著者
島田 光生 神澤 輝実 安藤 久實 須山 正文 森根 裕二 森 大樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.678-690, 2012 (Released:2013-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
2

要旨:膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,膵液と胆汁の相互逆流により,さまざまな病態を惹起するとともに胆道癌の発生母地ともなる.本疾患は不明な点が多く,また未だに治療方針も統一されていないのが現状である.今回,日本膵・胆管合流異常研究会と日本胆道学会が合同で,本疾患に対して病態から診断,治療に至るまでの膵・胆管合流異常診療ガイドラインを世界で初めて作成したのでダイジェスト版として紹介する.
著者
西 正暁 島田 光生 森根 裕二 吉川 幸造 徳永 卓哉 中尾 寿宏 柏原 秀也 高須 千絵 良元 俊昭 和田 佑馬
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.59-61, 2022-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
10

近年では漢方の分子生物学的な作用機序の解明が進み, 臨床においても質の高いランダム化比較試験により漢方の有用性が明らかになってきた. 現在では大建中湯を含む多くの漢方製剤が広く臨床の現場で用いられている. 大建中湯は乾姜, 人参, 山椒の3つの生薬に膠飴を加えた漢方で, 外科領域においては癒着性イレウスや麻痺性イレウス, 過敏性腸症候群, クローン病などを適応とし, 消化管運動促進作用, 腸管血流増加作用,抗炎症作用などが報告されている. 近年では, 食道・胃・大腸・肝臓・膵臓・肝移植外科それぞれの領域でランダム化試験が実施され, 大建中湯の周術期管理における有効性が証明されている. また分子生物学的なメカニズムについても解明がすすみ, 現在, 大建中湯は消化管外科・肝胆膵外科の分野を問わず消化器外科全般における周術期管理のkey drugとして位置付けられている. 本稿では消化器外科領域における大建中湯による周術期管理のサポートについて概説する.
著者
仲須 千春 山田 眞一郎 寺奥 大貴 齋藤 裕 池本 哲也 森根 裕二 島田 光生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.504-509, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
18

患者は50代女性.検診の腹部超音波検査で肝S3に16×14 mm大の腫瘤を指摘され精査加療目的に当科紹介となった.既往歴・生肉食歴なし.術前の血液検査で異常なく,末梢好酸球も正常.造影CTの動脈・門脈相では辺縁に造影効果を認めるが,平衡相では造影されず,MRI T1強調像で低信号,T2強調像で低~等信号,拡散強調像でやや高信号であった.PET-CTで肝臓への集積は認めなった.悪性腫瘍の可能性を完全に否定できず,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理組織学的には腫瘤全体に凝固壊死像が見られ,辺縁に線維増生を伴い,組織球が柵状に配列したpalisading granulomaであった.原因特定のために複数の染色を行ったが,病原体は同定できなかった.palisading granulomaは術前診断が困難であり,診断的治療として腹腔鏡下肝切除術は有用であると考えられた.
著者
齋藤 裕 居村 暁 宮崎 克己 山田 眞一郎 池本 哲也 森根 裕二 島田 光生
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.207_1, 2020

<p>【背景】医療系学生の移植医療に対する理解促進、意思表示率向上のための啓発活動の有用性について検討する。 【対象と方法】2010年~2019年の期間に、Donor Action(命の授業)を徳島大学の医療系学生 (医学科、看護学科、薬学科、栄養学科)を対象に実施した。授業の前後にアンケートを実施し、アンケート調査からみえる医療系学生の現状を解析した。【結果】2019年参加人数は4学科の272名に達した。約半数の生徒が中高で『いのち・死』についての授業を受けている状況であったが、講義前の時点で、移植医療に関する知識として「脳死と植物状態との違い」「日本のドネーションの世界との比較」などは約10%未満の生徒で無知であった。臓器提供意思表示率は、10-15%前後を推移しており、Donor Action後では、ほぼ100%の学生が意思表示すると回答した。Donor Action後、一部の医学生たちは、大学祭で意思表示の重要さを訴えたり、母校の高校に移植レシピエントを招いて講義をしたりと、学生から自ら呼びかけるDonor Actionへと変わりつつある。最近では、高校生がボランティア活動の一環で移植啓発運動することも試みている(高校生ボランティアアワード; 主催 さだまさし)。【結語】医療系学生の移植医療に対する知識理解は乏しく、継続的なDonor Actionが必要である。</p>
著者
島田 光生 森根 裕二 池本 哲也 吉川 幸造 高須 千絵
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.162-166, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19

近年,漢方はがん医療において重要な役割を果たしている。免疫チェックポイント阻害剤ががん免疫療法の主流となった新たな時代における漢方の抗癌作用の可能性につき自験例を踏まえ考察した。免疫力強化と漢方に関しては,従来からの癌免疫の増強,特に自然免疫を主眼とする機序に関しては多く報告されてきている。一方,新しい免疫抑制の解除機構(免疫の逃避機構の阻害)における漢方の新たな可能性については,我々の十全大補湯が膵癌患者の調節性T 細胞比率を低下させる報告や免疫チェックポイントタンパクCTLA-4とも密接に関係する分子の発現を回復させるといった報告の如く,漢方が免疫抑制を解除する報告が散見され始めた。漢方の中にはいわゆる免疫チェックポイントを発動し,心臓移植片の免疫寛容誘導や,腸管炎症を抑制するとの報告があり,今後の新たな展望として,漢方を免疫チェックポイントの面から考えることが重要である。
著者
居村 暁 島田 光生 森根 裕二
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

肝移植後の再発はcirculating cancercellあるいは肝移植時すでに存在するmicrometastasisによる再発であり制御困難である。今回、脾注肝転移(経門脈的)モデルを作成して癌細胞の肝転移メカニズムを検討した。MH134マウス肝癌細胞脾注1週間後、IFN投与群ではコントロールと比較し著明に肝転移個数が減少した。また、IFN投与群の転移腫瘍内MVDはコントロールと比較し有意に減少した。非癌部肝組織における接着因子発現の程度による肝転移促進効果は認めなかった。今後、肝切除+虚血再灌流を施行し、肝移植後の脾注肝転移による肝転移増強の有無につき研究を継続する。
著者
森根 裕二 島田 光生 居村 暁 池上 徹 金村 普史 中村 隆範
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では肝再生における新たな調節因子をなりうるソニック.ヘッジホッグ(SHH)の作用機序についてラット肝切除モデルを用いて検討した。PCNAlabering index(L.I.)は術後24時間が最も高値で、非実質細胞ではPCNAL.I.は術後経時的に上昇した。全経過において、肝実質細胞.非実質細胞ともにPCNAL.I.は90%肝切除モデルが有意に高値であった。Shhに関しては90%・70%肝切除モデル間に発現強度の差はないが、肝実質細胞では術後24時間で最も高値で、術後経時的に上昇した非実質細胞は異なる発現パターンであった。肝実質細胞では各Zoneに均等に発現していたが、非実質細胞ではZone 1にのみ発現増強していた。Gli-1はShh発現と同様の発現パターンを呈した。本研究はShh pathwayが肝再生において、肝実質細胞・非実質細胞の再生と肝組織構築に重要な役割を果たすことを示唆した。