものでも3段階までは到達可能である。今回の結果により,SWTでの運動負荷は,日常的にトレーニングを行っていない健常者に対する最適な運動負荷量を設定できるものと考える。