著者
田原 美和 森山 克子 東盛 キヨ子 金城 須美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.49-56, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
47

沖縄の代表的な祖先祭祀の一つである清明祭の伝来の経緯や行事食の変遷を概観し,併せて,日本調理科学会特別研究「行事食・儀礼食」調査の結果を世代別(若年層30代以下,中高年層40~80代)で比較しながら,清明祭の行事食が若い世代に受け継がれているのか考察を行った。沖縄の清明祭は,18世紀には中国の渡来人の集落(久米村)で執り行われており,その後,首里王府,士族,そして庶民へと伝わっていった。主な供物として,国王墓や久米村では,中国の三牲に倣ったウサンミ(御三味=豚・鶏・家鴨・魚など)を供えていたが,近年は,伝統を守っている所もあるが,大方その素材を用いた重箱料理に簡略化している。アンケート調査の結果,清明祭の認知度,経験の状況はいずれの世代も高い。行事の供物である重箱料理は,以前は手作りをしていたが,現在は一部既製品を利用する,購入するなどの割合が多くなり外部化傾向がみられる。こうした状況から,若い世代は清明祭の概要について認識はしているが,食材や調理の知識や体験が少なく,次世代への伝承が危惧される。今後は,調理技術や家庭の味を守り,受け継ぐために,清明祭の意義を理解させ,家庭や地域,教育機関等で行事食の習得を促進するなど,積極的に関わる必要があると考える。
著者
田原 美和 森山 克子 金城 須美子 東盛 キヨ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.200, 2010

【<B>目的</B>】沖縄の祖先祭祀は、中国の流れを汲むものがあり、祭祀の供物や法要料理にも魚肉類を用いるなど精進料理とは異なる特徴がある。今回、「調理文化の地域性と調理科学:行事食」調査の中間報告として、沖縄の祖先祭祀の中でも中国との関連性のある清明祭、および盆行事に焦点をあて、その認知状況、供物の種類や喫食状況等について世代間の差異、伝統の継承について検討したので紹介する。<BR>【<B>方法</B>】沖縄県内在住の学生および親世代・その他を対象に、平成21年12月から平成22年4月にかけて質問紙調査ならびに聞取り調査を実施した。なお、本報での調査対象者は学生77名、親世代・その他92名の合計169名であった。<BR>【<B>結果</B>】沖縄の清明祭は旧暦の三月(清明節)、盆行事は旧暦の七月十三日から十五日まで三日間行われる代表的な祖先祭祀である。いずれの世代もその認知度は約9割と高いが、実際に行事を経験した事があると回答した者の割合はやや低くなった。主な供物は、乾肴と餅の重箱料理である。乾肴は豚三枚肉、昆布、ごぼう等の煮染め、揚豆腐、田芋のから揚げ、魚天ぷら、かまぼこ等、伝統的な料理形態が継承されている。調理状況等についてみると、以前は手作りであったが、現在はスーパー等で手軽に入手出来るので、購入すると回答した割合が高くなった。喫食状況は、高齢層ではほぼ全員が毎年食べると回答しているが、若年層ではやや低い。仏前には伝統的な重箱料理を供えながらも、若年層の嗜好の変化に対応し、オードブルなどを購入し喫食している。祭祀の際に喫食する料理の種類は多様化しても、供物としての重箱料理は今後も継承されていくものと推察する。
著者
我那覇 ゆりか 田原 美和 森山 克子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.166, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】沖縄は四方を海に囲まれた島嶼県であり、亜熱帯の気候風土のなかで育まれた地域の食材を用いた日常食、行事食は日本本土とは異なるものも多い。今回は、沖縄本島中南部の3地域に焦点をあてて聞き書き調査を行い、「芋」を用いた料理を中心に次世代に伝え継ぎたい家庭料理を検討した。【方法】本調査は、日本調理科学会特別研究に基づき行った。調査地域は、沖縄県中部の読谷村宇座、沖縄市登川、沖縄県南部の那覇市与儀、以上の3地域とした。読谷村2名(83、85歳)、沖縄市3名(70歳~74歳)、那覇市3名(71~78歳)を対象とし、昭和30年から40年頃までに定着した家庭料理および伝承したい家庭料理について、その料理名、食材、調理・加工法などを聞き書きした。【結果】沖縄は第二次大戦後しばらくはンム(甘藷)を主食としていた。当時は、シンメー鍋(大きな鍋)で大量に水煮・蒸煮し、スクガラス(アイゴの稚魚)の塩漬けや味噌汁、豆腐汁などの少ないおかずとたくさんのンムを食べた。また、ンムを季節の野菜と一緒に味噌汁に入れたり、ンムクジ(澱粉)にして保存性を高め、ンムクジを用いた料理を作り日常的に食した。ターンム(田芋)は高級食材であり行事や御祝いの際に食べた。沖縄市では、ヤマンム(山芋)がよく採れたため、塩茹でにしたり、スーチカー(塩漬け豚肉)と炒めて食べた。今回、聞き書き調査を行った読谷村宇座、沖縄市登川、那覇市与儀で共通に伝承したい芋料理はンムクジブットゥルー、田芋でんがく、ドゥルワカシー等であった。
著者
大城 まみ 森山 克子 我那覇 ゆりか 名嘉 裕子 田原 美和
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の一環として,1960~1970(昭和35~45)年頃までには,定着していた家庭料理の中でも,本報では,沖縄県の行事食・日常食のおやつについて紹介する。<br />【方法】1.行事食・日常食として食べられているおやつについて,平成24~26年度の聞き書き調査報告書,その後の補足調査,文献等を基に整理する。2.聞き書き調査は,沖縄県の北部(本部町崎本部),中部(読谷村宇座・沖縄市登川),南部(那覇市与儀),宮古(宮古島市伊良部町),八重山(石垣市登野城)の5地域で行った。<br />【結果】この時期に定着していたおやつの中で,次世代に伝え継ぎたい沖縄のおやつは,行事食として,ムーチーは,旧暦12月8日に月桃(サンニン)の葉に包んで蒸した餅を食べた。子どもの健康・成長を祈願し,また鬼餅ともいうように悪鬼悪霊退散を祈る厄払いとする習わしがある。フチャギは,旧暦の八月十五夜に供え物として,細長い楕円形の餅の表面に,茹でた小豆をまぶした餅を食べた。宮古では黒小豆を使用する事が特徴である。行事食・日常食ともに食されていたのはサーターアンダギー(砂糖天ぷら)で結納などの祝いごとに欠かせない品であり,現在は日常食のおやつとしても食べられている。チンビンは旧暦の5月4日に子どもの健康祈願などで食べられた。日常食では,だしに小麦粉と卵とニラ等を混ぜ,クレープ状に焼いたヒラヤーチー,細かく切った豚肉と味噌を炒め,砂糖等で調味して作ったあぶら味噌を薄焼きの皮で巻いたポーポーがある。
著者
森山 克子 伊礼 夏未 Moriyama Katsuko Irei Natumi
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.153-161, 2010-08

1.郷土の行事食を含む給食献立年間計画作成と郷土料理の提供数・種類数との関連を明らかにするため給食献立年間計画表や家庭用配布献立表の回収を行った。対象は県内全市町村を網羅した92調理場で、資料提供があった調理場の内、年間計画表を回収できた調理場は、22調理場(36.1%)であった。約4割が作成していると推察できたが、その内容は一定ではなく調理場間に内容面で差がみられた。また、家庭配布用献立表を回収できたのは61調理場(回収率66.3%)であった。郷土料理の提供数や種類数は,調理場形態(共同調理場・単独調理場)では提供数、種類数共に有意差はなかった。また供食数(29~6677食)でも有意差がなかったことから,県内のどの調理場においても,給食管理の点から郷土料理を活用した食育を推進していくことが可能であるということが示唆された。1. To clear the relation between the School Lunch Service Annual Planing and the serve count and menu variety count of Okinawa Prefecture's School Service, we have collected the School Lunch Service Annual Plan and the Student's Lunch Menu. The collection was objected towards the entire Okinawa Prefecture's 92 cooking facilities, where the School Lunch Service Annual. plan collaction was 22 faciliteis (36.1%) out of all submitted facilities. A surmise of 40% of the facilities create a School L Lunch Service Annual Plan, which content were not standard and a difference between facilities exist. The Student's Lunch Menu collection was of 61 facilities (collection rate of 66.3%). The serve count nor menu variety count of Native Food had significant difference between facility form (joint cooking facilities and individual cooking facilities). No significant difference was seen in the prepared meal count (29~6677 meals) either, which indicates that all cooking facilities within Okinawa Prefecture has a possibility to provide dietary education through Native Food from terms of the School Lunch management.